訪日意欲が高い台湾市場に向けて、ウィズ・アフターコロナに求められる旅行とは

2021年12月27日 (月)

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世界的な新型コロナの感染拡大を受け、2020年3月以降、台湾から海外への団体旅行送客が無期限で禁止されています。日台往来再開の見通しも立たないことから、JNTOではコロナ感染拡大以降、WEBやSNSを通じた情報発信、旅行博覧会出展、東北観光セミナー・旅行商品プランコンテストなどの事業を展開してきました。しかし、台湾政府の迅速な対応などが功を奏した結果、感染状況が落ち着く兆しを見せてきたことを受け、延期されていた旅行博が順次開催されています。こちらの記事では、コロナ禍での台湾における訪日旅行への期待感や、開催された旅行博の様子などをお伝えします。

目次

台湾におけるコロナ禍と経済の現状

厳格な防疫対策により早期にコロナを沈静化

台湾では2021年5月に感染が拡大。一時は1日500名超の感染者が出ていましたが、厳格な防疫対策により、8月25日には108日ぶりに新規感染者数がゼロとなりました。その後も感染者数は低い水準で推移しており、現在の感染レベルは、台湾政府が設定する4段階中、下から2番目の第2級(2021年12月21日時点)。早期にコロナを沈静化できたと言えます。

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台湾における感染状況(2021年5月~8月)

台湾の感染対策では、マスクの常時着用や検温・消毒の実施などに加え、各施設や店舗を利用する際に実名登録制での入店が課せられています。入店する際に、スマホで施設が掲示するQRコードを読み込むとことで、訪問した日時や場所、電話番号、名前などの個人情報が政府へ通知されるシステムです。国内旅行にあたっては、通信キャリアや自治体と提携してビッグデータを活用。観光地の人出状況を発信するツールを設け、混雑した観光地への訪問を避けるよう促しています。

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QRコードを各施設・店舗の入り口付近に設置

感染収束に伴い、延期されていた旅行博も順次開催されました。多くの人出で賑わう様子から、旅行意欲の高さが感じられます。

経済は企業も世帯も好調な一方、格差は拡大

台湾経済は、コロナ禍においても好調を維持しています。2021年のGDP成長率は%の予測で、過去11年間で最高となっています。ただし、景況感は企業の規模や業種によって差が出ており、2020年台湾大型企業ランキングの上位5,000社では純利益合計が過去最高となったのに対し、中小企業の81%ではコロナで減収。

また、2020年の1世帯あたりの平均可処分所得は約424万円と、前年比で1.9%増。その一方で、1世帯あたりの平均消費支出額は約320万円と前年比で1.7%減少。これに伴い、平均貯蓄額は約104万円と前年比で14.8%増え、平均貯蓄率が24.5%まで増加し、過去20年間で最高となりました。しかし1世帯の平均可処分所得は上位20%と下位20%との間で格差が6.13倍にも広がり、過去8年間で最大を記録。企業間のみならず世帯間でも格差が拡大していることがわかります。

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台湾における海外旅行への意欲

台湾でのワクチン接種について、2021年5月の感染状況の悪化などにより一時期ワクチン不足が発生して接種率が上がりませんでした。その後6月から10月にかけて、日本から合計6回、420万回分のワクチンが供給されたこともあいまって、2021年12月19日時点で、1回目の摂取率は約80%、2回目の摂取率は約66%まで上昇しました。台湾域内のワクチン接種率は高まっているものの、世界各国でのオミクロン株発生もあり、台湾衛生福利部長(厚労大臣に相当)は水際対策の緩和については引き続き各国感染状況の注視が必要としています。

2021年7月に、台湾大手旅行会社・雄獅旅行社が運営する生活情報サイト「欣傳媒(Xinmedia)」が「コロナが落ち着いたら、何をしたいか」とアンケート調査を行ったところ、1位が「旅行」で54%と断トツでトップ。「ワクチン接種後、いつ海外旅行に行きたい?」という質問に対しては、「22年冬休み(2022年1、2月)」が40%、「22年夏休み(2022年7、8月)」が約20%とあわせて全体の約6割を占めています。“アフターコロナ旅行意向に関する調査”(2021年8月発表)では、「最も行きたい国」として日本と回答した人が43%(2位は中国大陸で8.7%、3位はチェコの4.6%)にも上りました。往来できない状況下でも訪日旅行意欲は非常に高い状態を保っています。

