インバウンドビジネスセミナー in 福井-訪日インバウンド新潮流-

Written by JNTO

2月21日に、福井県生活学習館にて開催された「インバウンドビジネスセミナー in 福井 訪日インバウンド新潮流~稼げるインバウンド 注目の有望市場~」。具体的な取り組み事例を有するスピーカーをお迎えし、講演や事例紹介、パネルディスカッションを実施しました。

福井はそのままでOK! 魅力をしっかり伝えて、ファンになってもらおう

日本を訪れる外国人旅行者の数が2,000万人を突破し、2020年までには外国人旅行者数4,000万人・経済効果8兆円の目標が掲げられています。この経済効果は、福井にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。その施策を探る今回のセミナーには、自治体関係者、観光業や交通事業に携わる方などを中心に、多種多様な職業の方々が参加。会場からは地元・福井を盛り上げようという熱意が感じられました。

はじめに、JNTOの山崎道徳理事が登壇し、インバウンドの最新動向について説明しました。地方にもたらされる経済効果や雇用の確保など多くのメリットを挙げ、「欧米豪の富裕層をどれだけ取り込めるかが、インバウンド成功のカギになるでしょう」と述べました。

続いて、株式会社ジャーマン・インターナショナル 代表取締役のルース・マリー・ジャーマン氏が登壇しました。観光業が急成長した時期にハワイで育ち、1988年に来日したジャーマン氏。以来、30年以上日本に在住する彼女からは、実体験に基づいた独自の視点でリアルな日本の未来像が語られました。

「88年から今に至るまで、日本は大きく変わってきています。以前は日本国内だけで経済が回っていましたが、現在はビジネスをする上でも海外との関係性がどんどん強まっています。この新しい顧客層とどう向かい合っていけば良いのかが、福井の経済活性化のための重要なテーマとなります」と語り、続けて、「外国人というと身構えてしまうかもしれませんが、日本に長期滞在している日本語が堪能な外国人もたくさんいます。この人たちを中心に、今後のターゲット層を考えていくのが良いのではないでしょうか。“比較的富裕層”“英語が通じる”“学びを理解している”“福井のキラーコンテンツを理解している”といったグローバル層と呼ばれる人たちに目を向けましょう」と、参加者に呼びかけました。

そして、かつてないスピードで国際化が進む日本に向けて、「大事なことが2つあります。一つめは、受け入れたくない気持ちも重要であるということ。二つめは、異なる点を楽しむことです。同じ常識を持っている国は、二つとありません。相手の国の価値観を尊重して歩み寄ることが、お互いが大切にしているコンテンツのアイデンティティを守るためには必要です」とアドバイスしました。

また、ハワイの観光産業が発展してきた経緯を述べ、「その状況は、今の日本ととても似ています。当時のハワイがそうであったように、日本にも外国人旅行者のリピーターが増えてきました。その理由の一つには、外国人のためのインフラが整ってきていることが挙げられます。今後、日本はさらなる飛躍を遂げるでしょう」と語りました。

さらに、日本の観光業が成長していくためには、「地域独自のコンテンツを変える必要はまったくありません。それよりも、コンテンツの魅力をしっかり説明することのほうが大切です。身につけるべきは英会話スキルではなく、日本のルールや考え方を言語化する力。日本の良さを理解してもらって、どんどんファンを増やしてきましょう」と力説し、外国人とのコミュニケーションを円滑にする簡単な英会話4フレーズを伝授しました。

最後に、「しっかりとしたアイデンティティがあれば、絶対に評価されるはずです。間違えてもいいから、一緒に前進していきましょう」と参加者にメッセージを送り、基調講演を締めくくりました。

株式会社ジャーマン・インターナショナルのルース・マリー・ジャーマン氏による講演

 

各地の成功事例に、福井も続け! 等身大の施策にヒントがいっぱい

休憩をはさみ、国内で行われているインバウンド施策の3事例が紹介されました。

最初に、株式会社WAKUWAKUやまのうち 代表取締役社長の岡嘉紀氏から、長野県山ノ内町で取り組んでいる訪日インバウンドの市場開拓についての報告がありました。「東京から3時間かかる地域で、なかなかお客様を誘致することができなかった」と語る同氏が試みているのは、湯田中渋温泉郷の未活用物件の取得・改修・賃貸などの「まちづくり」と、外国人旅行者や地元客に対する情報発信を中心とした「ひとづくり」を柱とした施策。「2016年度は、世界的に有名になったスノーモンキーをフックに、宿泊と周遊の促進をテーマに活動しました。2017年度は、施設の整備といったハード面と、外国人旅行者向けのツアーの実施などいったソフト面を戦略的に実行していくことで、自律的な観光活性化を目指しています」。

