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鳥取県中部地域の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ

鳥取県中部地域の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ

鳥取県中部地域の訪日インバウンドの未来を考えるワークショップ

ワークショップシリーズ第2弾の舞台は、鳥取県倉吉市。2017年11月7日、倉吉駅直結のエキパル倉吉にて開催されました。参加者は、日頃から観光業に携わっている方や、ホテル、銀行、商店に勤める方など全34名。およそ半日にわたって行われたワークショップの様子をレポートします。

恵まれた観光資源を効果的に活用し、インバウンド集客を目指す

鳥取県は、『ゲゲゲの鬼太郎』の水木しげるや『孤独のグルメ』で知られる谷口ジローなど、多数の漫画家を輩出している「まんが王国」。なかでも、倉吉市にほど近い北栄町は、海外でも人気のアニメ『名探偵コナン』の青山剛昌の出身地でもあります。自然が豊かで、美味しい特産品や温泉施設なども充実しており、外国人観光客の集客が見込める潜在的な資源が多い地域です。しかしその一方で、通過客や日帰り客の比重が高く、宿泊客が少ないという現状も。観光資源をうまく活用できていないという課題を抱えています。

今回のワークショップのゴールは3つ。1つめは、「外国人目線から見た鳥取県中部地域の資源の再考、魅力の共有」。2つめは、「プロモーションに向けた魅力コンテンツのコース化」、そして最後は「ターゲットを想定した効果的なサイト、SNSによる情報発信の方向性の共有」です。参加者の皆様が一丸となってこのゴールを目指しながら、中部地域がもつ豊富な観光資源を効果的に活用し、多くの外国人に足を運んでもらうための具体的な方法を探っていきました。

 

活発な意見交換がスタート! 本ワークショップへの期待が高まる

ワークショップは、JNTOの山崎道徳理事による挨拶からスタート。経済効果・雇用創出などの観光立国の意義、訪日インバウンドの動向やインバウンド施策の具体的な成功事例についての紹介をしました。その後、今回のファリシテーターを務める、株式会社創造開発研究所の齊藤誠氏主導のもと、グループ内で自己紹介を行い、PR会社名を考える作業に。「くらよし ちゅうぶ PR会社」の頭文字で「株式会社KCP」、「かってに ちゅうぶ 応援団」で「KCO」など、ユニークな会社名が並びました。齊藤氏が冒頭で伝えた「楽しくなければワークショップではない」という言葉通り、会場内の雰囲気は“わいわい、がやがや”。活発な意見交換が行われそうな予感が開始早々から高まっていました。

各グループでユニークな会社名を考案

 

豊富な観光資源を強みに、ターゲットの心に刺さる観光コンテンツが完成

続いて行われたのは、座学とグループワーク。座学では、株式会社JTB総合研究所の吉口克利氏が登壇し、「プロモーションの成功には、“誰かがやる”ではなく、ここにいる皆さん全員が“自分の事化”して考えていただくことが重要。共通のビジョンをもって取り組んでいただきたいと思います」と、ワークショップへの取り組み姿勢をあらためて強調。ワークショップの3つのゴールと、プロモーションを考えるために必要なプロセス、そして観光資源が豊富なのに外国人宿泊客が少ないといった、鳥取県中部地域の強みと弱みについて詳細なデータを用いながら紹介されました。

座学で提起された内容を受けて取り組んだのが、ターゲットの設定と観光コンテンツの検討です。まずは個人ワークで重要ターゲットと観光コンテンツを付箋に書き出し、その後グループで付箋を共有して内容を精査。メインの観光コンテンツを決定し、1泊2日もしくは2泊3日を想定した観光ルートを作成していきました。

観光コンテンツは、思いつくままに書き出してもOK。それだけに、参加者の手が止まりません。白壁土蔵群や「青山剛昌ふるさと館」などの有名所はもちろんですが、三徳川のカジカガエル、浦富海岸のおしゃれな移動式カフェといったローカルネタも続々とピックアップされていました。また、なかには「スローガンが必要ではないか?」「“ゆっくり街中を楽しむ”をコンセプトにしよう」などと、観光コンテンツにキャッチコピーを付けるグループや、地図を見ながら観光ルートを決めているグループもあり、それぞれに個性のある白熱した話し合いが展開。30分の座学と80分のグループワークを経て、鳥取県中部地域の「ここにしかない」6つのモデルコースができ上りました。

