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地域の旬の魅⼒を海外にライブ配信 ~Fun From Home事業を活用した長野県の取組み~

地域の旬の魅⼒を海外にライブ配信 ~Fun From Home事業を活用した長野県の取組み~

地域の旬の魅⼒を海外にライブ配信 ~Fun From Home事業を活用した長野県の取組み~

JNTOでは、賛助団体・会員である自治体やDMO、企業などを対象に「Fun From Home事業(以下FFH事業)」を実施しています。この事業は、参加団体が撮影したライブ映像をJNTO海外事務所の Facebookページで同時にシェア配信することで、海外から日本各地の旬の魅力をライブで楽しんでもらうというもの。今回は、2021年度にFFH事業を活用した長野県観光部観光誘客課国際観光推進室の柿崎茂さんにお話を伺いました。コンテンツ制作から配信に至るプロセスでの苦労や配信後の反響などについて、体験者の立場から語っていただきます。

「Fun From Home事業」とは ~ライブ映像をJNTO海外事務所でシェア配信することで、訪日関心層に効率的にアピール~

JNTOは、世界の主要な訪日旅行市場都市に海外事務所を設置しています。海外事務所では、現地市場のマーケティング情報の収集・分析などを行うとともに、Facebook等のSNSなどを通じて「信頼できる訪日観光情報」の提供を行っています。

JNTO海外事務所が運営するFacebookでは、各市場における多くの「訪日に興味がある消費者」がフォロワーになっています(シンガポール市場96万人、米国市場 58 万人、英国市場 11 万人など)。 そして、JNTOの投稿に対して「早く日本に行きたい!」といったコメントが多く寄せられています。

Fun From Home事業(以下「FFH事業」)は、このようなJNTO海外事務所のネットワークや知見などを活用し、コロナ禍でも海外から「日本の今」を楽しんでもらえるよう、そして次の旅行先に日本を選択してもらえるよう、対象市場に情報発信する事業です。全国の自治体や企業の参加団体がSNSでライブ映像を配信するにあたり、JNTOがコンテンツ制作や配信の面でアドバイスや技術的サポートをするとともに、各海外事務所の Facebookページで事前告知と当日のシェア配信をします。

 

参加経験者に伺う、FFH事業ライブ配信の準備から実施、効果まで

今回は、2021年度にFFH事業に参加いただいた長野県観光誘客課の柿崎茂さんにお話を伺いました。長野県の動画コンテンツ「中山道~江戸時代へタイムスリップの旅~」は、2021年10月26日に長野県の公式Facebookページ「Go! Nagano, Japan」でライブ配信されるとともにJNTOのシドニー、ロサンゼルス、トロントの各海外事務所でも同時シェア配信されました。

FFH_ダニエル氏

現地でガイド役を務めたダニエルさん(中央)と、スタジオのブレアさん(右下)のやり取りでライブ配信が進む

 

―長野県では、なぜFFH事業を活用しようと思われたのですか?

「長野県のFacebookフォロワーを増やしたいという目的で応募しました。コロナ以前は台湾・中国・香港・オーストラリアなどを中心にインバウンドは好調だったため、正直、デジタルツールを用いた発信は積極的には行っていませんでした。コロナ禍になって本格的に取り組み始めたのですが、人材や機材などのリソース不足もあって、思うようにフォロワー数が伸びていなかった。そんなときにFFH事業を知り、ぜひ参加してみたいと思いました。実は今回(2021年度)が2回目の参加です。1回目はJNTOシンガポールをはじめとした東南アジア事務所のご協力を得て、東南アジアの方々に向けたプロモーションを行いました。このときの反響が大きかったことから、2回目の募集があった際も、迷うことなく応募しました。」

―コンテンツ制作から公開に至るプロセスについて、具体的に教えてください。

「最初に行うのはテーマ設定です。今回はロサンゼルス、トロント、シドニーの3事務所からの発信でしたので、欧米豪系の方々に好まれるコンテンツをリストアップしました。最も人気があるのは「スノーモンキー(地獄谷野猿公苑で温泉につかるニホンザル)」なのですが、これは冬季向けのコンテンツであることから今回は除外しました。次に人気のコンテンツは、「松本城」や「中山道」などの歴史・文化系コンテンツです。松本城は以前制作したコンテンツで取り上げたことがあるため、今回は「中山道」を選定しました。

次に行ったのが、ガイド役のキャスティングです。出演者の選定はとても重要なポイントです。ネイティブである必要はありませんが、地域の観光コンテンツの魅力を熟知し、対象地域の外国人観光客がどんな点に興味を持ち、どんな説明が必要かを心得ている観光ガイドがいると、コンテンツを紹介する際の充実度が増してくると思います。既にインバウンドに人気の地域では、地元の英語ガイドがいると思うので、有力な候補になるでしょう。

私たちの場合は、歩く旅に特化した「Walk Japan」というトラベルエージェントでガイドを務めるダニエルさんに案内役をお願いしました。ダニエルさんは県内在住で日本語も堪能。さらに中山道の魅力も知り尽くしている方ですから、安心してお任せすることができました。

キャスティングが決まったら、次はコンテンツのシナリオ作成です。中山道のどのスポットを、どんな視点で紹介するのが効果的か、長野県観光機構と長野県の職員3名でアイデアを出し、ダニエルさんの意見も聞きながらシナリオを練り上げていきました。」

―コンテンツ制作やライブ配信で、難しかった点はありましたか?

