与那原・西原の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ

Written by JNTO

2017年12月21日、沖縄県・西原町にて、「与那原・西原の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ」が開催。飲食店やショップなどの地元企業の方をはじめ、観光業を営む方、自治体関係者など28名が参加しました。

課題を抱える一方で、それを超える魅力的なコンテンツの発掘に取り組む

那覇空港から車で約30分。沖縄本島南部の東海岸に位置する与那原町とその北側に隣接する西原町は、かつて沖縄赤瓦の窯業やひじき漁、サトウキビ産業で栄えてきた町。沖縄県で初の軽便鉄道(一般的な鉄道よりも線路の幅が狭く、車両も小規模の鉄道)も那覇市と沖縄市間で開通し、産業経済の大動脈として活況を呈していました。そして現在も、約400年余り受け継がれてきた伝統の「与那原大綱曳」まつりや、西原きらきらビーチで開催されるマリンスポーツの大会などで町は賑わいをみせています。

しかし、インバウンドへの取り組みにあたっては、旅行者を受け入れるインフラ整備の遅れや宿泊施設の不足といった課題も。特に交通インフラの課題は大きく、那覇空港や主要観光地のある西海岸からの公共交通アクセスがバスに限定されることから、外国人が訪問しにくいという現状があります。

ワークショップでは、与那原・西原の魅力をPRする仮想の会社を各グループで結成し、モデルコース作成とプロモーション企画に取り組みました。

 

「これからどんどん伸びる」と見込まれる地域

最初に、与那原町観光商工課長の比嘉義明氏から「今日の取り組みを次年度以降の観光に活かしていきたい」と挨拶をいただき、続いてJNTOの小堀守理事が登壇。訪日インバウンドの動向や地域に訪日インバウンドを誘致するための基本情報を解説しながら、「立地から見るとこれからどんどん伸びていく地域だと思います。一度ファンになると頻繁に訪れてくれるようになるのでは?」と話がありました。

その後、株式会社創造開発研究所の姫井理子氏がファシリテーター役を務め、各グループで自己紹介と会社名を決める相談へ。沖縄県の県民性なのか、参加者同士は早くも旧知の仲のような雰囲気。和やかなムードで意見交換が進みました。

JNTOの小堀守理事が訪日インバウンドの動向などを解説

 

ターゲットをとことん意識したコンテンツづくりが成功の秘訣

続いて行われたのは、株式会社JTB総合研究所の吉口克利氏による「インバウンドを想定したコンテンツとターゲット層の検討」と題した座学。与那原・西原の強みと弱みを整理したうえで、訪日外国人向けの観光資源の例と4つのターゲット候補が紹介されました。

強みとして挙げられたのは、沖縄県は外国人宿泊数が全国で5位、那覇空港利用者数も年々増加しているという点。また、個人旅行者のリピーターが増えており、ローカルエリアの潜在性に対するニーズが拡大しているということでした。しかしその反面、「与那原・西原には相対的にインパクトのある観光資源が少ない。しかし、もっと掘り下げればきっと見つかります」と吉口氏。那覇市や他の集客スポットからの誘客を意識すべきと強調しました。

「普段、どこで外国人を見かける?」という吉口氏の問いに対し、ゲストハウスのスタッフである参加者からは「台湾人、韓国人などの若い一人旅客の宿泊が多いです。食事はどこで食べているんでしょうね。わかりません」という意見が。別の参加者からも「きらきらビーチでは、香港人、韓国人、ヨーロッパ人も見かけます」。吉口氏は「プロモーションを考えるうえでターゲットの詳細な情報はとても重要」と呼びかけ、続くワークショップを進めるうえで忘れてはいけないこととして伝えました。

 

与那原・西原“だけ”のコンテンツを考えるグループワーク

いよいよ具体的な観光コンテンツの作成に取り組むグループワークがスタート。吉口氏が提示した4つのターゲットの中から1つ選び、そのターゲットに対する魅力的な観光資源を思いつくままに付箋に書き出していきます。そば打ち体験、サンゴの植え付け、サトウキビの刈り取りなど、沖縄ならではの体験コンテンツが並ぶなか、「私の家(家庭料理)」という何とも親近感のあるアイデアも。軽便鉄道の駅舎や瓦工場の見学など、町の歴史を感じられる資源も提案されました。

ひと通りの観光資源が出尽くしたら、ターゲットに沿ったコンテンツをピックアップしてモデルコースにまとめていきます。「ちょっと待って。これだと沖縄のどこでもできるツアーかもしれない!」と、“今だけ”“ここだけ”を意識したプランになるよう何度も練り直すグループもあり、会場内は白熱した空気に包まれていました。

フリーライターのノアーム・カッツ氏からは、「欧米人、特にフランス人は、ゆったりとした時間を好みます。だから、あまりハードなスケジュールにならないように組むのがポイントです。また、ここは独特の文化や歴史がある町。自分では当たり前に思うところを探してください。そんなところに外国人はおもしろさを感じます」とアドバイスがありました。

グループごとに観光コンテンツを作成

 

プロモーション企画をまとめ、いよいよ発表!