また、前述の日本からのワクチン供与、東京オリンピック・パラリンピック開幕式での「台湾」としての選手団紹介など、2021年は日台間の友好関係を強める出来事が数多く、「往来再開後は日本で爆買いしよう」という声がSNS上に溢れ、将来的な訪日客の獲得が期待できる状況です。いまだ往来再開の見通しは立ちませんが、SNS等での一般消費者向け情報発信は継続しつつ、旅行業界に対してはツアー造成のための視点から各種情報を提供し、来る往来再開に備えましょう。

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コロナが落ち着いたら、何をしたいですか?
(出典:キャセイ・フィナンシャル・ホールディングス 7/20アンケート調査)

 

ウィズコロナの下で台湾の人々が期待する旅行とは

日本の自然や鉄道、アート性の高いコンテンツが人気

海外旅行に行く目的は、「四季折々の美しさ(45%)」「美しい自然(42%)」「文化イベント(36%)」「グルメ(32%)」が多く、「ショッピング(18%)」を大きく上回っています(欣傳媒(Xinmedia)調べ)。その時、その場でしかできない体験を求める「コト消費」が優位な状況です。JNTOでは、将来の訪日意欲喚起のためFacebookとInstagramで毎日情報を発信していますが、自然や鉄道、アート性の高いコンテンツに人気が集まる傾向が見られています。

<Facebookにおける人気の投稿>

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左:『山形県の大自然を象徴する、県内最高峰の「鳥海山」』(リーチ数14.7万/いいね3,500)
中央:『台湾を愛し愛された喜劇王、志村けんさんの銅像がある西武新宿線東村山駅』(リーチ数11.6万/いいね2,200)
右:『目でも舌でも楽しめる、食べられる芸術「田んぼアート」』(リーチ数9.7万/いいね1,400)

 

<Instagramにおける人気の投稿>

『美しい日本海を背景に鉄道が走り抜ける、鉄道ファンの聖地「道の駅 ゆうひパーク三隅」』

 

旅行業界が求めるのは安全性に関する情報

コロナ禍が収束しないうちの海外旅行については、「安全のために旅費が高くなること」に対して半数以上が同意しています。また2019年は個人旅行が7割を占めていましたが、コロナ禍で「団体旅行の方が保障されていると思う」と考える人も多く、ウィズコロナの下では小規模で添乗員等の配慮が行き届いた安心な団体旅行を求める層が増えることが予想されます。コロナ禍で旅行業界が最も求めているのは、自治体や各施設・飲食店等における防疫対策・ルール等、安全性に関する情報です。コロナ後のツアー造成に向けて、以下の内容についての提供が有効となります。

(旅行会社からのコメント)

・日台双方の水際対策によるが、22年3~4月の桜の時期での往来再開を期待。
・今一番欲しいのは外国人旅行客受入可能な宿泊施設、飲食店の最新リスト。往来再開となればすぐ予約が埋まるため、商品造成準備に向けて事前にリストを入手したい。
・ツアーやバス乗車人数等の上限規制有無、ミニツアーに対する適用可否等、ツアー造成のための具体的な情報が欲しい。(ツアー造成、送客に係る支援金情報も、コロナ前と変わらず引き続き求められる)
・コロナ対応医療機関リストや受診までの流れ等、緊急時の対応が知りたい。
・顧客からの問い合わせが多いのは、北海道、東京、大阪。一方でウィズ・アフターコロナ期は密を避けた地方、アウトドアを選好する傾向がある。

 

JNTOの取り組み「旅行博」

台湾域内のコロナ感染拡大で延期されていた旅行博ですが、感染収束を受け、2021年10~12月には順次開催されています。10月開催の台中国際旅展(ATTA)では、出展者数69(2020年:118)と規模が縮小されましたが、振興五倍券需要取り込みに向けた台湾域内旅行PRブースを中心に、昨年の約78,000人を大きく上回る約14万人の来場者が詰めかけました。日本からの出展はJNTO含め昨年同様の3団体でしたが、ビジット・ジャパン(VJ)ブース来訪者数は約47,000人(昨年約41,000人)と増加、変わらぬ日本人気が窺えます。
*:個人消費促進のために発行される、観光を含む用途に使用可能なクーポン券。

