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[2017年度調査] 地方誘客に向けた欧米豪市場からの8つの訪日客タイプ ~JNTO自主調査レポート③~

Written by JNTO

「欧米豪訪日客の価値観」に焦点をあてたJNTOの自主調査レポートですが、最終回の今回は地方誘客に向けた欧米豪市場からの8つの訪日客タイプ を紐解きます。
前回の自主調査レポート②「地方を旅行する欧米豪からの訪日客はどんな人?」では、調査結果から見えてきた、「地方誘客に向けた欧米豪からの旅行者タイプ」の全体像をご紹介しました。今回のレポートでは、個々の旅行者タイプの特徴を見ていきながら、タイプ別の地域の魅力づくりの観点やプロモーション、消費拡大策、地域での活用方法についてご紹介します。

目次

JNTO自主調査レポート①(2018.4.16)はこちら
JNTO自主調査レポート②(2018.6.11)はこちら

ポイント

●価値観に基づき、欧米豪からの訪日客を次の8タイプに分類し、地域の対応案を例示。

① 日本旅行に興味はあるが、こだわりは少ない「お任せ型」
低価格旅行であるが、将来的な単価アップに向け、「タビマエ・タビナカ・タビアト」の各段階において地域の魅力を訴求

② 大都市滞在を中心に、周辺地域の日帰り旅行を楽しむ「大都市+α型」
拠点となる都市とのコントラストを意識し、食やアクティビティでの消費促進策を工夫する必要あり

③  同行者と一緒に日本の主要観光地を巡ってみたい「主要観光地周遊型」
地域の滞在プログラムを作る際には、同行者との関係深化の要素や教育的要素の観点を織り交ぜた工夫がポイント

④ 他の人が知らない日本を自分達で経験しに行く「日本探求型」
旺盛なチャレンジ精神と行動力、自分だけの経験に価値を置くことを踏まえ、「今だけ・ここだけ・あなただけ」の体験を準備することが重要

⑤ 人のつながり・地縁のある地域+αを旅行する「つながり重視型」
人を介在させた滞在の仕組みの構築(例:教育機関等との連携、山村留学や農家民泊、ホームステイ、ボランティア、地域の地場産業や施設を活かした研修等)と訴求(近隣地域在住の日本人に向けたプロモーション)がポイント

⑥ 広く日本に関心があり、ライフスタイルに日本を取り入れている「日本通」
見た目の美しさや新奇性だけでなく、思わず人に共有したくなるようなストーリー、コンセプト、蘊蓄(うんちく)等を盛り込みながら地域資源を磨き上げ、プロモーションしていくことが必要

⑦ 興味関心のあるテーマを追求する「テーマ追求型」
ターゲットテーマの情報・人的ネットワークにいかに入り込み、地域を訴求できるかがポイント

⑧ 信念やライフワーク、事業があり、地域に入り込んでいる「地域定住型」
訪問者というよりも、地域づくりのキーパーソンとして、いかに協働できるかがポイント

●各旅行者タイプの共通項は「幸せの追求」。「愛」、「楽しむこと」、「心身の健康の維持」、「家族・友人との関係を深めること」、「発見すること」、「好奇心を満たすこと」、「新しいことを学ぶこと」等への対応は、どのタイプの旅行者にも訴求性がある。

●地域の誘客戦略を議論する視点の一案として「地域の観光資源や周辺地域との立ち位置から考える視点」、「理想の地域像を描いてから逆算する視点」、「アイデアから逆算する視点」を例示した。


前回のレポート②では、デモグラフィック(人口統計学的)な定量的なデータだけでなく、サイコグラフィック(心理的属性)な観点も踏まえた「旅行者タイプ」を描き出すことで、ターゲットとすべき顧客への理解が深まり、地域関係者の意識共有ができる利点をお伝えしました。その上で、「地方誘客」と「消費拡大」に向けて、「欧米豪からの8つの訪日客タイプ」の全体像について、各タイプの位置関係を俯瞰する「志向軸別」の整理(図1)と、地域づくりの観点から「地域へのエンゲージメント(愛着心・思い入れ)軸」別の整理(表1)の2つの観点から提示しました。

