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ラグビーからオリパラへ、メガイベントを契機とした地域プロモーションの戦略(JNTOマーケティング研修会テーマ5 ※講演資料の一部掲載)

ラグビーからオリパラへ、メガイベントを契機とした地域プロモーションの戦略(JNTOマーケティング研修会テーマ5 ※講演資料の一部掲載)

ラグビーからオリパラへ、メガイベントを契機とした地域プロモーションの戦略(JNTOマーケティング研修会テーマ5 ※講演資料の一部掲載)

JNTOが全国各地で開催している「JNTOマーケティング研修会」では、デジタルマーケティングやオリパラなどをテーマに講演を行っています。本連載では、研修会に参加できなかった方々にも広く情報共有できるよう、各テーマの内容を記事で解説していきます。今回のテーマは「オリパラをきっかけとした地域プロモーションの可能性」です。JNTOが計画している東京オリンピック・パラリンピックのプロモーション施策や、メディア活用の重要性、プロモーションを行う際の注意点などを中心にご紹介します。

「JNTOマーケティング研修会」の様子がわかるレポートはこちらの記事でご覧いただけます。

メガイベントの開催を契機に、日本への関心を促す

今年2020年は、東京オリンピック・パラリンピックの開催が控えており、2019年のラグビーワールドカップに続き、まさに奇跡の2年と言われています。JNTOは、これらのメガイベントをきっかけとして「観光地としての日本の認知度・興味関心を向上させること」を目標に、さまざまなプロモーションを行っています。

多くのメディア関係者が来日するメガイベントは、地域の魅力を発信する絶好の機会です。地域の皆様も、ぜひこの機会を好機と捉え、インバウンド施策に取り組んでいきましょう。

東京オリンピック・パラリンピックの経済効果や訪日メディア数

東京オリンピック・パラリンピックに関する基本情報

最初に、東京オリンピック・パラリンピックの開催期間や経済効果など、基本情報を整理してみましょう。

開催期間はオリンピックとパラリンピックを合わせて30日間。経済効果に関しては、オリンピック・パラリンピックに向けたインフラ整備などもあるため、全国で約32兆円に上ると言われています。

特に注目すべきは、メディアの数です。オリンピックでは2万5,800人、パラリンピックでは9,500人のメディアが取材すると予想されており、その大半が海外メディアです。2012年のロンドン大会では、テレビを通して、世界中で36億人もの人が視聴したと言われています。オリンピック・パラリンピックの影響力の大きさを感じることができるのではないでしょうか。

ラグビーワールドカップ日本大会と東京オリンピック・パラリンピックの比較

ラグビーワールドカップより期間は短いが、さらに多くの訪日者数が予想されている

次に、ラグビーワールドカップと比較してみましょう。東京オリンピック・パラリンピックの大会期間は、前述のとおり30日間とラグビーワールドカップの44日間に対して2週間ほど短くなっています。その一方で、内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局が予想している訪日者数は70~110万人と、ラグビーワールドカップの58万人(※)に比べて増加しています。
※海外でのRWCチケット販売枚数

この数字は、政府の掲げる「2020年訪日外国人旅行者数」の目標値である4,000万人からすると、そこまで大きなインパクトはないかもしれません。それでも、ラグビーワールドカップの参加チームが20チームであるのに比べ、世界200以上の国と地域が参加するオリンピック・パラリンピックは、より多くの訪日外国人旅行者が見込めるでしょう。

また、ラグビーワールドカップは日本全国12都市での開催でしたが、オリンピック・パラリンピックでは、東京を中心に43会場に及びます。マラソンの開催都市が札幌に変更になったとはいえ、基本的には関東近郊での開催となります。そのため、関東圏においては高い経済効果が得られることでしょう。

クラウディング・アウトを見据えたプロモーション対策

このように多くの外国人旅行者を見込めるオリンピック・パラリンピックですが、過去の大会開催国の事例を見ると、大会期間中およびその前後の外国人旅行者数は、一時的に減少する傾向があるのです。オリンピック・パラリンピック観戦を目的とする外国人旅行者の増加は見込めるものの、それ以外の人にとって、宿泊費の高騰や混雑などの理由から旅行のハードルが高くなるからです。この現象を「クラウディング・アウト」と呼んでいます。

オリパラ開催国の開催年におけるインバウンド需要の推移

東京オリンピック・パラリンピックにおいても、クラウディング・アウトが起こるリスクは大いに考えられます。JNTOでは、その対策としてさまざまな取り組みを検討しています。

「地方分散」と「時期分散」で訪日外国人旅行者数の減少を防ぐ

まずは「地方分散」です。大会開催中の訪日外国人旅行者は、どうしてもメインの開催都市である東京に集中してしまい、宿泊や移動など滞在条件が悪化します。さらに、海外の旅行関係者は「東京抜き」では魅力的な旅行商品が作りにくいと考え、大会期間中の商品造成を回避する傾向にあります。その結果、旅行需要が他国に流出し、余力ある地方への旅行者までもが減少する恐れがあります。

そこでJNTOでは、特設Webサイトを通じた情報発信に力を入れている他、アスリートを起用した動画を通じての地方のPRも予定しています。これにより東京以外でも魅力的な旅行が楽しめることを海外の人々に知ってもらい、旅行先の選択肢を広げてほしいと考えています。

