2017年12月19日

観光客が訪れたくなる町づくり

観光客が訪れたくなる町づくり

那覇市から東へ約9km、沖縄本島南部の東海岸に位置し、中城湾に面する与那原町は、沖縄本島でもっとも面積の小さな自治体です。その北側に隣接するのが、県内唯一の国立大学である琉球大学をはじめ3つの大学が立地する文教のまち、西原町。2020年9月に大型MICE施設の開業が決定したことで、MICEをきっかけにして、インバウンドを含めた観光へ進路を切ろうとしています。

対象地域
沖縄県
面積
与那原町5.18k㎡、西原町15.9 k㎡
総人口
与那原町19,568人(与那原町住民課帳2017/11/30)、西原町35,151人(西原町人口統計2017/10/31)
主要観光資源
与那原大綱曳まつり、軽便与那原駅舎、中心市街地まち歩き オリオン通り、与那原マリーナ、クリード西原マリンパーク、内間御殿、製造業関係の工場見学
公式サイト
http://www.town.yonabaru.okinawa.jp/
http://www.town.nishihara.okinawa.jp/
https://yonabaru.okinawa/

取り巻く環境

与那原町・西原町は戦後、那覇市のベットタウンとしてともに栄え、沖縄県でも人口が増加しているエリアです。以前は窯業(沖縄赤瓦)(与那原町)、ひじき漁(与那原町)、サトウキビ産業(西原町)が主な産業でしたが、今は飲食など住民向けのサービス産業が中心となっています。観光面においては近年取り組みを始めたばかりで、ビーチが1ヶ所、宿泊施設も民宿やゲストハウスが数件ある程度。町にはUターンで戻ってくる住民も多いのですが、求職者と求人企業のニーズが合わず、慢性的に人手不足に陥っています。

軽便与那原駅舎

受け入れの現状

近隣の北中城村では2016年7回、2017年8回~10回寄港(予定)とクルーズが寄港していますが、東海岸地域には団体旅行者を受け入れるインフラや観光資源に乏しいため、総じて西海岸地域に向かうための通過地点となっています。一方で、与那原マリーナは「開港」と呼ばれる外国貿易船の入港または出港が政令によって許されている港でもあり、クルーだけで6~10名乗るメガヨットなども時々(2016年6隻)停泊するものの、富裕層向けの宿泊施設やリゾートなどが周辺にないことから、メガヨットのオーナーはたいていの場合船を置いて先に帰国してしまいます。オーナー帰国後もクルーはしばらく船で滞在するため、滞在費は多少なりとも町の収益に繋がっていますが、富裕層の滞在費とは比較しがたく、経済的には機会の損失を招いているのが現状です。

また、那覇空港や主要観光地である西海岸地域からの公共交通アクセスがバスに限定されていること、東海岸地域内の公共交通が必ずしも整備されていないことから、外国人のみならず、日本人も含めて旅行者が訪問しにくいという交通インフラの課題もあります。

一方で、約440年の歴史がある与那原の夏の風物詩「与那原大綱曳まつり」が毎年開催されており、一日で1.6万人を集客します。沖縄在住者を主として多くの外国人も参加しています。

西原きらきらビーチではビーチサッカーやビーチバレーの大会が開催されるなど、スポーツが盛んです。ビーチ周辺施設を含むクリード西原マリンパークでは年間80万人以上の来場者が訪れているものの、その大多数は地元住民が占めており、観光客の誘致に至っていないのが現状です。

地域においては、地域住民との交流機会を創出している民宿や居酒屋などが外国人訪問者の人気を集めており、オーナーが外国人客を連れて周辺の居酒屋をはしごし、他の飲食店の売り上げにも貢献するような流れも見られるなど、今後のインバウンド活性化に向けた足掛かりとなるような取り組みも見られます。

抱える課題

インバウンドへの取り組みにあたり、与那原町・西原町が抱える課題としては、①交通インフラの未整備 ②宿泊施設の供給量不足 ③旅行者向けの受け入れ・サービス産業の未発達 などといったことが挙げられます。また、さらに今後は、①地域住民に対する、近隣の資源を案内できる程度の知識とホスピタリティマインドの向上 ②MICE施設開業に向けた、相互送客の仕組みづくりとユニークベニューの開発 ③マリーナ利用の富裕層が満足するような資源・サービスの開発 を重点項目として取り組んでいきます。

西原町きらきらビーチ

取り組み

2015年に、地域活性化を目的に本島東海岸の4町村が連携する「東海岸地域サンライズ推進協議会」を設置し、定期的に観光推進に向けた意見交換をしています。

現時点でほとんど外国人客の訪問がないので、事業化につながる取り組みはありませんが、与那原町では2016年度に整備した観光ポータルサイト「与那原ナビ」で多言語対応するなど、誘客に向けた情報発信をしています。観光ルートとしては、軽便与那原駅舎(展示資料館)、中心市街地まち歩き、与那原大綱曳まつり、オリオン通り(飲み屋街)、与那原マリーナ、赤瓦事業者による体験メニューを中心に取り組んでいます。

西原町でも観光ポータルサイトを作成。機械自動翻訳に頼りつつ多言語化を図っており、グルメ・ショッピング・街歩きなど観光や暮らしに関する情報発信を行っています。また、ボランティア団体による街歩きのガイドツアーや、西原町在住の高校生たちによる演劇、特産品PR、観光モニターツアーなど、地域ぐるみで西原町のPRに取り組んでいます。その他、西原町は県内1位の製造品出荷額を誇っており、その一部企業においては工場見学も行っています。しかしながら、全体的に観光予算が少ないことから、インバウンドの海外プロモーションまでは取り組みが及んでいないのが現状です。

12月21日に開催されるワークショップでは、「インバウド視点で見た地域資源・コンテンツの見直しとプロモーション意識の共有」をテーマに、①インバウンドにおける与那原・西原のポジショニングと課題意識の共有 ②与那原・西原のターゲットの設定 ③コンテンツの明確化 ④効果的なプロモーション手法の理解・方向性の共有 を達成目標として実施していきます。

 

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