図1 地方誘客のための欧米豪旅行者タイプ(志向軸別整理)

表1 地方誘客のための欧米豪旅行者タイプ(エンゲージメント軸別整理)

※ 今回の定性調査の対象者には、欧米豪訪日客の中でも熱心な日本ファンが多く、今回の8つのタイプが必ずしも欧米豪訪日客全体を代表している訳ではありません。東京・京都・大阪以外の地方訪問経験率は約9割と、他の調査と比較して高い人々が多く含まれています。しかし「一歩先を行く訪日客の動向」という意味で示唆に富むコメントが多く、今後の地方誘客において有意義なものであると考えられます。
※ 訪日客タイプの詳細一覧についてはこちら

今回のレポートでは、個々の旅行者タイプの特徴を見ていきながら、タイプ別の地域の魅力づくりの観点やプロモーション、消費拡大策、地域での活用方法についてご紹介します。では早速、各旅行者タイプの特徴を見ていきましょう。

1.地方誘客に向けた欧米豪市場からの訪日客タイプ


最初にご紹介するのは、日本旅行に興味はあるものの、こだわりは少ない「お任せタイプ」です。「価値観」に着目した調査と言いながら、冒頭から拍子抜けされてしまいそうですが、定量調査の結果からは、訪日旅行に関して特徴的な考え方はなく、ほとんどの調査設問に対して「どちらとも言えない」という回答が半数を占める層が一定数いました。

彼らのニーズを見ていくと、「安く日本に行けるなら、特に要望はない」という「価格重視」の面と、「どこにこだわったら良いのか、よく分からない」という「訪日初心者」の面が見受けられます。受入地域側が特に留意すべきは、この両者を混同してはならないという点です。特に後者は、すぐに地域のファンになる可能性も十分にあるため、低価格だからとぞんざいな扱いにせず、有料オプションも織り交ぜながら、タビマエ・タビナカ・タビアトの各段階において、地域の魅力を伝えていく必要があります。一方、前者は「低価格」というところに価値を見出しているため、なかなか支出につながらない恐れがあります。ただし、前者は比較的年齢層が低いため、長期的に見れば、収入が上がるにつれて、もう少し支出をするようになる可能性はあります。

他のタイプに比べ、訪日旅行に際して「特に参考となった情報源はない」という人が多く、自ら情報収集をするよりも旅行会社や口コミサイトの情報を参照します。日本に対する知識が薄いため、他国との比較を意識し、まずは「地域らしさ」よりも「日本らしさ」を表現する必要があります。

なお、このタイプの旅行者が多い地域は旅行地として成熟段階に入っている可能性があります。旅行者に対して提供している情報や体験内容、モデルルート等が陳腐化していないか、定番化し過ぎていないか、再検討が必要かもしれません。


次にご紹介するのは、大都市滞在を中心に、周辺地域の日帰り旅行を楽しむ「大都市+αタイプ」です。「東京」「京都」「大阪」といった日本の代表的な都市を拠点とし、そこから日帰りないし1~2泊で周辺地域にも足を延ばすという旅行をしています。彼らにとって、「東京」「京都」「大阪」の魅力は、伝統と革新が混在した「典型的なイメージの日本」を体現している点です。一方で、昨今の「東京」「京都」「大阪」における観光客の混雑状況に少々疲れている面も見受けられます。大都市を離れる際には、都会にはない豊かな自然の中でのリラックスや、神社仏閣で心の平穏を感じることを求めるため、周辺地域(目安として片道2時間程度までの距離)としては、大都市とのコントラストを訴求すると良いでしょう。併せて、都市からのわかりやすいアクセスの周知も不可欠です。