また、開催期間中の宿泊先についても、予約の取りやすい東京近郊都市への誘導を推し進めています。日本は交通網が充実しているため、東京近郊圏からでも日帰りで東京に通えます。そこを上手にアピールし、東京周辺地域の活性化につなげていければと考えます。

そして「訪日旅行の時期分散」も非常に大切な対策のひとつです。前述の通り、開催期間中は訪日外国人旅行者の減少が予想されるため、大会前後の期間で観光需要を取り戻すことが必要となってきます。そのためにも、時期分散に向けた誘導方策を早期に検討し、事前周知を行うことが重要です。

また、2020年にはホテルや競技場など、新しい施設が多く完成します。大会後はそういった施設自体が訪日のきっかけとなり、旅行客の増加につながればと考えています。

JNTOとしてのオリパラを契機としたプロモーション施策

これらの対策を踏まえながら、JNTOでは東京オリンピック・パラリンピックの開催で世界中から日本への関心が高まる絶好のタイミングと捉え、観光地としての日本の認知度・興味関心を向上させるためのプロモーションを展開します。その他にも、地方や東京近郊のPRに力を入れることで、日本全体のインバウンド消費額の拡大につなげていきます。

特設Webサイトでは、東京近郊の宿泊先や、地方の観光地の魅力を伝えるとともに、最新情報を発信する場所として新たなコンテンツの追加を予定しています。

広告宣伝については、アメリカや中国の元オリンピック選手を起用し、日本各地を紹介する動画を制作中です。ラグビーワールドカップでも、レジェンドプレイヤー3名に地方都市を紹介してもらう動画を公開し、多くの反応がありましたので、今回もさまざまな媒体を通して配信していく予定です。

そして、メディア向け情報発信の強化です。12月中旬の新国立競技場オープンに合わせたメディア招請や、ラグビーワールドカップでも大きな役割を果たしたメディア向けの相談窓口「メディアホットライン」を設置し、サポート強化を図っていきます。

オリパラに向けたプロモーションで活用するJNTOのクリエイティブ

「東京都メディアセンター」に地域の魅力を発信できるPRブースを設置

メディアは、大きく分けて「公認メディア(*1)」と「非公認メディア(*2)」とがあり、私たちインバウンド関係者がターゲットにすべきは「非公認メディア」です。
*1:正式にはTokyo2020の放映権・取材権のあるメディア。ここでは便宜的に公認メディアと記載
*2:正式にはTokyo2020の放映権・取材権のないメディアなど。ここでは便宜的に非公認メディアと記載

理由としては、公認メディアは大会期間中に競技自体を追いかけるのに対し、非公認メディアは会場へのアクセス権がありません。その代わりに、会場の外の盛り上がりや、周辺の最新情報などを中心に取材を行うため、開催国の魅力をより効果的に発信してくれるだろうと考えているからです。

東京都は、非公認メディアを含む国内外のメディアやインフルエンサーを対象に、取材拠点となる「東京都メディアセンター(TMC)」を開設します。この施設には、テレビ、新聞などのメディアだけではなく、ブロガーやインフルエンサーといった一定の影響力がある人々が集まるため、高い訴求力が期待できます。JNTOは、施設内の一角に地域のPRブースを設けたり、メディア向けの地域PRイベントを行ったりなど、積極的に日本の魅力を海外に伝えていければと考えています。

オリパラ関連のプロモーションを行う際の注意点

地域の皆様も、それぞれ東京オリンピック・パラリンピックをきっかけとして、さまざまな施策を予定していると思いますが、ひとつ大きな注意点があります。「アンブッシュ・マーケティング」と呼ばれる便乗商法の禁止についてです。

東京オリンピック・パラリンピックでは、エンブレムや大会ロゴ、用語、名称をはじめとする知的財産が法律で保護されています。不正使用や流用は法律により罰せられますので、十分に気を付けなければなりません。

原則としてスポンサーや開催自治体等しか使用が認められていませんが、さらに使用の際には、権利者である関連団体への事前許諾が必要となりますので、しっかりと確認と申請を行ってください。詳しくは、大会の公式Webサイトに記載があります。ぜひご一読ください。

大会終了後の継続的なプロモーション展開がより重要

ロンドン大会では、英国政府により「GREATキャンペーン」という国際的なイメージキャンペーンが実施されました。閉会後も、大会の映像を利用したCMを制作し、海外のテレビ局や旅行関連のWebサイトで放映するなどPRを続け、観光だけでなく、工業や農業といったさまざまな分野においても、大きな成功を収めています。

私たちの活動も、東京オリンピック・パラリンピックがゴールではありません。なにより大切なのは「大会終了後も継続的にプロモーションを展開していくこと」です。日本国内では、2021年に生涯スポーツの国際総合競技大会である関西ワールドマスターズゲームズ、2025年には大阪万博と、メガイベントの開催が複数控えています。だからこそ、ラグビーワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピックから生まれたレガシーを持続させていくことが重要です。

JNTOでは、今後も地域の皆様と一緒に、メガイベントで高まった日本への関心を推し進めることができるよう、効果的なプロモーションを展開していきたいと考えています。

8月に大阪で開催した「JNTOマーケティング研修会in関西」の様子はこちらから

下記の記事では、JNTOマーケティング研修会の各講演テーマの内容をご紹介しています。