観光資源を思いつくままに付箋に書き出す

外国人ジャーナリストでAll About Japan編集長のマイケル・カナート氏は、「皆さんがどれだけ自分の街を愛しているかが伝わり、心があたたまりました。話を聞いていて、それぞれの観光地にはストーリーがあることがわかりました。このストーリーこそが重要。それを知ることでもっともっと参加したくなりました」とコメントをしました。

外国人目線で語るマイケル・カナート氏

 

SNS、ウェブサイトなどを活用したプロモーション

午後の部で行われたのは、インバウンドプロモーションの手法の検討。株式会社JTBコミュニケーションデザインのコンサルタント宮口直人氏によって、観光プロモーションの考え方や、SNS・ウェブサイト・紙媒体など具体的なツールのノウハウをレクチャー。「SNSは利用者特性を理解して活用すれば、プロモーション手法として効果は大きい。ただし、例えば綺麗な動画を配信して終わりではなく、継続的な関係性を生み出す使い方をしたほうがファンづくりに繋がります」と解説しました。

続いて行われたグループワークでは、午前の部で設定したターゲットと観光コンテンツを、SNS、ウェブサイト、紙媒体などを用いてどのようにPRするのかを検討。最後は、グループごとに配られた大きな模造紙に、今回のワークショップを通して練り上げた観光プランをまとめる作業を行い、プレゼンテーションの準備を進めました。

こうして6つのモデルコースとプロモーションプランが完成。代表者が前に出て、全メンバーの熱意が込められた、鳥取県中部地域の新しいインバウンドプロモーションが発表されました。

どのグループも、鳥取県中部地域ならではの魅力がたっぷりと詰め込まれた観光コンテンツができ上り、参加者、関係者ともに大きな手ごたえを感じていた様子。ワークショップ終了後のアンケートにも「自分には思いつかないようなアイディアを聞くことができて有意義だった」「体験型の観光コンテンツを広げていきたい」「まずは中部地域に来ていただく取り組みが大切だと思った」など、これからも訪日インバウンドに前向きに取り組んでいこうとする意見も多数寄せられました。今回のワークショップをきっかけに、これからの鳥取県中部地域を大いに盛り上げていってほしいと願っています。

 

各グループの発表内容

・株式会社KCP

ターゲットは欧米系の20~30代の独身女性。アニメや日本文化など、日本の“Kawaii”ものをたっぷりと堪能できるプランを立案。ツアーは、伝統工芸品「倉吉絣」の着物を着て、白壁土蔵群を散策するところからスタート。街中の至るところに点在する『ひなビタ♪』のキャラクターパネル、キャラクターグッズなどの土産物、名物「餅しゃぶ」などを楽しんでもらい、ツアー最後に訪れる「青山剛昌ふるさと館」でも、『名探偵コナン』の魅力を探訪してもらいます。PRはSNSを活用し、観光地のライブ情報や季節に応じた情報を発信。また、作者協力のもとオリジナルアニメの制作も行います。

株式会社KCP

・Bird Inc.

体験型の観光コンテンツを豊富に組み合わせたツアーを企画。健康志向でお金と時間に余裕のある、イタリアとフランスの中高年がターゲット。2泊3日のツアーは、倉吉観光農園でのいちご狩りや農業体験、三徳山の早朝登山、東郷湖畔ノルディックウォークなどが組み込まれたアグレッシブな内容に。三朝温泉とはわい温泉といった倉吉エリアを代表する2つの温泉で、旅の疲れをしっかりと癒してもらえるプランになっています。まずはSNSで各施設の写真や動画を配信し、興味をもってもらいます。紙媒体に口コミサイトに投稿してくれた際の特典を掲載するなどして、口コミサイトへ誘導する仕掛けも作ります。

Bird Inc.

