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  • インバウンド再興へ向けて。ニーズの変化に合わせたプロモーションと周遊ルート形成の取り組み(関西観光本部の取り組み)

関西観光本部は2府8県を対象とした、関西唯一の広域連携DMOです。関西の自治体、経済団体、観光振興団体、観光関連を中心とした民間事業者が参画し、関西広域でのインバウンド観光の振興に取り組んでいます。関西周遊や受入環境整備の推進は本サイトでも紹介しました(https://action.jnto.go.jp/casestudy/2121)。こちらの記事では、コロナ禍で甚大な影響を受ける中で、今後を見据えて実施しているインバウンド施策について、関西観光本部の安東事務局次長、桑原デジタルマーケティング室長、藤本プロモーション部長 にお話を伺いました。

公式サイト
https://kansai.or.jp/

目次

関西全域の受入環境整備に注力し、訪日外国人客数が増加する中でコロナに直面

―コロナ以前の、関西観光本部のインバウンド施策について教えてください。

安東氏「関西観光本部の対象地域(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、徳島県、福井県、三重県)では都道府県別訪問率ランキング 第2位の大阪府、第4位の京都府の2地域に観光客が集中していました。インバウンドによる経済効果を関西全体で享受するためには、この2地域以外にも宿泊滞在してもらえる魅力的なエリアづくりが必要です。そこで、2025年に開催される『大阪・関西万博』を目途に、関西の10府県全体が新たな滞在エリアとして認知され、旅行者に選ばれることを目標として、インバウンドプロモーションの総合プロデュース、交通系ICカード『KANSAI ONE PASS』発行など、各種施策に取り組んできました。

こうした取り組みの成果もあって、訪日外国人旅行者数は、2018年は1,240万人*、2019年は1,320万人*と増加傾向にあり、東京2020オリンピック・パラリンピック大会や大阪・関西万博に向けてさらに伸びていくことを期待していました」

*:関西の数値は観光庁「訪日外国人消費動向調査」の近畿運輸局管内への訪問率を用いて関西観光本部にて推計。

関西観光本部の関西周遊を促す取り組みや受入環境整備の推進などについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。

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旅行者に選ばれるエリアづくりと環境整備で周遊促進を目指す(広域連携DMOの取り組み2)

JNTOでは訪日外国人旅行者の地方誘客を促進させるため、JNTO内に地域向け窓口を設置し、広域連携DMOをはじめとする地域の皆様との連携に力を入れています。関西唯一の広域連携DMO、関西観光本部も連携先のひとつ。今回は同本部地域戦略室長の森氏に、訪日外国人旅行者の関西周遊を促す取り組みや受入整備の推進などについてお話を伺いました。

―コロナ禍になって、地域の観光産業にはどんな影響が生じたでしょうか?

安東氏「2020年にはコロナ禍で訪日外国人旅行者数が411万人にまで落ち込みました。とりわけ、関西全体の9割を占めていた大阪、京都では大きなダメージを受けています。その他の県でもインバウンド誘致に向けて意欲的な取り組みを行っていましたので、甚大な影響を受けています。関西観光本部は、関西の各府県、政令市、経済団体、観光団体、国の地方支分部局など官民の62団体および事業者約230社が参画しており、企業、団体会員からの会費と自治体からの負担金で運営しているのですが、『コロナの影響で売上が激減している』とおっしゃる会員も多くいらっしゃいますし、各自治体とも法人関係税など税収の大幅な落ち込みに加え、コロナ対策費用が財政を圧迫しています。率直に言って『観光に取り組みたいが、その余力がない』というのが、観光関連事業者や自治体の実情です」

 

コロナ禍で増加した、「癒し」を求める外国人へ関西の魅力を発信

―コロナの影響でインバウンドプロモーションの機会が制限される中、関西観光本部ではどんな取り組みを行ってきたのでしょうか?