株式会社WAKUWAKUやまのうちの岡嘉紀氏から長野県山ノ内町の事例を紹介

続いて登壇したのは、ニュージーランドからニセコに移住し、インバウンドの取り組みを行っているインバウンドコンサルタントのポール・ハガート氏。「ニセコが世界に注目されたのは、9・11の同時多発テロの後でした。アメリカでスキーを楽しもうとしていた人たちが、代替地としてこぞって日本に訪れるようになったのです」。なかでもニセコは、雪質の良さからリピーターが増え、ニーズの高まりから欧米スタイルのコンドミニアムが続々登場。現在では世界に名だたるブランドホテルが次々と開業をするリゾート地になっています。その成功の裏には、戦略的なマーケティングにあると言います。リピーターを創造する仕組みとして「モノを売るのではなく、コトを売る」「プロモーションではなく、コミュニケーション」「正しい情報より、知りたい情報を提供する」などポイントを挙げて、解説しました。

インバウンドコンサルタント ポール・ハガート氏

さらに、JNTOの取り組みとして、デジタルマーケティングを中心とした調査事例を紹介。JNTO インバウンド戦略部 調査・コンサルティンググループの清水雄一が登壇し、「外国人旅行者のリアルタイムな反応――例えばウェブサイトの閲覧履歴、宿泊施設・航空券の予約情報、訪日中の移動履歴、決済履歴などのビッグデータを統合・分析するデジタルマーケティングの取り組みをしています。訪日客との“つながり”や、彼らの興味や関心を可視化して、広域周遊プランの作成など、さまざまなプロモーション活動に活用しています」と説明しました。「JNTOではデジタルマーケティング専任部署を設立しました。皆さまと一緒にインバウンドの活動を推進していきたいと思っていますので、お気軽にご相談ください」と呼びかけました。

 

パネルディスカッションで、福井県がインバウンドで稼ぐ方法を探る

最後のパートでは、有識者の方々によるパネルディスカッションが開かれました。株式会社WAKUWAKUやまのうち 代表取締役社長の岡嘉紀氏、Payment Card Specialist(元 Visa Worldwide Japan)取締役次席代表の松田典久氏、インバウンドコンサルタントのポール・ハガート氏、福井県 観光営業部 企画幹(広域誘客)の安本幸博氏の4名のパネリストに加えて、ファシリテーターの株式会社JTBコミュニケーションデザイン コンサルタントの宮口直人氏が登壇し、さまざまな意見を交換し合いました。

また、今回のディスカッションは、リアルタイムアンケートシステムを使い、参加者の意見も取り入れて進行。パネリストと参加者、双方からの視点で福井県が抱える悩みや課題を解決する糸口を探していきます。

有識者の方々によるパネルディスカッション

 

●インバウンド市場に対して、福井県の魅力を発信するためには

まず、福井県が世界に誇れる地域資源を具体的に挙げ、それらの効果的なプロモーション方法を議論しました。

・“ZEN”をキーワードに、ブランディングづくりを推進する福井県(安本幸博氏)

現在、福井県が取り組んでいる施策は、外国人誘客に向けたブランドづくり。「ZEN, Alive. Fukui ~身も心も満たされる、“ZEN”が息づく福井~というコピーのもと、福井県には“ZEN”のコンセプトで表現される精神文化が息づいているというストーリーを世界に発信しています」と安本氏から説明がありました。

・ストーリー性があれば、外国人旅行者に受け入れられる(ポール・ハガート氏)

安本氏の発言に対し、ハガート氏は「“ZEN”のブランディングは、大変素晴らしい!」と絶賛。ニュージーランドからニセコに移住して多くの観光客を受け入れてきた経験と、世界のツーリズムのトレンドを踏まえ、「ストーリー性が大事。さらに、“ZEN”のコンセプトは全世界のニーズにも合っているので、お客様は増えていくのでは?」との見解を述べました。

ここで参加者にアンケートを実施し、「外国人旅行者を魅了する福井県の魅力とは?」と尋ねたところ、魅力は「自然」「食」「伝統工芸品」「人」などが挙がりました。また、「外国人旅行者についてわからないことは?」の問いには、「現地の交通手段があまりない」という声が多数。これに対し、ハガート氏は「それほど心配する必要はない」と断言。ニセコの例を挙げ、「空港からタクシーやレンタカーでも十分、特に不自由は感じていません」とのこと。

