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観光案内所で日本のファン、リピーターを増やす! JNTO認定外国人観光案内所シンポジウム開催レポート

観光案内所で日本のファン、リピーターを増やす! JNTO認定外国人観光案内所シンポジウム開催レポート

観光案内所で日本のファン、リピーターを増やす! JNTO認定外国人観光案内所シンポジウム開催レポート

インバウンドの再開にあたり、観光案内所の役割や魅力を多くの人に知ってもらおうと、2022年11月10日、JNTO主催によるシンポジウムをオンラインにて開催しました。ネットであらゆる情報を検索できる現在、観光案内所はどのような役割を担えばいいのか、またインバウンドにどう貢献するのかなどについて、JNTO認定外国人観光案内所で実際に業務にあたっているスタッフのリアルな声を聞きながら、有識者を交えたパネルディスカッションが行われました。本記事では、シンポジウムの内容をダイジェストとしてまとめています。

訪日旅行者に寄り添い旅をもっと楽しくする観光案内所

『JNTO 認定外国人観光案内所シンポジウム ~訪日インバウンドにおける観光案内所の役割とは?~』は、2022年11月10日に観光関係者、自治体、観光学部の学生など、どなたでも視聴可能な形でオンラインにて開催。400名以上の方に視聴いただきました。

このシンポジウムは、観光案内所の知られざる魅力と、観光案内所が地域と訪日旅行者をつなぐ重要な役割(地域×訪日旅行者のかけ橋)を持つことをお伝えし、観光案内所のポテンシャルへの理解を深めていただくことを目指して企画、開催されました。

『観光案内所を利用すると、旅はこんなに楽しくなる』『インバウンド再開において、観光案内所が担う役割』の2つのテーマで、リピーターが多い別府市と新富士駅の観光案内所スタッフに、案内所活用方法や訪日リピーターづくりの事例をご紹介いただいた後、有識者にコメントをいただくパネルディスカッションの形ですすめられました。

 

JNTO認定外国人観光案内所シンポジウム開催レポート

シンポジウム登壇者の方々

 

■シンポジウム登壇者の方々

認定外国人観光案内所スタッフ:
別府市産業連携・協働プラットフォームB-biz LINK 稲積京子
中学校の英語教員、子育てを経て、別府市のボランティア団体の案内所に入る。多言語ガイドブック作りに取り組みながら、20年以上別府駅の観光案内所で働く。
新富士駅観光案内所 鈴木ちづる
アメリカ在住10年。帰国後、外資系証券会社のセクレタリーに。2008年リーマンショックを機に地元の富士市に戻り、2009年より富士山麓の新富士駅観光案内所に勤務。

パネリスト:
株式会社やまとごころ 代表取締役 村山慶輔
トラベルボイス株式会社 取締役編集長 山岡薫

ファシリテーター:
JNTO 理事長代理 蔵持京治

 

【事例紹介・別府市】観光案内所に行かない方々にどのように観光案内所の魅力を伝えるか?

別府市産業連携・協働プラットフォームB-biz LINK(カテゴリー2/JNTO認定案内所)の稲積京子氏は、「普段観光案内所には行かない方々、前を通りかかっただけの方々に、どれだけ別府の魅力を伝えられるかが腕の見せどころ」とし、スタッフおすすめの駅周辺の立ち寄りスポットを、スタッフ独自のコメントや写真と共に掲載した大きなボードを店頭に設置していることを紹介。きっかけは「ホテルにチェックインするまでの2時間を別府駅周辺で過ごしたい」というお客様からのリクエスト。駅周辺には大きなショッピング街などがないため、スタッフからの情報をもとに作成・掲示したところ、非常に評判が良かったとのこと。

 

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別府市・稲積氏の事例紹介①

 

また、別府の温泉街で飲むことができる温泉や、地元の人がよく訪れる普段使いの温泉銭湯など、地元だからこそのコアな情報が旅行者に喜ばれることを紹介しました。

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別府市・稲積氏の事例紹介➁

 