桑原氏「コロナ禍の影響によって、旅行者のニーズがどのように変化したのかを調査しました。コロナ前の2019年に5ヵ国(米・豪・英・仏・独)計 3,000 名の訪日検討層を対象に行ったネット調査で『ロングホール旅行に求めることは何ですか?』と聞いたところ、『食』『自然』『文化』がトップ3を占めていました。そしてコロナ禍の2020年秋に行った自主調査で『あなたが海外旅行で特に体験したいと思うものは?』と質問したところ、『世界遺産観光』『ガストロノミーツーリズム』などを抑えて、『文化観光』が圧倒的な人気を集めたのです。さらに文化観光を『巡礼』『瞑想』『感謝・祈り』『精神』『侘び寂び』『癒し』の6テーマに細分化して質問すると、『癒し』に対する関心が最も高いという結果が得られました。やはりコロナ禍におけるストレスフルな状況下では、多くの人たちが『癒し』を求めているのですね。

そこで現在では、こうした調査結果を踏まえて『自然への回帰』『自分に向き合う』『スピリチュアルな要素・マインドフルネスな要素を求める』などに対応した動画配信プロモーション、スペシャルサイト*への流入を中心としたデジタルプロモーションに取り組んでいます」

*: Spiritual KANSAI / The KANSAI Guide – Exciting Journey

―動画配信プロモーションについて、詳しく教えてください。

桑原氏「私たちは2018年度から、海外旅行検討層の渡航地として関西を選んでもらうための動画配信に注力してきました。コロナ禍にあっては、多くの人たちが在宅での生活を余儀なくされていますので、コロナ禍で在宅率が高い時期を、多くの人たちに動画を視聴してもらうチャンスと捉え、『Dream online』と銘打った動画視聴促進プロモーションを実施しました。

第1弾は2020年7月~9月の2ヵ月間で、欧米豪の三大関心テーマである『自然』『文化』『食』を訴求することで、500万回視聴を超える反響を得ました。第2弾は2020年10月~3月、事前調査で最高の需要度が検証された『文化観光』をテーマに配信したところ、813万回もの再生回数を記録し、ターゲットに据えた欧米豪・東アジア・東南アジアの海外旅行検討層に対して合計1,300万回視聴を獲得することができました。しかしながら、我々にとって動画再生回数は中間指標に過ぎません。動画を視聴した人が、如何に態度変容を起こすか。つまり、動画視聴を通じて関西への訪問意向を高めることが重要なのです。

効果検証のため、動画を視聴してくれた訪日検討者を対象に、『あなたは関西に行ってみたいと思うか』と質問したところ、『行ってみたい』と答えた人が視聴前は30%前後だったのに対し、視聴後は80~90%と伸長し、この動画が『関西を訪れてみたい』という気持ちを喚起するための有効なツールであることが確認できました。この結果を受けて、引き続き、海外旅行検討層の需要度が高い観光テーマを動画で訴求し、関連サイトへ誘導することで、関西への訪問意向を高めていきたいと思っています」

下記の動画は動画配信プロモーションの一例です。こちらのWebサイト では他の動画も掲載されています。


関西を8つのルートでブランディングし、新たな「宿泊型滞在圏」を形成

―広域観光周遊ルートの形成について、詳しく教えてください。

安東氏「冒頭でもお話ししたように、関西では、大阪と京都に滞在客が集中してしまう二極化が課題です。そこで関西観光本部では大阪市、京都市を拠点に関西一円を周遊する『宿泊型観光滞在圏』の形成に取り組んでいます。多彩な観光テーマを有する関西を際立たせるために、地域の特色を生かせるよう関西を8つのエリアに分け、たとえば山陰海岸なら『海岸美と恵み』、福井~琵琶湖なら『水の育む文化』というように各エリアにテーマを設けました。その上で各エリアの自治体、地域づくり法人、企業などと協力して地域の持つコンテンツを洗い出し、8つのテーマに基づく旅行商品を開発。 “THE EXCITING KANSAI ” というブランドで、インバウンド再興に備えた取り組みをスタートしました。

コロナを経て、『自然への回帰』や『自分を見つめなおす旅』など、旅行のトレンドも変化しています。“THE EXCITING KANSAI” は、こうしたニーズの変化に応えるもので、訪日を検討している外国人に選ばれるデスティネーションとしての『KANSAI』のプラットフォームとなります」

THE EXCITING KANSAI

「THE EXCITING KANSAI」のエリア分布図。8つのエリアにそれぞれのテーマが設けられている。(THE EXCITING KANSAI より)