彼らは、ミシュラン等の星付きレストラン、自然の中で楽しむアクティビティ(カヌー、キャニオニング、スキー、スノーボード、登山、マリンスポーツ等)への関心も高く、ホテル以外の宿泊施設では、旅館、Airbnb、宿坊、グランピングへの関心が高くなっています。宿泊を伴わない日帰り旅行の場合、消費が少なくなってしまう恐れがあるので、こうした食やアクティビティでの消費促進も必要となるでしょう。滞在都市でのサービスレベルが基準となるので、一定の品質を満たせば、価格には拘泥しない面があります。

東京、京都、大阪以外でも、地方の拠点となる中核都市に滞在し、周辺の観光地に足を延ばすというスタイルの旅行者についても基本的には同様の考え方で、滞在拠点都市や周辺観光地との差別化とアクセス方法を明示しておく必要があります。


続いてご紹介するのは、「日本のいろいろな地域を訪れたい」というニーズを持つ旅行者の内、同行者と一緒に日本の主要観光地を巡ってみたい「主要観光地周遊型」です。

このタイプの旅行者の訪問先は、有名観光地、話題の観光地であり、他の旅行者による評価に影響されます。「皆が行っているあの場所に自分も行きたい。同じことをしたい」というニーズがあります。旅先の情報源は多様であり、特に口コミサイトのコメントは参考にしていることが多く、SNS映えも重要です。

訪日初心者、ファミリー層が多く見られ、自身の楽しみの他、同行者が日本旅行を楽しめることも重視しています。子供連れの場合は、日本旅行を教育の機会とも捉えている人も見られます。従って、地域の滞在プログラムを作る際には、同行者との関係深化の要素や教育的要素の観点を織り交ぜた工夫が必要となるでしょう。例えば、地域や参加者である旅行者自身について理解を深めるプログラムや、地域の人々や他の参加者と本人達(特に子供)との交流要素を加えたプログラム、新たな知識・考え方や技能の習得を促すプログラム、工夫や協力をすることで達成が可能なプログラム等が考えられます。限られた時間内で、同行者と楽しく、かつストレスなくできる日本体験を求めているため、内容の正統性や厳密さにこだわるよりも、所要時間別の複数プランの提示や、不安・困難要素の除去・軽減、本人や同行者に向けたサプライズやプレゼント等の演出要素を加えることも良いでしょう。ハネムーン、あるいは結婚記念日や誕生日のプレゼントとして日本周遊旅行を準備する人も見られます。タイプ1「お任せ型」よりも日本各地についてのイメージを持っているため、受入地域としては、他の国内観光地とは違う「地域らしさ」を表現していくことも重要です。


続いてご紹介するのは、「日本探求型」です。「日本のいろいろな地域を訪れたい」というニーズを持つ旅行者の内でも、「他の人がしている日本旅行を自分達もしてみたい」という「主要観光地周遊型(タイプ3-A)」とは異なり、「他の人が行っていない場所に行きたい。他の人がしていないことをしたい」というのが、このタイプの特徴です。好奇心とチャレンジ精神が旺盛で、有名無名に関わらず、いろいろな地域を旅して、「自分だけの経験」を重ねることを重視しています。そのことによって、他の人とは違う、「自分が自分であること」を実感できるのです。

ランキングサイト、観光PR映像、個人のブログ、ドキュメンタリー等、いずれも旅行先の情報収集源として重視しています。訪日旅行者があまり訪れない地域の情報は、Google翻訳を使用して、日本のウェブサイトから入手することもあります。また、トラベルブログ等で情報の発信者側になるケースも多く、SNS映えも重要です。

受入地域側としては、彼らの旺盛なチャレンジ精神と行動力、自分だけの経験に価値を置くことを踏まえ、「今だけ・ここだけ・あなただけ」の体験を提供できるように準備することが重要です。

