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ロシア人は旅行好き? 知られざるロシア人の旅行意欲とマーケットの多様性

ロシア人は旅行好き? 知られざるロシア人の旅行意欲とマーケットの多様性

ロシア人は旅行好き? 知られざるロシア人の旅行意欲とマーケットの多様性

皆さんは、ロシアが世界第6位の国際観光支出大国だということをご存知でしょうか。ロシア人の出国率は約30%で、日本人の約17%を大きく上回ります。ロシア人の旅行熱はコロナ禍においても衰えることはなく、2020年8月の海外旅行解禁以降、観光客の受入を再開した国にロシア人旅行客が殺到している状況です。また訪日旅行市場に関しては、国土が東西に広いため、ロングホールとショートホールが入り混じる、他に類を見ない市場構成となっており、地域ごとに競合や『響くコンテンツ』も異なります。今回はそんなロシア市場の面白さについて、日本に近い極東地域を中心にご紹介します。

「渡航解禁」を心待ちにしているロシア市場

ロシア人にとって、旅行は人生に欠かすことのできない楽しみのひとつです。

過去にJNTOが実施した「余暇支出の志向に関する調査」では、「外食」や「ショッピング」をおさえ、「旅行」が支出目的の第1位となりました。

この傾向は、コロナ禍においても変わっていません。2020年7月に国内旅行が解禁されると、ソチ等の人気観光地は連日大混雑となりました。また、同年8月、トルコ、タンザニアの渡航解禁を皮切りに海外旅行が再開した後は、パンデミック以前は注目の低かった国も含め、多くのロシア人旅行客で賑わっています。2021年第1四半期における出国ロシア人数は約266万人。これは、パンデミック直前にあたる2020年同期比の約35%に相当します。

注目すべきは、その渡航先です。トップ10入りしたエジプト、モルディブ、タンザニアなどの国々は、以前はロシア人にとってマイナーな旅行先でしたが、旅行可能な目的地が限られる中、これらの国々を訪れる人が急増しました。

2021年第1四半期ロシア人出国者数 出典:連邦国境警備局の資料に基づき、ロシアツアーオペレーター協会(ATOR)が集計

2021年第1四半期ロシア人出国者数 出典:連邦国境警備局の資料に基づき、ロシアツアーオペレーター協会(ATOR)が集計

ロシアにおいては、「コロナウイルスの感染を恐れて楽しみを自粛する」という態度はあまり見られません。観光客の受入を再開した国から、順次、多くのロシア人旅行客が訪れ始めており、人々は、次なる「渡航解禁」のニュースを心待ちにしています。

 

地域ごとにニーズが大きく異なるマーケット特性

ロシアの国土は東西に広く、国内の時差は最大で10時間にも及びます。

地域ごとに「日本との距離感」や「競合の状況」が大きく異なるため、ロシア市場においてプロモーションを実施する際には、「どの地域から人を呼びたいのか?」というターゲティングを明確にし、各地域のニーズに合ったコンテンツを準備することが大切です。

訪日誘致の観点から見ると、ロシア市場は大きく3つのエリアに分類できます。それぞれのマーケット特性は以下のとおりとなっています。

・欧州ロシア:人口約1億1,000万人(全体の約74%)。日本まで約9時間半=ロングホール。

モスクワやサンクトペテルブルグ等の大都市を有するため人口が多く、所得水準も高い。富裕旅行需要も存在。
ヨーロッパが近く(平均3~4時間)、欧州方面への航空網が充実。
「日本=未知、エキゾチック、憧れの地」というイメージであり、初訪日層が多い。
主な旅行先はトルコ、欧州、中国、タイ等。

・シベリア:人口約3,000万人(全体の約20%)。日本まで約6~7時間=ミドルホール。

ロシア第3の都市ノボシビルスクを有し、中長期的な成長が期待できる市場。
2018年に日本への直行便が新規就航したばかりで、日本の認知度はまだ低い。
主な旅行先はトルコ、中東、中国、タイ、ベトナム等。

・極東ロシア:人口約800万人(全体の約6%)。日本まで約2時間半=ショートホール。

ウラジオストク等、中規模人口都市が多い。自治体交流が盛ん。
その地理的特性からマーケットの性質は欧米よりもアジアに近く、東アジア・東南アジア方面への航空網が充実。
近年、日系エアラインの新規就航が相次ぐ。
主な旅行先は中国、韓国、タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピン等。

ロシア市場の分類図

ロシア市場の分類図

 

