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ウィズコロナ、アフターコロナのインバウンドにおけるデジタルマーケティング(2020年度JNTOマーケティング研修会の講演収録より編集して掲載)

ウィズコロナ、アフターコロナのインバウンドにおけるデジタルマーケティング(2020年度JNTOマーケティング研修会の講演収録より編集して掲載)

ウィズコロナ、アフターコロナのインバウンドにおけるデジタルマーケティング(2020年度JNTOマーケティング研修会の講演収録より編集して掲載)

JNTOでは、JNTOのマーケティングやプロモーションの手法を、具体的かつ実践的な内容でご紹介するために、毎年マーケティング研修会を開催しています。2020年度は全国を10ヵ所に分けた地域別にオンラインにて実施し、多くの方にご参加いただきました。こちらの記事では、全10回のうち最後に開催したJNTOマーケティング研修会(東北エリアver.)にて講演した、「新たな時代におけるデジタルマーケティング」の内容をご紹介します。コロナ禍のデジタルマーケティングに悩んでいる、今後強化していきたい方々のご参考になれば幸いです。

コロナ禍におけるデジタルマーケティング

デジタルマーケティングは将来の訪日需要の「種まき」に有効な手段

訪日外国人旅行者数は2019年に過去最高を記録しましたが、常に順調であったわけではありません。ビジット・ジャパン・キャンペーンが開始した2003年頃には、SARSが世界的に流行。その後、訪日外国人旅行者数は微増を続けましたが、2005年には鳥インフルエンザの流行、さらに2009年にはリーマンショック、2011年には東日本大震災でインバウンドは落ち込みました。しかし、どの落ち込みの後にも、確実に回復期は訪れています。

コロナの場合は状況も異なり先が見えない部分があります。しかし、少なくとも今は現状を的確に把握し、いずれ来るインバウンド回復期に備え、将来の訪日需要のための「種まき」が重要な時期です。その際に有効な手段のひとつが、デジタルマーケティングだと考えています。

「認知喚起」「興味・関心」に注力

コロナ禍におけるデジタルマーケティング

上記の図は、旅行者の行動に合わせて、JNTOが活用するメディアや情報提供の目的を整理したカスタマージャーニーです。平常時であれば図の右側(「比較・検討」「予約・訪日」「帰国・再来日」)へ向けて、お得な旅行情報や訪日中に役立つ情報など、具体的なアクションにつながるタイムリーな情報発信が可能でした。

しかし、具体的な訪日に向けての検討や予約ができない今、特に注力すべきは図の左側、「認知喚起」「興味・関心」だと考えられます。「認知喚起」では、旅行が好きな外国人の将来の訪日意欲を掻き立て、旅先としての日本の認知度を上げる必要があります。すでに日本へ「興味・関心」がある層には、さらに興味・関心を持ってもらうアプローチが必要です。たとえば日本は「安全な国である」「衛生対策がしっかりしている」といった情報発信も有効だと考えられます。

「顧客接点」を増やし、育てる

海外旅行ができるようになった時、外国人に旅先として日本を選んでもらうには、旅行ができない状況においても日本のことを忘れずに覚えておいてもらう必要があります。そのためには、自社で運用するメディアのみならず、外部メディアのデータも活用しながら、外国人との接点(顧客接点)を増やし、育てていてくことが重要です。

「顧客接点」を増やすには、まずはターゲットと目的を定めます。たとえば、「欧米」「自然に興味がある方」「20~40代」など具体的にターゲットを設定すると、自然系の英語のWeb媒体といったように、活用するメディアやチャネルも明確になり、より効果的な情報発信が可能です。

 

外国人ファンを離さないために、今できること・するべきこと

コロナ禍でもオンラインの接点は持てる

顧客接点(コロナ禍)

顧客接点は、オフラインからオンラインまでありとあらゆるところにあります。オフラインの場合、空港や駅、宿泊施設や観光施設での直接的なコミュニケーション、商談会やセミナーなどが該当しますが、コロナ禍では直接の接点を持つことはできません。

しかし、オンラインでの接点は持つことができます。オンラインで情報を見つけてもらうことができれば、これまで対面で接点を持てなかった顧客とも接点を持てるかもしれません。そのためには、単にオンラインで情報発信するのではなく、デジタルを有効活用して効果的に「既存顧客接点の強化」と「新規顧客接点の獲得」を目指すことが重要です。

