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インバウンドのマーケティングにオープンデータを活用(2020年度JNTOマーケティング研修会の講演収録より編集して掲載)

インバウンドのマーケティングにオープンデータを活用(2020年度JNTOマーケティング研修会の講演収録より編集して掲載)

インバウンドのマーケティングにオープンデータを活用(2020年度JNTOマーケティング研修会の講演収録より編集して掲載)

JNTOでは、JNTOのマーケティングやプロモーションの手法を、具体的かつ実践的な内容でご紹介するために、毎年マーケティング研修会を開催しています。2020年度は全国を10ヵ所に分けた地域別にオンラインにて実施し、多くの方にご参加いただきました。こちらの記事では、全10回のうち最後に開催したJNTOマーケティング研修会(東北エリアver.)にて講演した、「オープンデータからみる地域特性と分析手法」の内容をご紹介します。インバウンド回復期へ向けてなにをすれば良いか悩んでいる、観光のデータについて知りたい方々のご参考になれば幸いです。

観光に関するオープンデータ

観光に関するオープンデータ

訪日外国人の動向がわかるオープンデータ

オープンデータとは営利・非営利を問わず、無料で二次利用が可能なデータのことです。観光分野についてもさまざまなオープンデータがあり、訪日外国人の動向を知ることができます。これらは、JNTO観光庁法務省国土交通省 等のWebサイトから閲覧・ダウンロードが可能です。

マーケティングの各段階にオープンデータを活用

訪日外国人の動向がわかるオープンデータは、訪日外国人旅行者の全体・属性・行動などの把握に活用できます。日本全体の訪日外国人旅行者の把握には「訪日外客数 」、地域への訪日外国人旅行者数とその属性の把握には「訪日外国人消費動向調査 」「宿泊旅行統計調査 」「出入国管理統計 」、地域への訪日外国人旅行者がどのようなルートで訪れているかの把握には「FF-Data 」、地域を訪れる外国人のより詳しい消費や市区町村単位の訪問者の把握には「VISAクレジットカードデータ」「モバイル空間統計」 といったように、分析が可能です。

※各オープンデータについてより詳しくは、下記の記事でご確認いただけます。

データから見る東北の特徴

【宿泊旅行統計調査】東北の外国人延べ宿泊者数の伸びがわかる

データから見る東北の特徴

それでは実際に、東北を例にオープンデータで分析をしてみましょう。まずは「宿泊旅行統計調査 」を活用して、日本全体と東北の宿泊者数を見てみます。日本全体における外国人延べ宿泊者数(グラフ左)の中で、東北が占める割合は2%です。一方、経年の変化(グラフ右)を見ると、2019年と2012年の比較で東北は6.2倍(日本全体では4倍)となり、着実に増えていることがわかります。

【宿泊旅行統計調査】定期便が新たに就航した、台湾とタイの伸びがわかる

データから見る東北の特徴2

続いて、東北の国別外国人延べ宿泊者数を見てみます。東北(グラフ左上)と全国(グラフ左下)を比較すると、一目瞭然で多いのが台湾です。経年の変化(グラフ右)を見ると徐々に増えていることがわかり、仙台に定期便があることや、2018年に花巻に台湾のLCCの定期便が就航したことにより、東北が人気のディスティネーションになってきたことが数字に表れています。また、タイも増加してきており、2019年にバンコクと仙台に定期便が就航した影響だと考えられます。

【宿泊旅行統計調査】台湾の割合が多い県は、直行便が影響していることがわかる

データから見る東北の特徴3

続いて、東北の県別に国別外国人延べ宿泊者数を見てみます。東北への直行便が多い台湾がいずれの県でも最大のシェアとなっています。県内への直行便の多い岩手県、宮城県、隣接の山形県は特にシェアが大きいことがわかります。一方で、新潟県は定期便の影響で中国の割合が大きくなっています。