極東地域は日本に関する知識・経験が豊富

極東地域は、人口規模こそ小さいものの、その地理的特性から訪日旅行市場を考える上では欠かせないマーケットとなっています。

そもそも極東地域の人々にとって、モスクワなどロシア国内の大都市は遠く(フライト8時間以上)、時差も大きい一方で、アジアは地理的に近く時差も小さいことから、日本を含む東アジア・東南アジアの国々は「気軽に訪問できる旅行先」として親しまれています。

日本も例外ではなく、ビザの発給件数や航空座席供給数を見ても、極東ロシアには欧州ロシアに匹敵するほどの訪日需要があることがわかります。

地域別人口比率/ビザ発給比率/航空座席供給比率

地域別人口比率/ビザ発給比率/航空座席供給比率

極東地域においては、日本の食材や製品が広く流通しており、日本語教育が盛んで、訪日経験のある人も比較的多く存在することから、他の地域に比べて日本に関する知識・経験が豊富です。

そのため、極東地域でプロモーションを実施する際には、単なるイメージ広告ではなく、地方の観光ルートや周遊パスの紹介、テーマ(ウインタースポーツ、温泉など)に沿ったセミナーを実施するなど、一歩踏み込んだ内容の情報提供が求められます。

コロナ禍において旅行可能な目的地が限られる中、特に極東の旅行会社からは、訪日旅行の早期再開を望む声が多く寄せられています。下記に一例を紹介します。

(極東地域の旅行会社の声)
・訪日旅行商品の販売が叶わない中でも、顧客の日本に対する興味・関心を維持するため、現地の日本食レストラン等と連携し、現地にて花見や和食をテーマにしたツアーを企画した。
・極東地域は歴史的に北海道や東北、日本海側の都道府県(新潟、富山、鳥取等)とのつながりが深く、以前は極東とそれらの地域を結ぶ直行便やフェリーが運航していたことから、日本の「地方」に親しみを感じる人が多い。
・極東地域はレジャーに適した山がなく、冬は寒さが厳しいことから、最近では訪日スキー旅行の需要も高い。

 

JNTOモスクワ事務所の事業紹介

JNTOでは、モスクワ事務所の他、極東地域の2都市(ウラジオストク、ハバロフスク)にレップを設置し、日々連携を取りながら各種事業を運営しています。

・現地旅行会社向けウェビナーの実施

2020年度はコロナ禍であることを鑑み、航空会社や訪日旅行商品の取扱いのあるツアーオペレーター等の協力のもと、全6回のウェビナーを実施しました。ウェビナーのテーマは、極東地域で人気の高い山陰地方や、沖縄のビーチリゾート、お得な周遊パス(ロシア発行の免許証では日本国内で運転することができないため、公共交通機関の需要が高い)の活用方法などです。

・現地テレビ局と連携した訪日旅行番組の制作

2017~2020年にかけて、毎年、極東地域のテレビ局クルーを日本に招請(*)し、日本在住のロシア人ガイドとともに複数の観光地を巡る旅行番組 “Японские каникулы” (=日本の休日) を制作しました。主な取材先は松本、金沢、高山、大阪、伊勢志摩、姫路、北海道、福島、茨城など。コロナ禍においては、極東地域やシベリアの複数の地方都市において、同コンテンツの再放映を行いました。

*:2020年は、コロナ禍で招請が叶わなかったため、日本在住のロシア人ガイドをレポーターに起用。

訪日旅行番組のタイトル

訪日旅行番組のタイトル

大内宿の紹介シーン

大内宿の紹介シーン

・Travel Fair出展

「Travel Fair」は、毎年9月にウラジオストクで開催される一般消費者向けの旅行イベントで、JNTOも日本ブースを出展しています。

2020年度は完全オンライン開催となったため、ゲストスピーカーを招いたラジオ番組でのトークセッションや料理番組への出演等を通じて、日本の観光魅力をPRしました。

2021年度はオンライン(ラジオ)×オフラインのハイブリッド型で開催。オフライン部門では、日系航空会社とともに日本ブースを設営し、訪日旅行パンフレットを配布したほか、「コスプレショー」や「折り紙体験」、来場者に対するプレゼント抽選会などを実施しました。

Travel Fairの様子

Travel Fairの様子

Travel Fairの様子

Travel Fairの様子

Travel Fairの様子

Travel Fairの様子

当記事 では一部のプロモーション活動のみを掲載しており、JNTOモスクワ事務所では今後も幅広くプロモーション活動を行っていく予定です。