稚内の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ

Written by JNTO

2017年11月9日、稚内総合文化センターにおいて、「稚内の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ」が開催されました。第3弾となる稚内市では、市の職員を中心に27名が参加。同日午前のセミナーに続いて行われた約5時間に及ぶワークショップの様子をレポートします。

日本最北端のブランドを世界に発信し、地域を活性化したい!

北海道稚内市は日本最北の街として観光入込客数が増加している一方、生産年齢人口の流出に伴い経済活動の低下が進んでいます。今回は「稚内・宗谷管内の魅力を世界に発信したい」「住民による地域の消費が減っているためインバウンド需要を取り入れたい」という思いから、稚内でのワークショップ開催が決定。稚内の魅力を海外にPRする仮想の会社を作り、モデルコース作成とプロモーション企画の課題に取り組みました。

まず初めにJNTOの山崎道徳理事からインバウンド施策の重要性、現状、経済効果や成功事例についての解説があった後、自己紹介タイムに。スタート時は少し堅い雰囲気もありましたが、仮想会社の社名を決める頃には「前株ですか?後株ですか?」と打ち解け和やかな声も聞かれました。

 

稚内の強み・弱みとは?現状理解から始まるコンテンツ開発

続く座学では、株式会社JTB総合研究所・主席研究員の黒須宏志氏が登壇し、インバウンドに対する稚内の強み・弱みやプロモーションを考える際のポイントについて解説しました。何といっても稚内の最大の強みは、日本最北端というブランド。亜寒帯エリアならではの特異な植生や地形、そして利尻富士など雄大な自然景観が魅力的で、新千歳空港や羽田空港からの直行便も出ています。一方で訪日旅客数第3位である北海道への需要は72.6%が札幌小樽など道央へと偏在しており、稚内市は主要な観光ルートから完全に外れています。札幌-稚内間約300キロの壁を超えて旅客を誘致し、日本最北端としての知名度を高めることが今後の課題です。

インバウンド対応でやるべきことは多いですが「まずは街にいる外国人観光客をよく観察しよう」と黒須氏。街で外国人を見たことがあるかという問いに、ある参加者が答えました。「今年の夏、フェリーターミナルで利尻島に渡ろうとしている50代のキューバ人夫婦を見ました。渡島の目的はなんですか?と聞いたら“来たのは2回目で利尻の自然がすごい”と言っていました」。黒須氏は「これは素晴らしいマーケットリサーチだ」とした上で、こういった情報を元にコースを組み立て、体験的要素の強い観光資源と組み合わせるのだと言いました。

 

「地元の宝探しをしているようだ」、改めて見つめた地元の魅力

座学が終わり、早速ターゲットを決め、稚内の観光資源を付箋に書き出す作業に取りかかかりました。テーブルいっぱいに20枚近くの付箋を広げた人もいれば、中には「海」1枚しか書けない人も。参加したJNTO職員は「美味しい海鮮も美しい景色も、地元の方にとっては当たり前すぎて観光資源だと気が付かないのが普通かもしれない。内側と外側からでは視点にギャップがあるようだ」と感じたと言います。その後、持ち寄った付せんをグルーピングし、重要な資源をピックアップしてモデルコースにまとめました。

稚内の観光資源を付箋に書いていく参加者たち

後半の座学ではプロモーションの考え方やSNSの効果的な活用方法を学び、宣伝方法のアイディアをシートに書き出しました。各チームシートを囲み「YouTuberを呼んで宣伝してもらってはどうだろう?」「Facebook広告は国や地域も絞れるんだろうか?」「多言語対応で発信しよう」など限られた時間の中で熱心にディスカッションを繰り返しました。最後に練り上げた観光コースとプロモーションプランを模造紙にまとめ、5時間弱に及んだワークショップの成果を代表者が発表しました。同日午前中に開催された欧米豪向け訪日インバウンドセミナーの影響からか、全チームがターゲットを「20~40代欧米系カップル」としての企画となりましたが、バラエティー豊かなモデルコースが誕生する結果となりました。

どのグループも熱心にディスカッションが行われました

ワークショップ終了後には、「楽しかったです。みんなで意見を出し合うと自分では思いも寄らないアイディアが出ました」「官民一体となったプロモーションはまだないので一緒にやっていけたら良いと思いました」「大変参考になりましたので、多くの方に参加してほしいです」など、グループワークをやり遂げた充実感とインバウンドへの明るい展望を期待する声が聞かれました。

「あなたが考える3年後」シートを手に参加者全員で記念撮影

 