「新規」顧客接点の獲得へ向けて、オンラインで見つけてもらえる土台を整える

「新規」顧客接点の獲得

「新規」顧客接点の獲得には、適切な外部メディアを活用して、オンラインで見つけてもらうことが大切です。たとえばGoogle検索で「tohoku」を検索すると、結果は2,200万件以上。「tohoku sightseeing」でも42万件以上です(2020年12月上旬時点)。Instagramで「tohoku」を検索すると、28万件以上の投稿が見つかりました。こうした膨大な情報がある場合、ユーザーが気にするのは、正しく、かつ最新の情報であるかどうかです。

これに対応するために活用できるサービスの一例が、施設情報などを無料で個別に登録管理できるGoogle マイビジネスです。営業時間や定休日などの正確な最新情報を登録、更新すると、Google検索結果に反映されます。また、SNSの場合には、ハッシュタグの活用も有効的です。このように、いろいろな工夫をしながら、外国人にオンラインで見つけてもらえる土台を整えることが大切です。

ターゲット層に一番使われているメディアを活用

ターゲットに合わせて、活用するメディアを変えることも重要です。たとえばターゲットが中国やロシアの場合、主要な検索エンジンはGoogleとは異なります。Facebookユーザーが多い国、Instagramユーザーが多い国、あるいはその国特有のSNSが発達している場合もあります。もし具体的にターゲットを定めることができる場合、そのターゲット層で一番使われているメディアを活用することは、効果的に顧客接点を持つために大切です。

WebサイトやSNSのデータを活用して顧客ニーズを把握

将来の訪日につながる「既存」顧客接点の強化には、自らが運営するWebサイトやSNSなどを活用して、ニーズを把握することが大切です。たとえばJNTOのWebサイト の場合、2019年4月~2020年3月における東北7県のコンテンツでは、自然やフェスティバル・イベントのPV数が多いことから、同コンテンツに一定の旅行者ニーズがあることわかりました。

顧客ニーズを活用したJNTOの事例

JNTOデジタルマーケティングセンターでは、日本旅行に関心があると考えられるJNTOアカウントのSNSフォロワーとのコミュニケーションを強化するために、フォロワー参加型の投稿を実施していますが、その一例として、全市場向けのInstagram アカウントにおいて、ストーリーズ機能の活用による、日本各地をバーチャルツアーしながら関連クイズに答えてもらう企画を実施しました。東北地方のバーチャルツアーでは、Webサイトのユーザー動向から、東北地方の情報を探しているユーザーは自然への関心が高いことがわかっていたため、白神山地や奥入瀬渓流などを巡る自然に特化した内容の投稿としました。

また、フェスティバル・イベントへのニーズがあることを受け、JNTOが毎月Webサイト上で発行する「Webマガジン」 においては、花火の歴史を紹介するコンテンツ内で新潟の長岡花火大会も掲載しました。

これらは一例ですが、どの国のユーザーがどんなテーマの情報を見に来ていたかを分析して、今後の発信する内容に反映していくことは、ユーザーの期待に応えるという観点からも重要であると考えており、自らが望むタイミングでタイムリーに情報発信できることが、WebサイトやSNSを自ら運用することのメリットです。

JNTOがコロナ禍の情報発信で工夫しているポイント

「既存」顧客接点の強化

「既存」顧客接点の強化2

JNTOのデジタルマーケティングセンターがコロナ禍で情報発信を行う際に工夫していることをご紹介します。

ユーザーがリラックスをして楽しんでもらえるような情報発信として、日本全国の自然風景を巡るような8Kの画質が良い長編動画の投稿や、Instagramのストーリーズ機能を活用して実施するクイズや人気投票など、ユーザーとのインタラクティブなコミュニケーションを目的としたコンテンツを発信しています。先日投稿した日本を疑似体験できる360度VR動画も高い反響を得ました。

コロナ禍を意識したハッシュタグとしては、#virtualtravelや#stayhomeなどを日頃から活用しています。また、Instagramでは#stayhomewithjapanを用いて、過去の日本旅行の思い出の写真などを一般の方から募集した企画を実施。集まった投稿画像は関連する観光地の情報とともに、ストーリーズでシェアを行いました。