「シナリオ作成において苦労したのは、コース所要時間と配信時間の調整です。街道歩きが最大の魅力なので、その部分はしっかりと伝えたい。とはいえ、ライブ配信ですから、紹介するスポット間の移動時間が、視聴者にとっては冗長になってしまうという点が悩みどころでした。そこで、ポイントを『妻籠宿』に絞るとともに、あらかじめ「南木曾ろくろ細工」という伝統工芸品の製作風景を収録して、撮影現場の移動時間に流すなどの工夫をしました。

FFH_南木曾ろくろ細工の製作風景

あらかじめ録画し、移動時間に流した南木曾ろくろ細工の製作風景

 

制作にあたっては、JNTO職員や委託を受けた製作スタッフによるアドバイスが有効でした。特に、配信時間の選定は非常に重要でした。せっかく苦労して企画・実施しても、見てもらえなければ意味がありません。今回は主に米国、カナダ、豪州向けの配信ということで、この3か国の顧客層に効果的にリーチできる時間帯の選定が必要で、JNTO海外事務所の方と議論させていただき、結果的に日本時間の平日朝、という設定となりました。また当初、ダニエルさんは「中山道は何度もガイドとして紹介しているから、自分1人で全編アドリブでも大丈夫だよ」と言ってくれていたのですが、JNTO海外事務所の方から過去の経験を踏まえたアドバイスがあり、県の外国人職員であるブレアさんとの対話形式に改めました。その方が、ずっと同じ景色ではなく場面の切替えがあるので視聴者が飽きない、また、もしもトラブルがあった際に柔軟な対応ができるとのことでした。結果として、ダニエルさんとブレアさんのネイティブ同士のフランクなやりとりは、視聴者にとっても楽しめるものになったのではないかと思っています。また、長野県側でも「ポイントごとにクイズを出題する」など独自のアイデアを付け加えていきました。

また、現地のニーズを踏まえたコンテンツ選定のアドバイスも参考になりました。妻籠に新しいコーヒーショップがオープンしたので、私たちとしてはぜひ紹介したい。でも、お客さんにとって魅力的なのかどうか、判断に迷っていたんです。そこでJNTO海外事務所の方に相談したところ、「海外のお客さんにとって魅力的だと思います。メニューにビールがあるなら、ビールを飲んでもいいんじゃないですか?宿場町のカフェでビールが飲めるなんて、とても良いと思います。」という答えが返ってきたので、確信を持ってコーヒーショップを紹介することができました。こうしたプロセスを通じて、ライブ配信時のコンテンツ選定のみならず、配信先の市場の特徴を改めて理解することにも繋がったと感じています。

初めて参加したときには、JNTOにあらかじめ構成をチェックしてもらうなどのプロセスを煩雑に感じることもありましたが、機材貸与や権利関係の確認、海外事務所職員による各市場の旅行者目線での修正提案など、JNTOならではのサポートは不可欠だったと感じています。」

FFH_視聴者を飽きさせない工夫

クイズのフリップを用意するなど、視聴者を飽きさせない工夫を凝らした

 

※プロモーションノウハウについては以下の記事もご覧ください
・Facebook・Instagram運用ガイドライン
・在留外国人による日本の魅力発信キャンペーン
・東京2020五輪・パラにおけるJNTO訪日プロモーション
・新たな観光プロモーション・バーチャルライブツアー

―今回、Fun From Home事業に参加した反響はどうでしたか?

「長野県では、従来は「スキー愛好者」や「ウォーキング愛好者」など、対象分野を絞ったプロモーションが中心だったのですが、今回は「訪日関心層」にリーチできたと実感しています。自治体の予算やマンパワーで実施可能な広報には限界があって、従来は、動画コンテンツを作成しても、十分に活用できていないという現実がありました。今回、JNTOと連携できたことで、海外向けに、広く、かつターゲットである訪日関心層に効果的にメッセージを届けることができました。具体的には、海外事務所のシェア投稿も含めて3万以上のリーチがあり、180以上のコメントが寄せられています。」

―今後、Fun From Home事業への参加を検討されている方々へのアドバイスをお願いします。

「海外に向けた誘客プロモーションを行いたいけれど、人員や予算、技術的な制限から実現できないという地域は多いと思います。そんな地域でも、こうした事業をきっかけに、プラットフォーム上のコンテンツを充実させていくことによって、持続的かつ効率的なプロモーションが可能となります。また、事業を通じてコンテンツを練り上げていくプロセスにおいても、さまざまな学びを得ることができます。ぜひ利用してみてほしいですね。」

 

「Fun From Home事業」の今までの配信映像と今後の予定について

2021年度以降、長野県含め多くの賛助団体・会員である自治体や企業にご参加いただき、全国各地の魅力を配信してきました。ライブ配信後も各参加団体のFacebookページで公開されておりますので、各地域の個性豊かな動画をお楽しみいただけます。

今までのすべての配信映像と今後のライブ配信予定は、以下記事に掲載しております。ぜひ最新のスケジュールをご確認の上、ライブでご視聴ください! 

 

また、JNTOでは現在、2022年8月~2023年3月の配信に向け、JNTO賛助団体・会員を対象に、FFH事業の参加団体を募集しています。
賛助団体・会員の方は、専用サイトから募集要項をご確認の上、ぜひご応募ください。

申込締切:2022年6月30日(木)