また、お遍路や湯めぐり、御朱印集め、冬季の祭りや秘湯、酒蔵、百名山のような「達成感」をくすぐる内容に注目して、他地域と連携して訴求していくのも一考でしょう。


続いてご紹介するのは、地縁のある地域+αを旅行する「つながり重視型」です。このタイプの旅行者は、「日本は第二の故郷」「日本は安心でき、居心地が良い」という意識を持っていて、帰省や母校への再訪の感覚で日本を訪れます。留学やホームステイ、就職や研修等、何らかの地縁を持つ人が多く、これまで培った人々との関係性を重視します。訪問先は必ずしも有名観光地でなくても良く、日本旅行の仕方は、拠点となる馴染みの地域+周辺に足を延ばすパターンです。日本での過ごし方としては、馴染みの地域のホストファミリーや友人を訪ねたり、彼らのおススメする場所を訪ねたりと、肩肘張らずに旅をします。一般的な旅行者に比べ、絶対数は多くないですが、有名観光地でなくても対応可能で、地域や関係先に対するロイヤルティ(愛着心)が高いため、再訪や他への推奨行動(口コミ)も期待できます。

このタイプの旅行者をターゲットとするには、人を介在させた滞在の仕組みを構築することがポイントとなります。例えば、高校や大学等の教育機関や、国際交流・国際協力等の機関と連携し、山村留学や農家民泊、ホームステイ、ボランティア、地域の地場産業や施設を活かした研修、住民とJETプログラム・国際交流員との日々の交流促進等を通じて、地域や地元の人達とのつながりを如何に作り上げるかが勝負となります。

彼らに直接訴求するには、交換留学プログラムのある大学やJETプログラム等の在外同窓会組織も良いでしょう。また、近隣にこうした海外との交流が既にできている地域がある場合、訴求すべき先は訪日客だけではなく、彼らとの関係を持つ地元の日本人の場合も当然考えられます。つながり重視型の旅行者とのつながりのある日本人にまず楽しんでもらうことで、海外から訪日客が来た場合に自地域まで足を延ばしてもらえる可能性が出てきます。


続いてご紹介するのは、広く日本に関心があり、自身の普段の生活や考え方にも日本を取り入れている「日本通」タイプです。このタイプの旅行者は、普段から日本語や日本文化を学んでいる、あるいは精通している人や、自身で日本料理を作って楽しんだり、配偶者が日本人のケースも見受けられます。子供の頃にテレビ放送されていた日本のドラマやアニメ、ビデオゲーム等のポップカルチャーを通じて日本に関心を持ち、その後、日本という国と文化に対して、幅広く興味関心を抱くようになったというパターンが多いです。

このタイプの旅行者は、日本の良さを「感性」と「理屈」とで評価します。つまり、見た目の「美しさ」だけでなく、その「背景(ストーリー)」、「美意識・哲学」、「蘊蓄(うんちく)」等を併せ伝えて、納得してもらうことがポイントです。むしろ、一見したところ何の変哲もないものや奇異なものでも、そこを入口として日本文化全体に通底する広がりや深度を持っているものこそが、このタイプの旅行者にとっての興味関心の対象ですらあると言えます。

一旦、納得してもらうことができれば、このタイプの旅行者は、他のタイプの旅行者に対する「地域の水先案内人/橋渡し役」を担い得る存在となり得ます。

彼らは、星付きのランキングサイトやオーソドックスな観光PR映像を見るよりも、個人のブログを読んで、旅行先で自分がどんな経験をできるかという観点で情報収集することを好みます。また、ドキュメンタリーからも旅のインスピレーション(旅先や旅先ですることの閃きやアイデア)を得ることが多くあります。実際に挙がっていた番組や作品をいくつか例示すると、「NHK World’s Japanology」、「CNN」、「BBC」、「Midnight Diner(邦題:深夜食堂)」、「Samurai Gourmet(邦題:孤独のグルメ)」、「早川光の最高に旨い寿司」、『二郎は鮨の夢をみる』等です。インスピレーションを得たら、関連する動画を検索します。このタイプの旅行者にとっては、情報収集の段階で、既に「日本旅行」は始まっており、情報収集自体を積極的に楽しんでいるのです。

実際の旅行行動としては、観光客で溢れた有名観光地よりも、たとえ観光地化されていなくとも、地域の生活文化を残した地方の方が、日本の本来の良さを知ることができると考え、地方旅行にも出掛けていきます。普段の生活や趣味、日本旅行を通じて、日本人と交流することも彼らの楽しみです。