文章のトーンは予約購入を促すような直近の訪日訴求は控え、興味・関心の促進、将来的な訪日訴求を意識した投稿をしています。

今後のコロナの状況に合わせて、こうした情報発信の方針は都度見直しが必要と考えていますが、現状(2020年12月現在)は、下記に記載している方針を基に情報発信を行っています。

日本認知層と地域認知層、双方の良さを生かした顧客接点の強化

「既存」顧客接点の強化3

上記は有識者や地域の皆様とディスカッションを行い、JNTOのWebサイト と地域の皆様のWebサイトの位置づけについて整理をした図です。

まず左側は、訪日関心層の旅行者とJNTOのWebサイトの位置づけです。JNTOのWebサイト を訪れるユーザーはすでに日本のことを認知(日本認知層)しており、「japan travel」といった大きな枠組みのキーワードから多く流入します。一方、右側はすでに日本にある程度の興味・関心があり、より詳細な地域の情報を求めている旅行者(地域認知層)と、各地域の皆様がお持ちのWebサイトの位置づけです。地域のサイトを訪れるユーザーは「具体的な地域名 travel」といった、「japan」の枠組みよりも具体化したキーワードから流入する場合が多いとされています。

外国人にオンラインで見つけてもらうために求められるのは、日本認知層と地域認知層の双方の良さを生かした顧客接点の強化です。地域の皆様とJNTOとの連携のひとつに、図の赤い矢印のような誘導の強化があります。言い換えると、Webサイトを見つけてもらう箇所を物理的に増やす方法です。観光スポットの情報は、JNTOのWebサイト と地域のWebサイトの両方に掲載されるため、重複する要素は存在しますが、情報の内容や深さが異なってきます。

JNTOのWebサイトから地域のWebサイトへの誘導を強化

JNTOのWebサイト の目的は日本全体の魅力を訴求することです。その場合、観光地の概要、歴史、背景、主要空港や駅からのアクセスなど、大枠の情報がメインとなり、比較的変わることのない情報を掲載しています。JNTOのWebサイト を訪れ、ある地域に興味を持った外国人は、より詳細な情報を知りたいと思うでしょう。しかし、JNTOのWebサイト では、全国の観光情報をくまなく詳細に紹介するには限界があります。

一方で地域のWebサイトにあるのは、観光施設の営業時間や予約の可否、イベントの開催日時、詳細なアクセス方法など、より具体的で実用的な最新の情報です。そのためJNTOでは、JNTOのWebサイトに訪れた日本認知層に対して、地域の興味・関心層を増やすため、地域のWebサイトへの誘導強化を実施。JNTOのWebサイト内の広域エリアページ都道府県ページ などに、関連リンクとして各地域の外国語Webサイトへのリンクを掲載しています。

顧客接点は施策実施後すぐに強化されるものではありません。しかし、物理的に接する箇所を着実に増やしていくことは、将来のインバウンド回復期に備える上でも大切なことだと考えています。

 

今は顧客接点を拡大するチャンス

今は顧客接点を拡大するチャンス

コロナ禍では、オンラインでの「既存顧客接点の強化」や「新規顧客接点の獲得」が重要であり、顧客接点を拡大するチャンスです。日本に関心がありそうな新規顧客接点を獲得するためには、ターゲットに合わせたメディアを活用して、オンラインで外国人に見つけてもらう情報を整備することが重要です。すでに日本に興味がある既存顧客接点を強化するためには、自社メディアの分析や外部データを活用することで、顧客のニーズを把握し、顧客との接点を増やせるようオンラインコミュニケーションを継続していくことが大切です。そして、地域の皆様とJNTOの連携もポイントとなります。

一方で、ご紹介した内容をすでに実施している地域の方もいらっしゃると思います。もっと積極的に取り組みたい、なにか別の方法を探している方は、JNTOのデジタルマーケティング支援メニューもご用意していますので、ぜひご参考ください。

マーケットは常に変化をし続けています。コロナによりマーケット変化の予測がより難しくなっている側面もあります。しかし、データを活用して動向を把握することで、これまでの経験や勘に頼らない、その時々の情勢にあったプロモーションを実施していくことが大切です。

下記はデジタルマーケティングに関する記事です。こちらもぜひご覧ください。