アドベンチャートラベル/アドベンチャーツーリズムをめぐる世界と日本の動き

Written by JNTO

アドベンチャートラベル(以下AT)は、「自然とのふれあい」「文化交流」「アクティビティ」のうちふたつ以上の要素を持つ旅行です。旅行を通じ、自分自身の変化や地域社会への貢献が期待できるとして、ATは欧米を中心に世界中で人気が広がり、さらにアフターコロナの旅行スタイルとしても注目されています。こちらの記事では、2020年9月に開催されたATの世界的なイベントや、日本におけるATの機運の高まりについてご紹介します。

目次

アフターコロナの旅行スタイルとしても注目のアドベンチャートラベル

アドベンチャートラベル(以下AT)とは、「自然とのふれあい」「文化交流」「フィジカルなアクティビティ」のうちふたつ以上の要素を持つ旅行です(*)。その土地ならではのユニークな体験、自己変革、健康、挑戦、文化や自然に対してローインパクトといった体験価値を提唱し、サステイナビリティや旅行を通じた地域貢献を重要視する層からも支持されています。

人と自然と文化を大切に、地域の日常との関わりを重視するATは、北米・欧州・豪州を中心に拡大し、世界に広まりつつあります。そして、自然の中での非接触型アクティビティや体験価値を高めながらローインパクトを実現するために少人数であることも多いことから、アフターコロナにおける旅行スタイルとしても注目を集めているのです。

*:AT業界最大の団体であるAdventure Travel Trade Association (ATTA)による定義。

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ウィズコロナ、アフターコロナにおけるインバウンドについて

日本政府観光局(JNTO)は、訪日プロモーション事業の実施主体として、外国人旅行者の誘致活動を行っています。新型コロナウィルスの影響を受けるインバウンドに関して、どのように対応していけば良いか不安な地域の方もいらっしゃると思います。今後のプロモーションや旅行トレンドなどについて、企画総室長 藤田礼子がお話しします。
※所属部署・役職は取材当時の情報です。

ATについて詳しくは、下記の記事でご紹介しています。

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地域の資源を活かすアドベンチャーツーリズム②(Adventure Travel Trade Association (ATTA)へのインタビュー前半)

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世界のアドベンチャートラベルの動向を把握

アドベンチャートラベルのプロフェッショナルが集結するAdventure ELEVATE

Adventure ELEVATEは、Adventure Travel Trade Association (ATTA)が毎年開催するイベントのうち、北米を拠点とするネットワーキング会議です。優良なアドベンチャートラベル(AT)顧客を要する旅行会社や、AT経験の豊富なメディア、サプライヤーを中心としたATコミュニティのプロフェッショナル達が集い、業界内の最新トレンドや、国内外の世論を踏まえてATコミュニティが目指すべき姿などを共有します。基調講演、ATに特化したテクノロジー、マーケティング、そしてツアーのオペレーション(安全管理やガイド育成等)に関する同時セッションや、随時行われる参加者同士のネットワーキングを通して、北米を中心としたATマーケットの活性化を目指しています。

2020年9月15日~16日に開催されたAdventure ELEVATE 2020は、COVID-19の影響により初のオンライン開催となりました。アフターコロナを見据え、ATのみならず、世界の観光市場の復活・反転の機会とすべく、ATTAも大変力を入れていました。今回のELEVATEには20の国と地域から例年の約2倍となる462名が参加。2日間にわたってオンライン上で、現在の状況やアフターコロナへの展望の共有がなされ、活発な議論とネットワーキングが行われました。

日本のアドベンチャートラベルのコンテンツは、「Hiking & Walking」「Food & Drink」「Culture (See tradition)」が人気

Adventure ELEVATE 2020

昨年スウェーデンで開催されたAdventure Travel World Summit (ATWS) 2019に続き、JNTOもAdventure ELEVATE 2020に参加。オンライン上にジャパンブースを設置し、ブース来訪者とチャットなどを活用しながらのネットワーキング、ATコンテンツを集約したWebサイト「JAPAN ADVENTURE 」を活用したATデスティネーションとしての日本の魅力の情報発信や、ATに取り組む地域の紹介を行いました。