各グループの発表内容

・株式会社SOYA de ど~や

「プロポーズ大作戦in宗谷」と題し、クライマックスに利尻島の“白い恋人の丘”で行うプロポーズとその証明書発行が待つロマンチックなコースプランを企画しました。北海道土産の定番「白い恋人」製造元の石屋製菓をスポンサーにという官民連携を提案し、多言語対応のFacebookやInstagramの投稿でプロモーションを行います。

株式会社SOYA de ど~や

・Wacca

宗谷丘陵でのドローン撮影付き野外レストランや国の登録有形文化財 旧瀬戸邸での古民家風情溢れる着物体験など、稚内のメインとなる観光名所に体験型観光を盛り込んだコースを提案。SNSでドローン撮影した旅動画を配信し、ウェブサイトに歴史や詳細な旅行プランの情報掲載しプロモーションを実施します。

Wacca

・WRR

欧米豪のカップルで特に「自転車好きでアクティブなカップル」へとターゲットを絞り、稚内の絶景と一周約60キロの利尻島の魅力が詰まったサイクリングツアーを企画しました。サイクリングコース上のインスタ映えスポットで撮影した写真をSNSで配信、詳細情報はウェブサイトで公開。自転車の専門雑誌でプロモーションを実施します。

WRR

・SOYA-NEN

訪日2度目以降のフランス・イタリア人カップルをターゲットに、「昆布と漁師の物語」と題したコースを企画。利尻・礼文島での海藻押し葉体験や利尻町立博物館の見学、ウニ剥きなどの体験に加え、宗谷地方の名所も余すことなく詰め込んだ3泊4日プランとなりました。SNS広告やYouTuberなどのインフルエンサーを誘致して認知度を上げます。

SOYA-NEN

・最北CRUNKY

ゆったりまったり稚内を体験するエコツアーを提案。「白い道」から日本最北端宗谷岬までの景色をセグウェイや自転車で味わいながら移動したり、酪農・漁業体験で得た食材を当日のブランチでいただいたりというイベントが目玉です。プロモーションにはSNSを使って圧倒的に美しい景観を写真や動画へアップしていきます。

最北CRUNKY

 

 発表の講評

・All About Japan編集長 マイケル・カナート氏

「非常にクリエイティビティの高いアイディアが多く素晴らしかった。コースプランに恋愛を絡めたり、宗谷丘陵で野外レストランをしたり、資金を投じて箱を整えたり、あちこち行かなくても、アイディアの力で一箇所の体験を充実させていました。ドローンを活用するアイディアも最北端のという立地や地形を生かすことができ、かつ体験的で良かったです。ツーリズムのポイントは“ここに行かないと何か欠けている”という感覚にさせること。つまりそれは、クリエイティビティを武器に日本の果てというイメージを日本のスタート地点、日本のてっぺんというイメージに変えることかもしれない。今回はインバウンド向けのコンテンツとしてワークショップを行ったが、これはそのまま国内向けにも活用できる事例です。直接海外に働きかける以外にも、国内で話題づくりをして、海外に広めていくという手法も考えていけます」

・JNTO理事 山崎道徳

「とても出来が良いです。一つ一つの発表にストーリーがある。“株式会社SOYA de ど~や”のプロポーズ大作戦は日本人的でベタな発想ですが、プロポーズ前にウニを取るというのは面白い。白い恋人の丘がクライマックスになるので、有名人を事前に誘致してプロポーズしてもらうことで、プロポーズの聖地にしてもらうと完璧です。“Wacca”は着物体験や屋台村を設営するなど街全体を巻き込んだ素晴らしいアイディアでした。体験はもっとてんこ盛りにして、体験の稚内と言われるくらいにしましょう。“WRR”は自転車に着目したのは素晴らしいです。欧米人は日本人よりはるかに体力があるので、世界でもっとも過酷なコースだと打ち出すことで何時間かけてでも行きたいという人が増えます。“SOYA-NEN”の昆布と漁師の物語ですが、実は来日2回目以降のお客様が体験したいというのは農村漁村体験なのでマッチしています。ただ漁師さんが登場しないと観光にならないので、人にフィーチャーすると最高ですね。“最北CRUNKY”は環境や酪農、漁業への着目が素晴らしかったです。宗谷丘陵の風力発電など道北・稚内は環境に優しい観光をしているというアピールし、環境に興味関心がある方々にとっての聖地へとブランド化することで完成します。全体的に非常によく練りこまれていて、明日からすぐ使えるのではないかなという印象でした。皆さまご苦労さまでした」

ワークショップの内容を視覚的に記録したグラフィックレコーディング

 

ワークショップスライド画像
1.インバウンドの動向・トレンドについて
2.ワークショップの流れ
3.座学①インバウンドを想定したコンテンツとターゲット層の検討
4.座学②インバウンドプロモーションの考え方

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