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山形の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ

山形の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ

山形の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ

2017年12月7日、山形テルサにて、「山形の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ」が開催されました。参加者は、観光業に携わっている方や地元企業に勤める方、そしてインバウンドワークショップでは初めてとなる地元の高校生など、総勢35名。約4時間半にわたって行われたワークショップの様子をレポートします。

広域で連携し、豊富な観光資源をもっと活かしたい!

蔵王、鳥海、西吾妻や出羽三山などの名峰、芭蕉の句にも詠われた最上川など、豊かな自然に恵まれた山形県。全市町村に温泉が湧出する全国唯一の県であり、蔵王に代表されるスキー場、米沢牛やさくらんぼといった地元の食材など魅力的な観光資源を有しています。こうした豊富な資源を活かして外国人旅行者を誘致するためには、市町村の枠を越えた取り組みが課題となっています。

ワークショップは、JNTOインバウド戦略部地域プロモーション連携室の広瀬正彦室長による挨拶からスタート。インバウンド施策の重要性、インバウンドの動向やトレンドについてレクチャーし、「訪日外国人宿泊客数で山形は47都道府県中41番目ですが、その分伸びしろがあります。今回のワークショップをいい機会として、“明日の山形”を考えていきましょう」と呼びかけました。

JNTOの広瀬正彦室長による挨拶からスタート

続いて、グループワークと座学に入っていきます。参加者に与えられたミッションは、同じテーブルに座った5~6人が山形を紹介する“PR会社の社員”と仮定し、山形に外国人旅行者を呼び込むためのパッケージツアーとプロモーション手法を考案すること。

株式会社創造開発研究所の姫井理子氏の進行により、まずはグループごとにウォーミングアップとして、インバウンドでアピールできる会社名を考える作業へ。「山形の極」「KITEKERO.CO」など、地域色豊かなユニークな会社名が出揃いました。姫井氏は、「知る人ぞ知る資源はもちろん、よく知られているものでも視点を少し変えることで、より魅力的に見せることができます。今日はそんな考え方で、資源を掘り起こし、磨いていってください」と参加者に投げかけました。

インバウンドワークショップ初の高校生も参加

 

本当に求めていることは何か? ターゲットを知ることから始めよう

続く座学には、株式会社JTB総合研究所の黒須宏志氏が登壇。山形のポジショニングと現状のインバウンド施策、「自然や文化面における高い資源性を有しながら、ホテルタイプの宿泊施設が少ない」といった山形の強みと弱みについて紹介されました。さらに、「お客様を知ることがマーケティングの基本。まずは外国人旅行者の行動を見ていくことが、ターゲットの理解に繋がります」と呼びかけ、見落とされがちな“ターゲット設定”の大切さを強調しました。

こうした座学の内容を受けて取り組んだのが、ターゲットの設定と観光コンテンツの検討です。グループごとに、「ローカルテイスト大好きな台湾人リピーター」「旅慣れし、洗練された香港女性」「日本の歴史文化に興味津々な米国ファミリー」「ワクワク感を求める欧米系カップル」という山形のインバウンドにふさわしい4つのターゲット像からひとつを選定。その後、個人ワークで山形の魅力的な観光資源をどんどん付箋に書き出しました。「銀山温泉」「最上川」「米沢牛」など知名度の高い観光資源だけでなく、「方言」「人情」といった山形の人の温かさを感じさせるキーワードも! 挙げられたすべての資源をグループ内で精査し、メインの観光コンテンツを決定。これにいくつかの資源を組み合わせて、バランスやバリエーションを考えながら、各ターゲットに響く観光ルートを作成します。

姫井氏は、「テーマ性を意識しながら観光資源を組み合わせていくことが、魅力的なルートづくりのコツです」とアドバイス。また、外国人視点のアドバイザーを務めたフリーライターのノーアム・カッツ氏は、米国ファミリーをターゲットとするグループに向けて、「アメリカ人はリラックスできて、じっくりひとつのところで楽しめるようなプランを好みます。無理させないことが大切です」と助言しました。そうした意見をもとに、どのグループもよりターゲットの立場に立って深く考え、盛り込む観光資源の数や全体の流れを再確認していました。そして、テーマとストーリーのある6つのパッケージツアーが完成しました。

グループごとにパッケージツアーを作成

 

山形全域の魅力をフルに活かした、ユニークな企画が完成!