― “THE EXCITING KANSAI”のような旅をガイドする人材の育成も行っているそうですね。

安東氏「はい。『通訳案内士・地域エスコートガイドツアー造成支援事業』を実施しています。広域でテーマ性の高いツアーでは、従来のような各地域でのガイドではなく、出発地から終着地までエスコートし、地域の魅力や歴史的な背景について深い知識で案内できる人材が不可欠です。そこで、通訳案内士の方々に得意分野、活動エリアなどを登録していただき、研修を通じて自分自身でガイドツアーをつくり、販売できるスキルを身につけるための支援を実施しています。ガイドツアーが造成された場合、関西観光本部が構築する専用サイトに掲載します。魅力的なガイドツアーが関西一円に生まれることで、関西地域の魅力をさらにアップすることができればと期待しています」

 

コロナ禍での気づきを生かし、インバウンド観光促進と地域振興を促進

―コロナ禍にあっても前向きになれた点がありましたら教えてください。

藤本氏「観光関連事業者やDMOの方々は、コロナ禍で非常に苦しい思いをされています。一方で、『国際往来再開に向けて、訪日外国人旅行者の受け入れの環境整備をしたい』、あるいは『こんな状況だからこそ、これまであまり注力していなかったB to Bの商談をしたい』というポジティブなご要望を数多くいただいたことで、私たちも前向きな気持ちになれています。その代表例が近畿運輸局様と共同で開催した『台湾オンライン大商談会』です。

2019年度までは高雄、台中、台北の3都市に関西10府県の事業者をお連れして商談会を開催してきました。2020年度も、当初は現地での開催を目指していたのですが、日本国内においてコロナ感染拡大の第2波、第3波に直面し、オンライン開催にシフトしました。初めての試みということもあり、どれくらいの方々が参加してくれるのかとても心配していたのですが、台湾からは59企業、19校の学校関係者が参加、関西からは53団体の観光関連事業者・DMO、14府県政令市など多くの参加をいただき、1,020回もの商談が行われました。終了後には、台湾側から『コロナ後の商品造成のイメージが湧いた』『関西14府県政令市の情報をまとめて知ることができた』、また関西側からも『経費と時間の有効活用ができた』など、ポジティブな評価をいただきました。今後は中国でのオンライン商談会も計画しており、現地での開催が可能となった後もオンライン開催を選択肢のひとつとして事業を検討していきたいと考えています」

―最後に、インバウンドに携わる日本全国の地域の方々へ、メッセージをお願いします。

安東氏「コロナ以前は、目先の訪日外国人旅行者への対応に追われ、自分たちの足元を見つめる余裕がありませんでした。しかし今回あらためて関西の各地域に目を凝らしてみると、これまで気づかなかった魅力が数多くあることに気づかされました。日本全国には、人や文化など、まだまだ未開発の観光資源がたくさん眠っています。全国でその掘り起こし、磨き上げをこの時期に取り組むことにより、日本の魅力が向上すると思っています。一緒に頑張りましょう」

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デジタルとアナログを融合し、観光で地域を豊かにする(山陰インバウンド機構の取り組み)

山陰インバウンド機構では、2018年に「ゲートウェイ戦略」を掲げ、「すでに来日している=日本に関心がある外国人」をターゲットにプロモーションを展開。本サイトでもその取り組みを紹介しました。(https://action.jnto.go.jp/casestudy/1710)しかし、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で訪日外国人旅行者は激減し、甚大な影響を受けています。ただ、そのような状況の中でも、アフターコロナを見据えた中長期的な取り組みが進んでいます。こちらの記事ではコロナ禍でのインバウンド施策について、山陰インバウンド機構の福井代表理事にお話を伺いました。

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2017年設立の木曽おんたけ観光局は、中山道文化と木曽路ウォーキングに加え、御嶽山信仰といった資源を観光に活かし、B to Bプロモーションを主軸に誘客を実施。本サイトでもその取り組みを紹介しました(https://action.jnto.go.jp/casestudy/1769)。新型コロナウイルスの影響で訪日外国人旅行者は激減したものの、アフターコロナを見据えた新たな取り組みを推進しています。こちらの記事では、コロナ禍でのインバウンド施策について、木曽おんたけ観光局でB to Bのセールス&マーケティングを担当する山田氏にお話を伺いました。

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