また、「福井の潜在的な魅力がわからない」という声も多く挙がったなか、安本氏は「県民にヒアリングをしたところ、県の魅力は伝統工芸との意見が多かった。和紙、漆、刃物、陶芸などの工房が多数点在しているが、価値を感じている人であればタクシーやレンタカーで行くのは苦ではないはず」と話しました。

●福井県が訪日外国人旅行者を受け入れていくために

次に、各国からの観光客が増えていくなかで、福井県はどのような受け入れ態勢を考えていけばよいのか、具体的な意見を出し合いました。

・福井県では無料Wi-Fiスポットの設置や航空会社と連携した英会話レッスンを実施(安本幸博氏)

20万人規模以上の30の観光地すべてに無料のWi-Fiスポットを設置している福井県。同時に、多言語対応に向けての取り組みも促進しています。「観光施設スタッフに向けて、航空会社と連携した英会話レッスンを実施しています」と説明しました。

・外国人観光客にとって、クレジットカードが使えない環境は不安(松田典久氏)

日本信販やVisa Worldwide Japanでキャッシュレス化を推進してきた松田氏。官公庁の調査によると、日本を訪れる海外旅行者からの不満の第4位が「クレジットカード・両替」となっています。「特に地方部では、訪問者の約35%が、クレジットカード・両替で困った経験があるというデータもある」と語り、キャッシュレス対応の必要性を訴えました。

ここで再び会場の参加者にリアルタイムアンケートを実施。「外国人旅行者を受け入れる上で、不安なことは?」の質問に対して、「クレジットカード」「電子マネー」のキャッシュレス決済について、多くの不安の声が挙がりました。また、「英会話が不安」「どうせダメだろうという先入観がある」というコミュニケーションに関する悩みも多く、急きょ、ジャーマン氏にもマイクが向けられました。

・外国人とのコミュニケーションは、日本人同士よりラク(ルース・マリー・ジャーマン氏)

NHK『しごとの基礎英語』出演のほか、英会話に関する書籍の執筆も多いルース・マリー・ジャーマン氏。「日本人同士のコミュニケーションは、空気を読まなければいけないので難易度が高い。だから、会話=難しいと感じてしまうのでは? 片言の日本語や英語でも十分コミュニケーションはできます」と、アドバイスをしました。

・現金払いの人よりもカード利用者のほうが多く購買する(松田典久氏)

外国人旅行者の日本での支払いに関する調査で、カード利用者は現金支払の人よりも、約30%も多く購入することがわかっています。この傾向は、大型店よりも小型店のほうが顕著に見られるといい、「クレジットカードが使えるというだけで販売促進効果がある」と強調しました。

●福井県が訪日外国人旅行者から稼ぐには?

最後に、インバウンドで稼ぐための課題や具体的な施策について議論しました。

・カード加盟店マークの表示は、外国人旅行者の不安を解消する(松田典久氏)

外国人観光客の8割以上が「カード加盟店マークを掲示している店舗を好む」というデータがあります。「カード決済は、観光客に安心感を与えるばかりなく、誘客にもつながります。さらに、地域経済分析システム「RESAS」などで国籍別消費額などの統計が取れる」と、導入店舗にとっても魅力があることを解説しました。

ここで参加者にリアルタイムアンケートを実施し、インバウンドに関する疑問点をリサーチ。それに対して、パネリストたちが答えました。

・上越エリアのスキー場の魅力は長いコース。アフタースキーも大事(ポール・ハガート氏)

「奥越エリアでスキーライフを拡大していく上での大切なコンセプトやキーワードを教えてください」という質問に、ハガート氏が回答。「福井県の雪は少しだけ水分が多めだが、長いコースがあるのが魅力。ドイツ人観光客に向いているかもしれない。アフタースキーも大事なので、スキー場と連携して飲食店のPRもしたほうがいい」と話しました。

・福井ブランドのクオリティを守ることと人材育成の促進が大切(安本幸博氏)

「外国人旅行者の消費行動が増えることで、本来の福井の魅力が失われてしまうのでは……? キープするためにはどうしたらいいのでしょうか」という質問には、安本氏が回答。「福井ブランドの質が下がってしまうほど、大量に生産しなくていい。まずは、クオリティを守ることと人材育成を進めることが大切」だと意見を述べました。

・競争相手はここにいない。他の地域が何をしているかを意識して(ポール・ハガート氏)

最後にハガート氏が「いま、日本は観光レボリューションの真っただ中。これから10年もしないうちに、時代はまったく変わっているはずです。福井の競争相手は福井ではなく、他の地域にいます。周りを意識しながら戦略的に戦う必要がありますが、福井の皆さんのパッションがあれば必ず勝てるでしょう」と語り、終幕となりました。

 

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