さらに後半では、前半でまとめられたパッケージツアーについて、プロモーション手法を検討していきます。その前に、株式会社JTBコミュニケーションデザインの宮口直人氏が、観光プロモーションの成功の秘訣や大切な考え方についてレクチャー。プロモーションを行うにあたって特に理解してほしいこととして、「お客様の行動は、知って、興味を持って、予約・購入するというプロセスで進んでいきます。お客様がどの段階にいるのかを考えながら、SNS、webサイト、パンフレットといったプロモーション手段を的確に選ぶことが大切です」と話しました。

いよいよ最後となるグループワークでは、ターゲットに発信するプロモーション要素として、キャッチコピーを考え、キービジュアルのイメージを固めていきました。こうして個性豊かな6つのパッケージツアーとプロモーションプランが完成し、各グループの発表が行われました。

ワークショップ終了後には、「今後は山形を自ら積極的にPRしていきます」「これからも定期的にイベントがあるとうれしい」といった訪日インバウンドに対する前向きな意見が多数寄せられました。さらには「訪日インバウンドは、外国の方の考えを聞くことが本当に大切だと思いました」という確かな手応えを得たような感想も。今回のワークショップをきっかけに、山形のインバウンドが大いに盛り上がりそうな期待がふくらみます。

ワークショップを通して山形の魅力を再発見した参加者の皆さん

 

各グループの発表内容

・おしょうしな(株)

「Elements of Yamagata」

小学生の子どもを持つ米国ファミリーに向けた、感情が揺さぶられる体験型の旅。1日目は山形市内で芋煮や漬物など山形の味覚を味わってもらい、2日目は天童市で将棋の駒づくりを体験。その後、大正時代の雰囲気が感じられる銀山温泉で浴衣を着て、幻想的で日本らしい風情を楽しんでもらいます。3日目は最上川のこたつ舟に乗船し、船頭さんらと話をしながら雪景色を堪能した後は、クラゲの展示種類数世界一の加茂水族館で“クラゲアイス”を食べて、最後の旅の思い出に。プロモーションは、日本語を学ぶ外国人のコミュニティサイトに山形のPR動画を流すなど、日本文化に関心がある層に向けて訴求します。

おしょうしな(株)

・山形の極

「ハートフル山形で、ぽかぽかしましょ」

米国ファミリーをターゲットに、1泊2日の初心者向け体験型コースを企画。初夏はさくらんぼ狩り、初秋は芋煮会と、時期によって体験メニューを選べるのがポイント。宿泊地も蔵王、上山、天童の3つの温泉からセレクトできます。そのほか、山寺で約1000段の階段の上り下りや将棋の駒の文字入れ体験などを楽しんでもらい、2日目の昼食は山形名物の冷やしラーメンか冷やし肉そばを提供。プロモーションのキャッチコピーは「よぐきたなっす ハートフル山形」。これを全県民に広めて、外国人旅行者を見かけたら、「よぐきたなっす(=いらっしゃいませ)」と声を掛けてほしいという願いを込めました。さらにSNSを使ったプロモーションも進めていきます。

山形の極

・エフ

「400年前にタイムスリップ 最上川にて候」

リピーターの台湾ファミリーに向けた、最上川の歴史文化を体験してもらうツアー。1日目はこぎん刺しの服を着用してもらい、山形市高瀬地区で紅花摘みを体験。昼食はそばがきを提供し、最上川の舟下りの後、銀山温泉でこけしづくり体験や山菜料理を楽しんでもらいます。2日目は羽黒山の宿坊で山伏体験。その後は鼻緒を自作したわらじでウォーキングを行い、湯田川温泉でたけのこ料理とホタル観賞を堪能します。3日目はタケノコ掘り体験の後、出羽三山へ。プロモーションは、400年前にタイムスリップしたような動画を制作してSNSで発信。また撮影した写真が昔にタイムスリップしたようなイメージに変貌するユニークなアプリを開発し、話題性を提供します。

エフ

・KITEKERO CO.

「日常を忘れる旅、癒しの隠れ里山形」

癒しを提供し、ストレス解消をしてもらうことがコンセプト。ターゲットは香港の30~40代の女性です。1日目は上山市でワイナリーとワインバルを巡った後、蔵王でスキーか雪遊びを堪能し、夜は樹氷のライトアップを楽しみながら、蔵王温泉に宿泊。2日目は、地元の酒蔵で試飲や買い物をした後、居合体験に挑戦してストレス発散。銀山温泉で食事と宿泊を楽しんでもらいます。プロモーションのキービジュアルは、女性の頭の上で携帯電話を充電しているようなイメージ。疲れた女性が山形を巡るごとに充電されていき、キャリアウーマンの顔になって帰っていく様子を表現した動画を制作し、SNSで配信します。

KITEKERO CO.