【事例紹介・新富士駅観光案内所】お客様をがっかりさせないための工夫

新富士駅観光案内所(カテゴリー2 /JNTO認定案内所)の鈴木ちづる氏は、まず、観光案内所の立地を説明。新富士駅は、周辺に観光客が立ち寄りたくなるような商店街や観光スポットがまったくないにもかかわらず、“富士山に一番近い新幹線駅”ということで多くの外国人観光客が訪れる、先の別府の事例とは全く異なる条件下にあることを説明。

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新富士駅観光案内所・鈴木氏の事例紹介①

 

新富士駅観光案内所で特に喜ばれているのが『男前・べっぴん証明書』。夏に富士山を近くで見ようと多くの外国人観光客が訪れるものの、夏は富士山が雲の陰に隠れる可能性が最も高い季節。そのため、はるばる富士山を見に訪れたにもかかわらず、その姿を拝めなかった方々に対して、『男前・べっぴん証明書』を発行しています。富士山の姿が見られないことがなぜ、男前・べっぴんにつながるのか? これは、富士山の主祭神である美しい女神『さくやひめ』が美男であるあなたに照れたから姿を現さなかった、あるいは美女であるあなたに嫉妬して雲隠れしてしまった、といった説明をしながら証明書を渡すと、みなさんに笑顔が広がるのだそうです。

 

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新富士駅観光案内所・鈴木氏の事例紹介②

 

このような事例からもわかるように、お客様の体験をより豊かにできるローカルならではの情報やおもてなしの心で対応することが、ネットが普及しさまざまな情報をどこからでも得られるようになった中で、訪日旅行者の満足度を上げるという観光案内所の大きな役割の一つになっているのだと理解できる事例紹介となりました。

 

地域の顔として、ファンを増やすことに貢献

観光客と直接触れ合うお二方の体験談に共通していたのは、“リピーター”の存在です。新富士の鈴木氏は「海外からのお客様がたびたび日本を訪れるのは、日本での良い思い出があるから。その良い思い出をつくるお手伝いができるのが、観光案内所」とした上で、来日の度に観光案内所を訪れるリピーターの事例を紹介。観光情報の入手、トラブル解消、立ち寄りなど、理由問わずどんな相談にも真心で対応することで、人と人とがつながり、笑顔が生まれる。それがリピーターにつながるのだと語りました。

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新富士駅観光案内所・鈴木氏によるリピーター紹介

 

また、別府の稲積氏は「最近、『リピーターを増やしましょう』『満足度を高めましょう』ということを耳にしますが、一番大事なのは、目の前のお客さまを笑顔で送り出すことだけ」と基本姿勢を強調。「それができればリピーターを生むし、外国人の方々にも満足していただけると思っています」と語りました。

 

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別府市・稲積氏によるリピーター紹介

 

観光案内所が地域の顔となり、心を込めた親切な案内をすることで、訪日旅行者の方々の心に残り、「またここを訪れたい」と思わせる存在になる。人と人とのつながりこそが、日本や地域のファンを増やすことにつながっているのだという実感が湧く事例紹介となりました。

 

【パネリスト・コメント】ネット上では得られない“人とのつながり” を

パネリストとしてシンポジウムに参加した、観光産業ニュースを発信する『トラベルボイス』取締役編集長の山岡薫氏は「これまで観光案内所を記事で取り上げることが少なかったことを反省した」と述べ、「観光案内所のスタッフたちの日々の努力や工夫に頭が下がる思いである」と語りました。

「旅行者によるインターネット情報の検索トレンドは『ローカルの情報を取りに行く』という傾向がしばらく続いている。訪日旅行者はネット上の口コミも参考にするが、より地域の方々がおすすめするものに興味を持っているように感じる。観光案内所が接点となってリピーターが増えているという話を聞いて、驚くとともに素晴らしいなと思った。観光案内所は短い時間で端的にしっかりとお客様の要望に応えなければいけないが、その期待を超えたサービスを提供することで、お客様の満足度は向上する。そのための努力や人材育成もされていることを知ることができて、とても良かった」と感想を述べました。