後半の座学のテーマは、「インバウンドプロモーションの考え方」。株式会社JTBコミュニケーションデザインの久野道広氏が登壇し、SNSやウェブサイト、パンフレット、観光案内所などでのリアルコミュニケーションといったプロモーション方法の効果的な活用法をレクチャーしました。

そして、各グループでもキャッチコピーとキービジュアル、具体的なプロモーション手法を考案しました。キャッチコピーをまとめるためにキーワードを付箋に書き出して活用するグループがあり、今回のワークショップで学んだ手法をさっそく取り入れている様子も。インスタグラムをメインのプロモーションに活用することになったグループでは、パンフレットを切り貼りして、楽しそうでキュートなビジュアルを作成していました。

最後は、各グループの発表です。5時間に及んだワークショップで練り上げた観光コースとプロモーションプランを代表者がスピーチ。発表後にはそれぞれのグループに大きな拍手が送られていました。

ワークショップ終了後のアンケートでは、「インバウンドの取り組みに対する意識の変化はあったか」という問いに、「積極的に参画したい」が27%、「役割があれば参画したい」が46%という結果となり、参加者の意欲的な姿勢を感じ取ることができました。また、「考え方を柔軟にすることが大切だと思いました」「外国人観光客が少ない地域で、このような意識啓発があったのはとても重要だと思いました」といった意見も寄せられ、今回のワークショップが有意義だったことも示唆されました。

ワークショップを終え、「あなたが考える3年後」シートを手にする参加者の皆さん

 

各グループの発表内容

・UMIMACHI

「ルネッサンス±0」

ターゲットは、フランス・パリ出身のマリーさん。仕事で多忙な日々を送る独身女性を想定しました。5~10月の夏コースでは、1日目にきらきらビーチで婚活パーティーという目玉コンテンツを設定し、貝殻アートやバーベキューを体験。2日目以降は、島と島をボートで巡るアイランドホッピングや、大綱曳の綱作り体験、与那原を代表する居酒屋「足立屋」などで地元の人との交流も深めてもらいます。また、冬コースには、久高島や運玉森などのパワースポット巡りも。動画を活用したプロモーションでは、聖クララ教会で式を挙げる“成功した人(プラスの人)”と、オリオン通りでおばーと一緒に飲んでいる“失敗した人(マイナスの人)”をイメージに使います。

UMIMACHI

・(株)ウンタマギルー

「これであなたも うちな~んちゅ♡」

「何もないところだけど、何でもあるところ」という意見から生まれた企画。30代のフランス人カップルを対象に、日本文化を体験してもらいます。琉装を着て歴史を感じるさまざまなスポットで撮影し、地元の島野菜を使った料理を地元の人と一緒に作り、ゲストハウスに宿泊。この地ならではの暮らしを体験できるプランです。また、世界にひとつしかない西原の空手博物館での空手体験は、ここでしか残せない“オンリーワン”の思い出に。プロモーションは、世界中で利用されている旅行サイトに、町の動画広告を掲載。また、与那原・西原の暮らしを楽しんでもらった観光客に、SNSやブログで情報を拡散してもらい口コミ効果も狙います。

(株)ウンタマギルー

・(株)運玉森

「よなばる・西原の夏を楽しもう!キラメく女子の1日満喫コース」

韓国のインスタ好きな20~30代の女性をターゲットに、きらきらビーチやオリオン通りのネオンなど、“インスタ映え”する綺麗なスポットを中心に巡るコースを提案。まず向かうのは、奥原製陶所シーサーギャラリーの見学とシーサーの色付け体験。すぐに持ち帰られるように色付けのみを体験するのがポイントです。次にきらきらビーチで、海をバックに先ほど作ったシーサーの写真をパシャリ。ボタールの「小倉シュー」、内間御殿(うちまうどぅん)のサワフジ(サガリバナ)なども撮影にうってつけです。プロモーションは、インスタグラマー向けのモニターツアーを組み、韓国の航空会社の機内誌に広告掲載も展開します。