・THE KING and Egbay CO.

「湯けむり美女のさくらんぼツアー」

想定する季節は初夏。ターゲットは香港の30〜40代の女性グループ。1日目は米沢牛を堪能した後、日本で唯一の間欠泉、広河原温泉へ。夕食は山形の山の幸、芋煮を提供します。2日目はワイナリー巡りの後、縁切り寺の山寺と縁結び寺の若松寺を参拝。さくらんぼ狩りの後、美人の湯で有名な蔵王温泉に宿泊します。3日目はこけしの絵付け体験と、スピリチュアルポイントのお釜でトレッキング。ツアー最後には、湯の花コスメなど買い物の時間も設けます。プロモーションのキービジュアルは、間欠泉の温泉からサクランボ、牛肉、こけしが噴き出しているイメージ。このビジュアルを動画にし、SNSなどで配信するとともに、ブロガー視察や女性誌へのPR広告掲載なども行います。

THE KING and Egbay CO.

・SALDI

「2人のアツアツ雪どけツアー」

20代の米国カップルをターゲットに、メインテーマの雪を白と捉えてプランを展開。1日目は米沢市の「雪灯篭まつり」でかまくらをつくり、その中で米沢ラーメンを食べてもらいます。その後は秘湯として有名な白布温泉でゆっくり。2日目は山形県随一の積雪量を誇る天元台高原スキー場でスノーシュー体験の後、銀山温泉で着物体験やこけしの絵付け体験を。3日目は最上川で舟下りをしながら、白酒を堪能します。プロモーションのキービジュアルとして、ハート型に象られた雪灯篭の中に二輪の花びらが咲いているイメージで展開。銀山温泉を訪れた外国人旅行者を対象に写真・動画コンテストを実施するほか、海外向けのPR動画を制作してSNSで配信します。

SALDI

 

発表の講評

・株式会社JTBコミュニケーションデザイン 宮口直人氏

「どのグループもターゲットのことを一番に考え、山形の特徴を非常によく引き出した内容で、すばらしいと思いました。特に高校生グループのプレゼンは、伝え方が感情豊かで引き込まれました。全体として言えるのは、ツアーのコンテンツをもっと絞り込み、ストーリーやコンセプトを重視した組み立てにすることで、よりターゲットのニーズに合ったプランになるということ。そこをぜひ意識しながら実践につなげてほしいと思います」

・フリーライター ノーアム・カッツ氏

「山形のみなさんはとても創造力がありますね。内容だけでなく、プロモーションのコピー、ビジュアルも印象に残るものがそれぞれにありました。わらじを履いて歩くだけでなく鼻緒を自作したり、こけしの絵付けをしたりと、五感を使った体験ができるとみんな山形のファンになります。またアメリカ人の中で“日本とワイン”というのはまだ一致しないので、ワイナリー巡りは意外性があっていい。口コミで広がっていきそうです」

・大歩危小歩危行ってみる会 植田佳宏氏

「私たちの地元は半分以上が香港のお客様ですが、山形には香港の方が好きな要素が盛りだくさん。東京から新幹線で来られて、米沢牛、ラーメン、果物、温泉、雪とすべてがそろっています。非常に有望な市場だと思いますし、ぜひ自信を持ってほしい。資源がありすぎるという悩みもあると思いますが、ターゲットとする国の方々が何が一番好きなのか、国に合わせたマーケティングで売り込んでいきましょう」

・JNTO 広瀬正彦

「山形の未来は明るいとつくづく思いました。特に高校生の発表がすばらしかったですね。今回のワークショップでは、山形のインバウンドをどう伸ばせるかについて真剣に考えていただくことができました。すぐにツアーにできそうな内容もありますが、コンテンツの磨き上げや誰がやるのかという役割分担も大切です。ここからは行政と民間が連携しながら、ひとつずつ実現していってほしいと思います」

ワークショップの内容を視覚的に記録したグラフィックレコーディング

 

ワークショップスライド画像
1. インバウンドの動向・トレンドについて
2. ワークショップの流れ
3. 座学① インバウンドを想定したコンテンツとターゲット層の検討
4. 座学② インバウンドプロモーションの考え方