[2017年度調査] 持続可能な観光政策のあり方に関する調査研究

Written by 国土交通政策研究所

国土交通政策研究所では、持続可能な観光政策のあり方に関し、国際機関や海外の観光先進地域の取組みに着目し、地域住民の目線を中心に外国人旅行者の急増に伴う問題及びその対応策等の調査を実施しました。この調査結果を、「持続可能な観光政策のあり方に関する調査研究」(発行:2018年4月、国土交通政策研究所)として2018年4月に公表しましたので、内容のポイントと概要資料、全体資料をご案内します。

目次

「持続可能な観光政策のあり方に関する調査研究(概要版)」
「持続可能な観光政策のあり方に関する調査研究(完全版)」

政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」(明日の日本を支える観光ビジョン構想会議決定(2016年3月))を策定し、訪日外国人旅行者数の目標を2020年に4,000万人、2030年に6,000万人とする等、「観光立国」から「観光先進国」に向け、強力に推進しているところです。

他方、観光は住民とのトラブル等の負の影響ももたらすことがあります。例えば、最近では、トイレの使い方といった日々のマナーの問題の他、騒音、交通混雑や事故、ゴミの増加、風景破壊等が新聞等でも取り上げられています。

現在の観光先進国に向けた歩みをとめず、今後永続的に観光先進国であり続けるためには、負の影響にも向き合いながら、地域にとって持続可能な形で受入環境を整備していく必要があります。

そこで、国土交通政策研究所では、今後望まれる持続可能な観光政策のあり方の検討に資することを目的として、国際機関や海外の観光先進地域の取組みに着目し、地域住民の目線を中心に外国人旅行者の急増に伴う問題及びその対応策等の調査を実施しました。

調査は、以下の流れで実施しました。

1. 「持続可能な観光」の概念を整理した上で、持続可能な観光における視点等を整理しました。

ここでは、国際機関における「持続可能な観光」の定義や持続可能な観光に関する指標の開発の系譜を整理しました。その上で、「持続可能な観光」に係る先行研究等を調査し、「持続可能な観光」に関わる論点や視点、課題等を整理しました。

2. 我が国における持続可能な観光に向けた課題について、以下の手順で整理しました。

(1) 近年の訪日外国人観光客増加に伴い我が国の観光地で発生している問題事例を新聞記事等から収集し、持続可能な観光に関する視点等に沿って整理しました。

(2) 我が国の自治体やDMOの観光関連計画における施策等を、(1)と同様に、持続可能な観光に関する視点等に沿って整理しました。

(3) (1)(2)で整理した結果を比較・分析することにより、「我が国における持続可能な観光に向けた課題」を整理しました。ここでは、既に顕在化している問題等に対して、我が国の観光施策において不足している視点や今後必要となる視点等の課題分析を試みました。

3. 上記2.で整理した課題への対応策として、海外における先進的な取組事例を調査しました。

2.で整理した我が国における持続可能な観光に向けた課題に対し、既に何らかの対策に取り組んでいる海外事例を調査しました。まず、文献調査を通じて取組内容等を概観したのち、そのなかから2~3地域を選んで現地ヒアリングを行い、深掘り調査をしました。

4. 我が国における持続可能な観光政策のあり方を検討していく上での示唆をまとめました。

(1) 総合的な視点・目線と総合的な施策・取組み

我が国が観光先進国を目指し、持続可能な観光としていくためには、今後は、観光は、経済だけでなく、地域社会や環境にも影響を及ぼす(ポジティブ・ネガティブともに)ことにも着目し、環境政策等他分野の施策とも連携しながら、経済、地域社会、環境といった視点で取り組んでいく必要があると考えられます。また、その際、マネジメントの視点も重要であると考えます。

また、「観光客」や「観光事業者」といった目線に加えて、「住民」や「観光従事者」、「地域産業」や「環境団体」など様々な主体の目線も考慮するとともに、そうした利害関係者との調整機能が必要と考えられます。

加えて、観光政策の推進にあたっては、今後は、都市計画等様々な分野の、規制・課税等様々な手段・手法を活用しながら施策を検討していく必要があると考えられます。また、観光客の分散等には、広域・地域、地域相互間、官民、異業種間等他との連携が必要であると考えられます。なお、その際、課題に応じて柔軟な組織体制を組むのも一案です。

(2) 問題の個別性と網羅的なチェック機能(データに基づくマネジメント)

発生する問題は、観光地の地域特性・プロファイルによって大きく異なり、講ずべき対応策も、地域における観光の位置づけ等によって大きく異なるため、各地域において個別に問題を抽出し、対応策を検討していく必要があると考えられます。

また、このように、観光地で発生する問題や有効な対応策は個別性が高いため、網羅的な項目で観光地の状況をチェックし、データに基づきマネジメントすることも検討していく必要があると考えられます。

(3) ネガティブ・インパクトへの早期着眼と受入策と抑制策の組合せによる質の高い観光

例えば、環境問題などのように、一度発生すると将来的に致命的な問題になる可能性もあることや、海外でも既に顕在化している問題事例もあることなどから、訪日外国人観光客の一層の増加に向け、今後はネガティブ・インパクトにも着眼しておく必要があると考えられます。

また、観光は地方創生、経済効果等様々な効果が期待できるものですが、観光客が急激に増えたり、増加しすぎたりした場合、地域社会にネガティブ・インパクトを及ぼす可能性もあります。今後、訪日外国人客を一層増やしていくなかでは、訪日外国人客の量だけでなく質やネガティブ・インパクトにも着目しつつ、経済、地域社会、環境等への影響も踏まえながら、受入策と抑制策を組み合わせて、質の高い観光を実現していく必要があると考えられます。

調査の詳細については、「持続可能な観光政策のあり方に関する調査研究(概要版)」、「持続可能な観光政策のあり方に関する調査研究(完全版)」をご覧ください。

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