受入地域側としては、彼らが見ている映像や旅行者のブログ等を参考に、自地域ならではのテーマを発掘し、このタイプの旅行者の知的好奇心をいかに満たすことができるかが勝負です。そのためには、見た目の美しさや新奇性だけでなく、思わず人に共有したくなるようなストーリー、コンセプト、うんちく等を盛り込みながら地域資源を磨き上げ、プロモーションしていくことが必要です。「タビマエ」でのストーリー性のある情報発信やドキュメンタリー企画等だけでなく、「タビナカ」での情報発信や経験できることの質の向上に向けて、優秀な地域ガイドの育成、体験ツアーの造成等も重要になってきます。一般的に、上記の納得感さえ得られれば、付加価値分の支出は厭いません。

是非、彼らに地域のファン、サポーターになってもらい、他の潜在訪日客にも地域の魅力を解説してもらう方向にしたいところです。



続いてご紹介するのは、興味関心のあるテーマを追求する「テーマ追求型」の旅行者です。「日本通」と似た傾向がありますが、彼らの興味関心は特定の分野に絞られている点、テーマによっては、日本だけでなく、その他の国も旅行先としている点が異なります。

テーマ例としては、「アニメ」や「ポップカルチャー」といった日本ならではのテーマの他、「世界遺産」、「宗教・巡礼」、「ウイスキー」、「アウトドアアクティビティ(スキー、トレッキング・ハイキング、サイクリング、サーフィン、ダイビング、釣り等)」、「バードウォッチング」、「庭園」、「現代建築」、「クルーズ」、「写真撮影」等、日本だけでなく、世界各地においても追求できるテーマがあります。また、美術館・博物館の会員組織が主催する有識者と回るテーマ型旅行(絵画、建築、焼き物、生活文化等々)もあり、米国では「アフィニティ旅行」と呼ばれています。

旅の仕方も、自身に興味関心のあるテーマを追求するための旅行という内容で、同じ趣向の旅行者・同行者とのコミュニケーションにより、行き先を決めたり、変更したりします。テーマによっては、「匠」と呼ばれる日本人との交流等をハイライトとしたケースもあるようですが、興味関心のあるテーマでの旅行を繰り返す中で、「たまたま来ることになった日本」という旅行者も多いようです。テーマ追求型ですので、関連している地域であれば、一般的な有名観光地でなくとも足を運びます。もちろん女性もいますが、全般的には20~30代の男性が比較的多く見られます。ただ、テーマによっても様々で、バードウォッチング、アフィニティ、クルーズ等は、年齢層が高く、夫婦での参加が多く見られます。

情報収集については、書籍やウェブサイトの活用以外に、前述したように同じ趣味趣向を持つコミュニティ内で情報交換をしたり、自国で開催される興味関心対象に関連したイベントに参加して、チラシやパンフレットを入手する等、多様な情報源を基にして、関心テーマに関する情報を自ら集めています。個人で実現が難しい場合は、旅行会社のSIT(Special Interest Tour:特定目的の旅行ツアー商品)を利用するのもやぶさかではありません。

このタイプの旅行者も、自身が関心を抱く特定テーマについて、ブログ等で情報発信するケースも多くあり、特定テーマではありますが、他のタイプの旅行者に対する「水先案内人/橋渡し役」を担い得る存在です。