会場では来場者への消毒・検温・実名登録実施のほか、出展者へのPCR検査陰性証明もしくはワクチン接種証明書の事前提出義務付け、出展ブース毎の収容可能人数の上限設定等の対策が取られました。

VJブースでは安全・安心PRのほか、『日本旅行の予習』をテーマに食・アウトドア等、さまざまなカテゴリーの体験コンテンツや、人気の観光列車について情報を発信しました。またブース内で抹茶体験も実施し、高い人気を集めました。日本の各自治体・企業のステージイベントは、スキー場等、日本からの中継やギブアウェイ活用によるPRに多くの来場者が見入っており、「日本らしさ体感/今の時期ならでは/日本製・実用的なノベルティ」が興味喚起のポイントとなっていました。

来場者からは、日台往来再開時期や周遊パス購入方法等、具体的な情報を求める質問が多く、早期の訪日実現への高い期待が感じられました。コロナの影響で休業中もしくは情報収集のみという旅行会社も多数ありましたが、全社共通して、海外旅行解禁後の送客先は日本が最優先と、商品造成に向けた情報を求めています。ただし、紙媒体資料の情報は、持ち帰らないという来場者もいました。台湾では、IT大臣として日本でも著名なオードリー・タン氏を中心にSDGsへの取り組みを推進しており、中でも環境負荷への関心が高くなっています。環境負荷軽減の観点からもパンフレット等はデジタルへの移行が望ましいと言えます。

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VJブースでの抹茶体験の様子

 

JNTO東北関連事業

これまでに東北地域の自治体・DMOや民間事業者と連携し、2014年に観光庁事業として「東北六県感謝祭」という名でイベントを開始。2015年に「日本東北遊楽日」と改称したうえで、2016年以降はJNTO事業としてこれまで台湾でイベントを開催。東北の祭りや絶景紹介、グルメ・お酒の試飲試食等PRを通じて、台湾一般消費者に対して東北の観光魅力を体感してもらい訪問促進を図ってきました。2020年度はコロナの影響で中止になりましたが、2021年3月には日本台湾交流協会主催の日台友情イベントと東北地域が連携してPRを行うなど、往来できない状況下でも、“オール東北”による台湾での東北魅力発信は継続的に行われています。

また台湾の“まだ知らない日本”を求めるリピーター需要取り込みや未訪日層獲得に向けて、新たな日本の魅力を発掘・発信し訪日促進を図るため、台湾旅行会社を対象に毎年「訪日旅行セミナー」および「訪日旅行商品プランコンテスト」を実施してきました。震災から10年となる2021年は、対象地域を東北に限定。海外旅行解禁後の台湾から東北への早期訪問回復を目的に行われました。

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『日本東北遊楽日』イベントの様子(2019年)

「訪日旅行セミナー」では、東北におけるコロナ感染防止への取り組みやウィズ/アフターコロナを踏まえた新たな観光コンテンツ等について、各自治体が東北からの生中継も交えながら紹介。セミナー会場では郷土料理や日本酒、菓子類も提供し、商品企画に役立ててもらうべく、観光スポット等に留まらない幅広い東北の魅力を発信しました。

訪日旅行商品プランコンテストでは、優れたプランを提案した旅行会社を選定・表彰することで、旅行会社の訪日旅行商品販売意欲向上を図っています。2021年4~5月にかけて行ったコンテストでは、全25プランの応募の中から8プランを選定、9月に受賞社を招いての表彰式を開催しました。

プランは「Ⅰ独創性・斬新さ/Ⅱ自治体等地元観光関係者との連携/Ⅲ商品販売・集客力」の3点を基準として審査。さらに少人数での参加や密にならない行程等ウィズ・アフターコロナにおける旅行ニーズの反映もポイントとして選定されています。受賞社からは、「(ワクチン不足の台湾において)ワクチンを打つより嬉しい」「これから毎年応募して、受賞を目指したい」といったコメントの他、「コロナ禍においてこのようなイベントは大変ありがたい」との声が聞かれ、厳しい環境下にある台湾旅行会社のモチベーションアップと関係強化につなげることができました。今後、受賞プラン詳細をJNTO台湾市場サイトに掲載、一般消費者向けに新しい東北の魅力を発信する予定です。

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「訪日旅行セミナー」の様子

 

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