なお、宮城県、山形県、福島県が他県よりもタイのシェアが大きいのは、仙台への直行便就航を契機とした隣県を含めたツアー造成が考えられます。また、数年前にタイのドラマで山形県が撮影地になったことや、福島県についてはWe love Fukushimaというタイ語のFacebookがあり、アカウント開設後、福島県へのタイ人旅行者が増加したこと等も影響しているとも推測されます。

このように、「宿泊旅行統計調査 」では地域への訪日外国人旅行者数とその属性を把握することができます。ターゲット市場を検討する際の参考に、活用してみてはいかがでしょうか。

【FF-Data】南東北は東京からの流動が多いことがわかる

データから見る東北の特徴4

次に「FF-Data 」を活用して、県単位の訪日外国人の流動状況を見てみます。南東北は東京からの流動が多いです。一方で、青森県は北海道からの流動が多いことがわかります。

このように、「FF-Data 」では県単位の訪日外国人の流動状況を把握することができます。 訪日外国人をどこから誘客するかを考える際は、「FF-Data 」を活用してみてください。

 

PDCAサイクルとオープンデータの活用

PLAN(計画)とCHECK(評価)にオープンデータを活用

PDCAサイクルとデータの活用

事業計画やプロモーションなど、マーケティングにおいてPDCAサイクルは大切です。ここでは、オープンデータをPDCAサイクルに落とし込む手法をご紹介します。

オープンデータは訪日外国人の動向を分析し現状を把握できるため、インバウンド施策の目標や計画を策定するPLAN(計画)、効果検証をするCHECK(評価)の際に活用できると考えています。

【PLAN(計画)】訪日外国人旅行者のニーズを把握

PDCAサイクルとオープンデータの活用_P

まずPLAN(計画)では 、市場の細分化、ターゲットの決定、ポジショニングの把握をするSTP分析をしていきます。セグメンテーションの際には、まずは旅行市場全体を把握したのち、市場を細分化する必要があります。旅行市場全体を把握するうえでは、 JNTOの統計データサイト「日本の観光統計データ」 が役に立つと思います。

PDCAサイクルとオープンデータの活用_P2

STP分析のターゲティングにおいては、ターゲットはなにを求めていて、なにが訴求できるかを考える必要があります。ターゲットのニーズを知るためには、 訪日外国人旅行者のニーズを把握できる「訪日外国人消費動向調査 」が有効です。たとえばタイ(グラフ右)を見ると、日本食がとても高く、自然やショッピングにもニーズがあることがわかります。このように、「訪日外国人消費動向調査 」を活用することで、地域の観光資源の強みとターゲットのニーズを照らし合わせ、効果的なインバウンド施策のPLAN(計画)を立てることができます。

【CHECK(評価)】インバウンド施策の効果をデータで確認

PDCAサイクルとオープンデータの活用_C

続いて、CHECK(評価)に活用できるオープンデータは「宿泊旅行統計調査 」「訪日外国人消費動向調査 」「FF-Data 」です。たとえば「FF-Data 」では、「東京を軸にした事業を実施したけれど、東京からの訪日外国人は増えたかどうか?」などがわかります。ただし、市場によって予約から訪日まで時間差(リードタイム)があるため、即座に効果が出るわけではないことに注意が必要です。こうした点も考慮しながら、インバウンド施策のCHECK(評価)にうまくオープンデータを活用してみてはいかがでしょうか。

インバウンド回復期へ向けた施策にオープンデータを活用

コロナ禍の今から、インバウンド回復期へ向けて準備を進めることで、先手を打つことができると考えられます。準備を進めるには、データに基づいた施策立案が求められる と思います。その際はJNTOの統計データサイト「日本の観光統計データ」 を活用してみてください。観光関連のデータを利用者の必要なデータに応じて、グラフ化・ダウンロードができるので、きっとお役に立てるはずです。

下記は同じJNTOマーケティング研修会(東北エリアver.)での講演「新たな時代におけるデジタルマーケティング」に関する記事です。

下記はオープンデータに関する記事です。