・株式会社はばたきプロモーション

香港の働く女性をターゲットに、倉吉のおいしい食べ物や芸術に触れられるリラックスプランを提案。メロン、ぶどう、いちじく、梨など、季節によってさまざまに楽しめる果物狩りや、倉吉のお酒を堪能できる酒蔵やワイン醸造所を巡った後は、コラーゲンたっぷりで女性に人気の牛骨ラーメンを楽しんでもらいます。その後移動する三朝温泉では、三朝バイオリン美術館や陶芸、織物、染め物などの体験コースと三徳山登山コースの2つのパターンを用意。夜はゆったりと三朝の湯に浸かり、リラックス。PRは各種SNSを活用するほか、ウェブサイトでは、利用者の体験談や必要な費用などを紹介します。

株式会社はばたきプロモーション

・KCO

田んぼやあぜ道などの原風景をサイクリングしながら楽しみ、倉吉の人々の暮らしや郷土料理も体験できる異文化体験ツアーを企画。まずは、『孤独のグルメ』などで知られ、ヨーロッパを中心に海外でも高く評価された谷口ジロー氏の漫画に、たびたび登場する白壁土蔵群を訪れ聖地ツアーを体験。初日の宿泊先は農家で、自分で打ったそばを、わさびやイワナといった名物とともに味わってもらいます。2日目の朝は、座禅を組んで気持ちを整理したうえで、三徳山と投入堂を参拝。下山後に精進昼食を体験し、三朝温泉に宿泊します。ターゲットはフランスの30~40代。多言語対応の紙媒体を作成し、QRコードを付けてスマホアプリと連動。海外の旅行博やツーリストインフォメーション、空港のゲートウェイなどに設置してPRを実施します。

KCO

・ニコちゃんカンパニー♬

日本を何度か訪れたことのある台湾の若年層をターゲットに「なりきりインスタ映えコース」を立案。白壁土蔵群での倉吉絣、自分でコーヒー豆を挽くことができる石臼コーヒー、色とりどりの餅を使った餅しゃぶなどの撮影ポイントが目白押し。三朝温泉では境港産のかにを堪能し、昭和レトロな街並み散策も楽しみながら、撮影をしてもらいます。着付けや倉吉の風景を楽しむ様子をSNSに投稿してもらい、インスタ映えスポットのリアルな状況を発信。クーポン付マップの作成、YouTubeなどの動画も使ってPRを行います。

ニコちゃんカンパニー♬

・株式会社赤瓦投入堂

白壁土蔵群、三朝温泉、三徳山の投入堂といった、倉吉を代表する観光コンテンツをコンパクトにまとめたプランを企画。ターゲットは韓国人の家族連れ。米澤たい焼き、打吹公園だんご、B級グルメの牛骨ラーメンなど、子どもが喜ぶ食べ物スポットもプランに組み込んでいます。和紙灯りに包まれる三朝温泉街の幻想的な風景も、家族一緒に楽しんでもらいます。PRはFacebookとウェブサイトを通じ、旬のイベント情報や、家族が実際に旅をする様子を動画で配信。紙媒体は、集客用のリーフレットと街歩き用のパンフレットの2種を用意。家族写真をキービジュアルにしたインパクトのあるデザインで作成します。

株式会社赤瓦投入堂

 

発表の講評

・株式会社JTBコミュニケーションデザイン 宮口直人氏

「地域の商品づくりは、やはり地元の方が得意なんだということを、今日改めて感じました。どの会社の案も、観光資源をどのように活用したいのかがはっきりと伝わるようにプランニングされていたので、そのまま実施すれば効果がきっと表れると思いました」

・All About Japan編集長 マイケル・カナート氏

「私は16年間日本に住んでいて、今日初めて倉吉に来ました。こんなに素晴らしいストーリーがある土地なのに、なぜ一度も訪れなかったのかと、今、自分を怒っています。こういう気持ちにさせてくれた皆さんに感謝しています。本当にありがとうございました」

・JNTO理事 山崎道徳

「倉吉の最大の資源は、“人”ではないでしょうか。県民性を前面に出せば、それだけで倉吉を訪れてくれるはずです。ですから、KCOの谷口ジローさんの話や農家での民泊は、地元の方々と触れ合う機会を作り出す素晴らしいアイディアだと思いました。このような発想も取り入れながら、本日のプランをどんどんブラッシュアップしていただきたいと思います。私たちも大変参考になりました。お疲れさまでした」

ワークショップの内容を視覚的に記録したグラフィックレコーディング

 

ワークショップスライド画像
1.インバウンドの動向・トレンドについて
2.ワークショップの流れ
3.座学①インバウンドを想定したコンテンツとターゲット層の検討
4.座学②インバウンドプロモーションの考え方