(株)運玉森

・ライジングサン

午前コース:「HEALTHY Merci」

午後コース:「YO! NA BAR Experience」

20~40代のフランス人向けに、健康と感謝をキーワードにしたツアーを考案。午前コースの前日は、与那原の民宿に宿泊。翌早朝に海の上で楽しむサップヨガで体を清め、そのままビーチで健康を意識したベジタリアン朝食をいただきます。その後のシーサーづくりでは、沖縄の守り神であるシーサーと向き合いながら精神を養う時間に。ランチで沖縄そばも味わいます。午後コースでは、沖縄そば作りや琉装の着付け体験と街歩き、板良敷の海岸で休憩するなどゆったりとした時間を。ワインを愉しめるバーで夜の沖縄も堪能してもらいます。朝日と星空をつないだキービジュアルで、1日中楽しめる場所であることをアピール。SNSや与那原町が運営する観光ポータルサイトYONABARU NAVIなどで情報を配信します。

ライジングサン

・TUG

「綱ぐ 繋がる(Lead Lead Lead!)」

ターゲットは、20~50代の台湾人。400年余りの間受け継がれる伝統行事「与那原大綱曳」を楽しんでもらう1泊2日のプランです。初日は、与那原軽便駅舎からスタート。観光タクシーで移動しながら、綱づくりや赤瓦づくりの体験、内間御殿など町の散策を楽しみます。2日目はいよいよ大綱曳まつり。自身も綱武士として参加し、大迫力の真剣勝負を堪能してもらい、夜はオリオン通りでお酒を楽しむ傍ら、地元の人との交流を深めてもらいます。プロモーションは、PR動画を作成しSNSで拡散。「綱武士になろう!」をキャッチフレーズに、台湾の家族連れが綱武士になって喜ぶ姿や、さまざまな国から来た外国人が大綱曳に参加する様子を配信します。

TUG

 

発表の講評

・株式会社創造開発研究所 姫井理子氏

「ターゲットにマリーさんという名前を付けるアイデアは、ターゲットを明確にイメージしやすいと思いました。地元野菜を使って地元の人と一緒に沖縄料理を作ったり、どこにもない空手博物館をツアーに盛り込んだりしたツアーも、“ここだけ”というポイントを押さえていてとても素晴らしいですね」

・株式会社JTB総合研究所 吉口克利氏

「与那原大綱曳は1日のイベントですが、綱づくりは3カ月間続くそうですね。つまり、3カ月間に渡る体験メニューが考えられるので、素晴らしい観光資源になり得ると感じました。各ツアーにもさまざまな体験メニューが盛り込まれていましたが、それぞれの体験を歴史やストーリーで結びつける何かがあるともっといいコンテンツになると思います。しかし、短時間の中でとてもいい形でまとまったと思いました」

・株式会社JTBコミュニケーションデザイン 久野道広氏

「とてもポテンシャルの高い町だと思いました。今日の参加者の中に、仕事でこの地を訪れ好きになり、半年前に移住された方がいらっしゃいました。そういう方がいらっしゃることを皆さんは誇りに思い、自信を持っていただきたい。外国人にその魅力を伝える力を、今後も磨き上げてほしいですね」

・フリーライター ノアーム・カッツ氏

「全体的にプロモーションがとても良く、私自身も非常に興味が沸きました。今日初めて訪れましたが、ゆっくり滞在したいと思いました。空手博物館は初めて知りました。“日本だけ”“唯一”というフレーズは響くと思いますし、料理も外国人にとってとても興味のあるコンテンツです。それから与那原と西原の人も非常に重要な観光資源です。ぜひ、町の人と外国人が交流できる機会をもっと増やしてほしいですね。リピーターが増えるかもしれません!」

・西原町役場建設部産業観光課 玉那覇敦也氏

「参加してくださった皆様とのつながり、そして作ったプランをここで終わらせるのはもったいない。2年後、5年後でもいい…今日のプランの中からひとつでも、今日の出会いがあったからこそ実現できたというストーリーが生まれるといいなと思います。すべてにおいて戦略を立てることの大切さを学びました。素敵な機会を提供してくださいまして本当にありがとうございました」

・JNTO理事 小堀守

「沖縄はハワイに並ぶような観光地になっていただきたい。そのためには、1週間滞在しても飽きない、リラックスできるプランということを意識して、観光資源を磨き上げていただくとよいと思います。沖縄には、年間何百艘ものクルーズ船が寄港し、多いときは港に100台以上の観光バスが並ぶといいます。そういう人たちに与那原・西原に来てもらうためにはどうしたらよいのか、現実的に考える時期に来ていると思います。今日のさまざまな提案をこれからの町づくりや皆さんの業務に活かしていただきたいですね。大変な熱気でしたね。大成功だった思います。ありがとうございました!」

ワークショップの内容を視覚的に記録したグラフィックレコーディング

 

ワークショップスライド画像
1.インバウンドの動向・トレンドについて
2.ワークショップの流れ
3.座学①インバウンドを想定したコンテンツとターゲット層の検討
4.座学②インバウンドプロモーションの考え方

 

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