受入地域側としては、SITに特化した旅行会社の商品一覧も睨みながら、取り組むべきテーマと内容の当たりを付けていく作業がスタートラインとなります。

なお、このタイプの旅行者向けには、必ずしもツアー商品化されている必要はありません。テーマに関連して、「その地域に行ったら、どんなことができるのか」という情報を各テーマの愛好者等が集うイベントや情報源にいかに周知できるかがポイントになります。そのためには、①SITに特化した旅行会社への働き掛けの他、②関連するテーマに特化したイベントや組織等(上記コメント欄にあるように在外日本大使館での日本関連イベントの他、例えば、世界最大かつ歴史のある山岳旅行関係者が集う場である「MTS(Mountain Travel Symposium)」、米国で開催される世界最大のダイビング展示会「DEMA SHOW」等、テーマに特化したものや博物館・美術館等の会員組織・団体等。米国では、アフィニティ旅行市場に特化した旅行博もあります)での働き掛け、また、③来訪者の満足度を高め、良い口コミを広めてもらうことがポイントになります。日本人の場合、つい遠慮してしまうこともあるかもしれませんが、満足していただいた来訪者にレビューを書いて評価してもらうよう案内することも重要です。

ニッチな市場であるため、この層をターゲットと定めて、地域自ら大々的なプロモーションを展開していくには二の足を踏む地域もあるかもしれません。そうした地域では、まずはインバウンド受入環境の整備(受入意識の醸成、多言語対応、二次交通整備、決済環境の整備等)に注力し、PRについては並行して各地のDMOやJNTOとの連携をご検討下さい。

消費拡大につなげるには、彼らを魅了しているテーマに関連して、個人では実現しにくい内容を盛り込んだSITへとつなげる過程で、地域との接点(地元資本の宿泊施設の利用、地域ガイドの利用、物販促進等)をいかに増やすことができるかがポイントとなります。

なお、このタイプの消費形態は「一点豪華主義」と言え、その他の支出は低価格が求められることもあります(富裕層の場合は、この限りではありません)。


最後にご紹介するのが、信念、ライフワークがある、あるいは事業のために地域に入り込んでいる「地域定住型」の人々です。このタイプの人々は、出現率は低いものの、地域の皆様には、是非その存在を知っておいていただきたい人々です。というのも、彼らは独自の理想像・価値観に基づき、外国人目線を活かしながら地域コミュニティと付き合っているため、その地域が訪日客にとって魅力溢れる場所となる可能性を秘めているからです。イメージを持ってもらうために敢えて具体的な地名を挙げるとすれば、徳島県の祖谷や北海道のニセコ等が該当すると言えるでしょう。このタイプの人々は、地域づくりの分野で言われるところの「若者・ばか者・よそ者」に該当する人とも言えますし、「イノベーター理論」で言う「イノベーター(革新者)」に該当する人とも言えます。

他の旅行者タイプと異なり絶対数が少ないため、このタイプの旅行者へのプロモーションは難しいというのが正直なところです。実際には、自身で日本各地を回る中で、その地域に辿り着いた人々、あるいは偶然その地域に辿り着いた人々です。彼らは旅行者から定住者になっているケースが多く、地域側としては、自地域にこうした経緯の外国人がいないか探してみるのが、取り組みのスタート地点となるでしょう。

このタイプの外国人が見つかった場合、地域関係者としては、「彼らが何に魅了されているのか」を理解することに努め、「自地域の自然・文化・コミュニティを健全に維持するには何が必要か」、「彼らをいかにサポートできるか」等、役割分担に応じて協働することがポイントとなります。

こうしたタイプの外国人が見つからなかった場合は、先に挙げた他地域の事例研究を通じて、地域の価値の発掘(観光資源化)と磨き上げ(観光商品化)、市場への流通化を検討することになりますが、「地域の魅力の源泉はどこにあるのか」という根本的な問いについては、地域へ誘客したいタイプに近い外国人を外部から招待し、彼らの目線から地域を評価してもらうのも一考です。

2.各タイプの共通項目は「幸せの追求」

地方誘客に向けた欧米豪からの8つの旅行者タイプを見てきましたが、これらのタイプに共通してみられることもありました。それは一言で言うと、「幸福感を求めている」ということです。極めて当たり前のことと言われるかもしれませんが、「数値データとしての訪日客」や「地方誘客・消費拡大のターゲットとしての訪日客」といった視点だけで捉えていたのでは、ひょっとすると見逃されてしまいがちな視点であるかもしれません。一人ひとりの人間として、「愛」、「楽しむこと」、「心身の健康の維持」、「家族・友人との関係を深めること」、「発見すること」、「好奇心を満たすこと」、「新しいことを学ぶこと」等、「幸せであること」を求めている訪日客一人ひとりの姿を、改めて「誘客」と「消費拡大」、さらには「より良い地域づくり」に向けた取り組みの基本に据えることは、情緒的な好みの問題ではなく、より多くの人に訴求し得る重要な視点であると言えます。