国内最大級のインバウンド観光情報サイト『やまとごころ』代表取締役の村山慶輔氏は、「観光案内所のスタッフに手土産を持ってきたり、毎回一緒に写真を撮ったりするというエピソードを聞いて、観光客は“人”にリピートするのだと思った。観光案内所で、そのスタッフならではのおすすめを提供することに価値があり、出会った人の印象で旅の印象が決まるということを思うと、まさに、観光案内所のスタッフは“地域の看板”であると言える。自治体、DMO、地域の事業者はもっと観光案内所と連携すると良いのではないかと感じた」と語りました。

お客様と日々向き合っている観光案内所は、観光事業における一次情報の宝庫。自治体をはじめとする横のつながりを深め、お互いの活動や情報を共有し合うことで、観光事業全体の発展につながる、そんな可能性が垣間見えたシンポジウムとなりました。

シンポジウム後の視聴者からのアンケートでは、以下のようなコメントが寄せられました。

・観光案内所は、重要な拠点となっていることが確認できた。
・観光案内所自体が観光資源となるような取組が必要だと感じた。
・案内所が「地域のファンづくりの最前線」であることを改めて認識し、得られた一次情報をどうマーケティングに活かすか考えていきたい。
・インバウンドも人とのつながり、ホスピタリティが大事。観光地だけではリピーターなど作れない。
・今回のシンポジウムはまさに目から鱗。観光案内所は「地域の顔」、単なる観光案内の場所ではなく、マーケティングやプランニング等DMOに活用できる重要不可欠な場所。


当シンポジウムで、観光案内所が「地域×訪日旅行者のかけ橋」となっていること、観光案内所がきっかけで、地域のみならず日本のリピーターが生み出されていることを改めて実感しました。

観光案内所は地域のマーケティング拠点でもあります。住民が気付いていない地域の魅力、地域に足りないもの、訪日旅行者が地域を訪れた理由や背景など、訪日旅行者に日々接する観光案内所スタッフだからこその情報を聞き取り、地域に共有することができます。旅ナカで訪日旅行者からもたらされる貴重な情報を、地域の観光コンテンツ磨き上げや受入体制整備、PRなどに活かしていただければと思っています。

皆さんも、次の旅でJNTO認定観光案内所に立ち寄ってみてください。青に「i」のシンボルマークが目印です。

【認定案内所検索】
https://tic.jnto.go.jp/jpn/index.php


■認定案内所シンポジウム開催概要

JNTO 認定外国人観光案内所シンポジウム
~訪日インバウンドにおける観光案内所の役割とは?~

・開催日時:2022 年11 月10 日(木)14 時~15 時30 分
・開催形式:オンライン
・参加(視聴):無料
・対象:観光関係者、自治体、観光学部の学生など、どなたでも視聴可能

登壇者:
村山慶輔氏(株式会社やまとごころ代表取締役)
山岡薫氏(トラベルボイス株式会社取締役編集長)
稲積京子氏(別府市産業連携・協働プラットフォームB-biz LINK【カテゴリー2/JNTO認定案内所】)
鈴木ちづる氏(新富士駅観光案内所【カテゴリー2/JNTO認定案内所】)
蔵持京治(JNTO 理事長代理)


JNTO認定外国人観光案内所シンポジウム開催レポート

JNTO地域連携部受入対策グループでは、外国人観光案内所の認定(カテゴリー1~3、パートナー施設)を行っています。現在、JNTO認定外国人観光案内所(以下、認定案内所)は、全国に1,500カ所以上あります。

認定案内所スタッフ限定のセミナーを毎年6回ほど開催していますが、今年度は訪日旅行再開に向け、e-learningやFacebookのコミュニケーションプラットフォーム開設、シンポジウム開催など認定案内所の支援事業を拡大しました(認定、研修会ともに無料)。未認定の案内所がございましたら、認定の申請をぜひご検討ください。

【認定について】
https://www.jnto.go.jp/jpn/projects/visitor_support/tic_nintei.html