ジャパンブースを訪れた来訪者に対して実施したアンケートでは、日本で体験したいATアクティビティとして「Hiking & Walking(77.5%)」が最も高く、次いで「Food & Drink(70.0%)」や「Culture (See tradition)(70.0%)」という結果となりました。また、ブース来訪者の85.4%がATデスティネーションとして日本に対する興味が高まったと回答しており、イベント全体を通してATデスティネーションとしての日本の認知度向上を図ることができたと考えられます。

「日本に行きたくてたまらない」。高い評価を得た日本のアドベンチャートラベル

さらに、国内でATに取り組んでいる地域と連携し、5分間のプレゼンテーションも実施しました。日本がその南北に長い地形的特徴による気候特性に基づく多様な自然を有すること、またさまざまな文化が存在することのほか、ATへの取り組みで先行する長野・沖縄・北海道からのメッセージを交え、日本全国をつなぐ形でATコンテンツを紹介。自然×文化がもたらす日本の多様性を発信するとともに、コロナ収束後には日本全国が一丸となってお迎えをするという強い意志を伝えました。プレゼンテーションの最中には「日本に行きたくてたまらない」「日本がこんなに南北に長いと思わなかった」「日本はATデスティネーションだと思っていなかったけど、今日考え方が変わった」など、日本に好意的なコメントを多数いただき、高い評価を得ることができました。

【参考】JNTOのAdventure ELEVATE 2020における、その他の取り組み
Adventure Exchange Networking:4分間の時間制限で、時間になると自動的に次の参加者につながる仕様で実施。アメリカを中心にカナダ、メキシコ、アルゼンチンの旅行会社やメディア、ブロガー、ランドオペレーター、ガイドなどさまざまな業種の方々とネットワーキングを行うとともに、AT Webサイト「JAPAN ADVENTURE 」の案内を実施。

コミュニティーラウンドテーブル:さまざまなテーマに関して、各国のDMOや政府観光局、AT事業者など、全12団体のセッション(講演)が行われた。ここではJNTO ロサンゼルス事務所によるプレゼンテーション「Outdoor Adventure and Nature Travel in Japan」(事前録画約30分)を放映。入退場が自由に行えるため、参加者は各々が好きなセッションに移動しながら各セッションを楽しむ中で、JNTOのセッションには常時平均15名程度の参加者がおり、他のセッションと比べても遜色なく、日本の魅力発信を行うことができた。チャット機能を通して、ジャパンレールパスに関しての質問や、実際の旅行行程の作成依頼に関してなどのコメントがあり、関心の高さを実感。

2021年、ATプロフェッショナル達の北海道集結を期待

今回のAdventure ELEVATE 2020への参加は、来年度の開催が内定している世界最大のATイベントであるAdventure Travel World Summit 2021北海道(以下ATWS2021北海道)、さらにはその先も見据えた、ATデスティネーションとしての日本の認知度向上と日本の多彩なATコンテンツの魅力発信をする上で非常に重要な役割を果たしたと言えます。JNTOは引き続き、国内AT関係者の皆様と連携しながら、ATデスティネーションとしての日本の情報発信に努めていきたいと考えています。

ATTAのシャノン・ストーウェルCEOは、大会最後の閉会の辞で、“Adventure tourism WILL come back better, smarter and more sustainable”と強調しました。この発言にはアジア初という点はもちろん、コロナ後最初の世界サミットとなるATWS2021北海道への期待も含まれています。