そして、最も重要なことは、「幸せの追求」は、どの地域であっても(たとえ世界遺産がなくても、風光明媚な場所がなくても、海がなくても、山がなくても等)、意識の仕方次第で、それぞれの地域における「幸せの在り方」を見つけ出すことが可能であるということです。「この地域に住んでいて、あるいはこの地域を訪れる人が、幸せと感じることは何なのか?どのような時なのか?」。一見、夢見がちな問いのようにも思えますが、ビジネスにも地域住人の誇りにもつながる重要な問いとして、地域の皆様で真面目に一緒になって考えてみることが、インバウンド受入の取組を進めるに当たって、時々に立ち返るべき参照地点になり得ると考えます。「国の光を観せる「観光」だけでなく、幸せを感じる「感幸(かんこう)」、幸せの連なった「環幸(かんこう)」を!」という言葉遊びも、あながち間違ってはいないのではないでしょうか。

3.旅行者タイプの活用の仕方

さて、ここまで、各旅行者タイプの特徴と受入地域側としての対応案を見てきましたが、地域の皆様にしてみれば、「では、うちの地域はどのタイプの旅行者を狙うべきなのか?」という問いが浮かんでいるかもしれません。

この問いに対する回答は、「それこそが各地域の戦略そのものであり、各地の力の見せ所」というのが正直なところです。とは言え、ここでは、検討の出発点として、いくつかの視点を提案したいと思います。

1つ目は、冒頭に示した図1の志向軸別整理を参照して、「地域の観光資源や周辺地域との立ち位置から考える」という視点です。

図1(再掲)地方誘客のための欧米豪旅行者タイプ(志向軸別整理)

例えば、「うちの地域には何もないよ」と言う地域は、「つながり重視型(タイプ4)」はどうでしょうか。飾った観光はできない、でも地域のありのままの生活を、地元の人達との交流を通じて知ってもらい、人間関係に基づいたリピーター化、市場への認知を目指す訳です。例えば、安心院町(大分県宇佐市)のグリーンツーリズムは、「1回泊まれば遠い親戚、10回泊まれば本当の親戚」というコンセプトを基に、農業体験や教育旅行等に取り組み、韓国人来訪者から大変な好評を得てきました。(参考:「韓国人が涙する一泊二日の心のふるさと(大分県宇佐市安心院町)」『「地域の“とがった”に学ぶインバウンド推進のツボ2」』((公財)日本交通公社))近年では、韓国だけでなく、台湾、中国、香港、シンガポール、タイ等のアジア諸国の他、フランスやアメリカからも「日本の農村を体験したい」という理由で安心院の農家民泊への来訪者が増えているそうです。

あるいは、ゴールデンルートでなくとも、他の地域には絶対負けないキラリと光る何かを売っていこうとしている地域は、右上の「タイプ5-A, B, C」を最初のターゲットに定め、まずはニッチ市場の聖地を目指すというのはいかがでしょうか。このタイプの人々の情報発信力により、他のタイプの旅行者にも波及させていくということも考えられるでしょう。マニアックな旅行者には、追求するテーマを極めてもらう一方で、そのテーマの持つ普遍性、他の分野にも共通する点を非マニアに向けて提示するのです。例えば、タイプ5-Bで例示した「仏教」というテーマですが、それを突き詰めたいという人には中長期の修行や特別講義等もあることでしょう。その上で、一般向けには、「ちょこっと体験」として、仏教が他の宗教と何が同じで、何が違うのかを平易な言い換えによって伝え、仏教がいかに日本人の日常に生きているか、その先の日本旅行の楽しみ方のヒントとして広げていくという手法もあるでしょう。

ただし、尖ったコンセプト・特徴で売り出した地域が、市場全体に浸透すればする程、違ったタイプの旅行者の中でも、価格重視の旅行者が訪れるようになる可能性もあります。地域内の受入収容力も踏まえ、どの市場からどのタイミングで、どの程度誘客するかという戦略策定と、そのモニタリングの実施は慎重に行う必要があります。場合によっては、地域の再ブランディングも必要となってくるでしょう。

他の地域には絶対に負けないキラリと光る何かを持っていない、あるいはその深度が浅い、数が少ないという地域であれば、マニアックな市場を狙うよりも、入門体験を充実させたり、提供する内容の種類の多さで勝負したり、あるいは他地域と連携していくのも良いでしょう。四国のお遍路や、湯めぐり等に見る周遊の仕組みも参考になると思います。

地理的あるいは交通手段の整備状況により、大都市や中核都市からの日帰りないしショートトリップとなる地域は、都市とのコントラストを意識した魅力づくりに注力することがポイントとなります。

2つ目は、「理想の地域像を描いてから逆算する」という視点です。語弊があるかもしれませんが、「地域のどのような課題を解決する手段として、インバウンド誘客を狙うのか」という視点です。例えば、一口に「地域経済の活性化」と言っても、その時々の国内需要の穴埋めや季節・曜日波動の平準化なのか、訪日旅行後の越境ECまで狙うのかによっても、現場での対応は変わるでしょう。人数が来ても、地域にお金が落ちる仕掛けを全く仕込んでいないのでは意味がありません。あるいは、「過疎化対策」として、コミュニティの活性化や社会インフラの維持のためにインバウンド誘客を図っても、入門体験をさらっとできれば良いと考えている旅行者や、交流をそれほど望んでいない旅行者、二次交通を使わない・使えない旅行者ではミスマッチとなってしまいます。「教育・交流」等の目的も然りです。このように、何を目的にするかによって、ターゲットとすべき旅行者のタイプは異なってきます。地域をどうしていきたいのかという理想の実現に向けた手段として、どんな価値観を持った人に、いつ、どの程度来訪してもらいたいのかを考える必要があるでしょう。

3つ目は、「アイデアから逆算する」という視点です。例えば、訪日客が最も期待している項目で常に上位に位置する「日本食」についても、タイプ別に見ていけば、提供の仕方について様々なアイデアが考えられます(表2)。

表2 旅行者タイプ別に見た「食」の提供方法についてのアイデア例


漠然と「欧米豪」と一括りにするのではなく、「欧米豪」の中にも価値観によって複数の旅行者タイプがいることを知り、その各タイプに向けた商品・サービスアイデアをできるだけ出す中から、他地域と比較して競争優位を築けるアイデアで、実現可能と思われるものがあれば、そのアイデアに相性が良いと思われるタイプの旅行者に向けて誘致活動を行っていくという手順です。

なお、プロダクトアウトの発想だけにならないよう、ターゲットのインサイト(価値観・訪日旅行に求めているもの)との突き合せは常に必要です。

以上、「地方誘客に向けた欧米豪からの旅行者タイプ」の特徴と対応策について見てきました。まずは1つのタイプに限定して、他への波及を狙う戦略もあるでしょうし、同時に複数を組み合わせてターゲットにするのもあるでしょう。今回示した旅行者タイプを「たたき台」として、是非地域の多様な関連業種の皆様の間で、「どのような価値観を持った旅行者がいるのか」、「自地域が持っている資源には何があり、どういった見せ方ができるのか」、「自分達の地域から来訪者へのメッセージとして何を発せられるか」等々、アイデアや意見を出し合って議論し、実行・改善を続けるきっかけとしていただけましたら幸いです。


JNTO自主調査レポート「欧米豪訪日客の価値観」の連載は今回で終了となります。お読みいただきありがとうございました。
各レポートについてのご感想やお問い合わせ、コンサルティングのご依頼はこちらからご連絡ください。

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