日本各地のアドベンチャートラベルコンテンツ、モデルコースを紹介するWebサイトを公開

https://www.japan.travel/adventure/en/

JNTOではAdventure ELEVATE 2020に先立ち、9月10日に日本各地のアドベンチャートラベル(AT)を紹介するWebサイト「JAPAN ADVENTURE 」を公開しました。日本の多様なATの魅力を訴求する総合的な訪日AT Webサイトとして、自然のユニークさ、環境保全の取り組み、伝統文化継承活動などを含む地域のストーリー性を重視し、他の観光地との差別化を図った「その地域ならでは」のコンテンツを掲載しています。また、ATツアー造成に取り組んでいる北海道・長野・沖縄の3地域については、ATTAが提唱する5つの体験価値を踏まえた、モデルルートの紹介もしています。

今後もコンテンツの拡充を検討していますので、地域の皆様の周りにATとして魅力的な観光コンテンツがありましたら、ぜひ情報をお寄せください。

日本のアドベンチャートラベルは大きな訴求力を持っている

ATWS2021北海道をきっかけにアドベンチャートラベルの機運が高まる

現在、Adventure Travel World Summit 2021北海道(ATWS2021北海道)へ向けて、先行して取り組んできた北海道や長野、沖縄などのエリアにとどまらず、各地でATに対する取り組み機運が高まっています。ATWSではサミットに先駆けて、参加者が開催地のATを実際に楽しむためのPre-Summit Adventure (PSA)と呼ばれる4〜5泊程度の体験型メニュー(アドベンチャー)が準備されることが通例で、ATWS2021北海道の開催は海外の方々にも日本のATを楽しんでいただけるよい機会となります。ATWS2021北海道のPSAは北海道内だけでなく、道外各地においてもコースが設定される予定で、着々と準備が進んでいます。

日本のアドベンチャートラベルの魅力

日本は、山々や深い森、海や川、そこに暮らす野生動物などの自然、そしてこれらの自然と深く結びついた奥深い文化や歴史など、ユニークで国際的にも大きな訴求力を持った土地柄です。ATの5つの体験価値(ユニークな体験、自己変革、健康、挑戦、ローインパクト)を踏まえ、地域の方々の暮らしを大切にしつつ、これら地域の資源を生かして質の高い魅力的な旅を創出することは、地域も旅行者も満足する持続可能な観光につながることでしょう。

現在は欧米豪が中心のAT市場ですが、この動きは単なる流行ではなく将来の旅行の新しい姿として世界に広がり、定着していくと考えられます。一過性に終わらせず、日本が継続的にATの取り組みを推進していくことを期待しています。

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「アドベンチャートラベル・ワールドサミット(ATWS)2022 @ルガーノ(スイス)」開催レポート

2022年10月3日~6日、アドベンチャーツーリズム/アドベンチャートラベル(AT)の国際サミット「アドベンチャートラベル・ワールド・サミット(ATWS)」が、スイスで開催されました。世界の旅行会社や観光関連事業者、メディアといった関係者が一堂に集結し、商談会やATツアー体験、ネットワーキングを実施。JNTOも出展し、日本のATを紹介しました。本記事では、サミットに参加したJNTO職員がその概要についてレポートします。

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日本を世界に誇れるアドベンチャーツーリズム大国へ

山間の静かな温泉地だった群馬県・みなかみ町。その土地で大自然の中のエキサイティングなアクティビティができるスポット拡充の取り組みをしているのが、ニュージーランド出身のマイク・ハリス氏です。現在キャニオニングなどのアドベンチャーツアーを提供する「キャニオンズ」を運営しているマイク氏ですが、彼がどのようにアドベンチャーツーリズム(AT)をみなかみ町で発展させ、根づかせたのか、また今後日本でATが広がるために必要なことなどを伺いました。

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オーダーメイドの旅で、顧客満足度を最大化する(前編)

北海道宝島旅行社は2007年から、アクティビティ予約サイトの運営やオーダーメイドの旅行サービスを手がけてきました。そして、この間に培った、北海道各地にあるアクティビティや農業・漁業体験といったコンテンツ資源の発掘や体験ガイドのネットワークが、アドベンチャーツーリズム(AT)の旅行サービスにつながっています。地域資源を発掘・活用し、体験型観光に生かしていくためには何が必要なのか? 同社の代表取締役社長・鈴木宏一郎さんにお話を伺いました。

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