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  • 道内連携とデータに基づくマーケティング活動の強化で課題解決へ(広域連携DMOの取り組み1)

JNTOは訪日外国人旅行者の地方誘客を促進させるため、JNTO内に地域向け窓口を設置し、広域連携DMOをはじめとする地域の皆様との連携に力を入れています。今回は、連携先のひとつである北海道の広域連携DMO、北海道観光振興機構の取り組みをご紹介します。震災を受けてのインバウンド対策や観光資源を活かしたプロモーションの工夫などについて、同機構マーケティング部担当部長の津田氏にお話を伺いました。

対象地域
北海道全域
面積
約83,457平方キロメートル
総人口
5,304,413人(平成31年1月1日現在)
主要観光資源
雪、花、グルメ、温泉、イベント
公式サイト
https://www.visit-hokkaido.jp/

目次

北海道観光振興機構とは

北海道観光振興機構は、北海道内全域の観光振興推進の中核を担う広域連携DMOです。地域団体、企業、関係機関などと連携しながら観光事業の振興ならびに地域の活性化、国際交流などに取り組んでいます。北海道観光公式サイト「GoodDay北海道」の運営や、海外でも人気のあるTVアニメ「ゴールデンカムイ」とのタイアップ企画など、さまざまなプロモーションを通して国内外に北海道の魅力を発信し続けています。

ファムトリップの実施を通じて海外に向け北海道の魅力を発信

震災を通して見えてきた、災害時インバウンド対策強化の必要性

2018年9月に北海道で発生した胆振東部地震。震災の影響は大きく、道内の宿泊をキャンセルした人は115万人、観光消費への影響額も356億円に上りました。こうした事態に同機構は、観光産業の早期回復と風評被害対策として、北海道旅行が最大7割引になる国の観光支援補助金制度「北海道ふっこう割」を推し進めました。

「ふっこう割の利用人数は111万人、宿泊数は延べ178万人。これらをもとに推計した観光消費回復効果は約720億円となっており、大きな効果があったものと考えています」と津田氏は話します。

また、今回の震災では、訪日外国人旅行者が災害発生時に抱えるさまざまな問題が浮き彫りになりました。総合調査会社のサーベイリサーチセンターが行った「外国人旅行者の避難行動に関する調査」では、リアルタイム情報の入手先として「宿泊先の従業員」がトップに挙げられました。大規模停電の影響で、スマートフォンやパソコンからの情報取得が困難だったことも要因だと考えられますが、人的な情報伝達が非常に重要であることがわかったのです。しかし、外国語での意思疎通が困難だったとの回答も多く、コミュニケーションの問題も大きな課題として残りました。

「震災時には、宿泊施設などの対応に戸惑いを感じ、行き場を失った訪日外国人旅行者が多数見受けられました。そのため、災害発生時における訪日外国人旅行者への対応力を強化すべく、対策に乗り出したのです」(津田氏)

同機構は、訪日外国人旅行者への災害時の初動対応や事前の災害対策をまとめた冊子「外国人観光客災害時初動対応マニュアル」を1万部増刷。道内の宿泊施設を中心に配布し、平時からの備えを促しました。また、指差しでの意思疎通ができる「災害時コミュニケーションシート」を4万部作成し、宿泊施設だけでなく、JNTO認定外国人観光案内所、ボランティアガイド団体などに配布。さまざまなツールを活かして、災害時のインバウンド対策強化を進めてきました。

アドベンチャーツーリズムの聖地・北海道へ

以前から存在している地域の観光資源を活用し、持続可能な観光の推進にも力を入れている北海道。津田氏は、「北海道を、世界に通用するアドベンチャーツーリズムの聖地にしたい」と語ります。

アドベンチャーツーリズムとは、欧米で発展したツーリズムの一種。「自然」「アクティビティ」「異文化体験」の3つの要素のうち、ふたつ以上の要素で構成された旅行スタイルのことを指します。北海道は、湿原や流氷など雄大な自然、ウィンタースポーツやカヌーをはじめとしたアクティビティ、アイヌ文化など日本固有の文化を有しており、アドベンチャーツーリズムの3つの要素が揃う最適なエリアなのです。

「北海道に住んでいると、冬のパウダースノーや夏の過ごしやすい気候、四季折々の自然環境は当たり前すぎて、訪日外国人旅行者にとって魅力的な資源なのだと気づいていませんでした。そこで、それらの観光素材を前面に押し出せるアドベンチャーツーリズムを通し、世界へ北海道をアピールしていこうと考えたのです」(津田氏)

そこで北海道は、60ヵ国ものアドベンチャーツーリズム関係者が集まる国際会議「Adventure Travel World Summit(ATWS)」の2021年大会を誘致。アドベンチャーツーリズムにおける優位性をアピールするとともに、地域活性化につなげたいとしています。誘致が実現すればアジアでの開催は初となり、アドベンチャーツーリズムのディスティネーションとしてますます注目されるでしょう。

「アドベンチャーツーリズムをコーディネートする旅行会社やガイドスタッフの拡充など、課題はまだまだありますが、それらをひとつずつ解決していき、アドベンチャーツーリズムの聖地を目指していきたいです」と津田氏は力を込めます。

アドベンチャーツーリズムのすべての要素が揃う北海道

「ウポポイ」を中心に、道内一丸となってアイヌ文化の魅力向上を目指す

北海道の先住民族であるアイヌの文化は、アドベンチャーツーリズムの要素のひとつである「異文化体験」を構成する重要な存在。近年はアイヌ民族の少女が活躍するTVアニメ『ゴールデンカムイ』の人気も相まって、国内外からさらなる関心が集まっています。

2020年4月24日には、アイヌ文化復興・創造の拠点となる「ウポポイ(民族共生象徴空間)」が、白老町ポトロ湖畔に誕生します。この施設には、アイヌ民族の歴史や文化を学ぶことができる国立博物館「国立アイヌ民族博物館」や、伝統楽器の演奏や踊り、ものづくりなどを通してアイヌ文化を体感できる「国立民族共生公園」が整備され、国内外にアイヌ文化の魅力を伝える大きな役割を担うことが期待されています。

これを契機に、北海道内ではアイヌ文化をPRする新たなコンテンツが誕生しています。釧路市阿寒町では、音楽や映像を駆使した体験型ナイトウォーク「カムイルミナ」や、デジタルアートとアイヌ古式舞踊を融合した「ロストカムイ」を上演。旭川市の旭山動物園でも、アイヌ民族目線で見た動物園のガイドを行うなど、それぞれの地域性を活かした取り組みはどんどん増えています。

また、同機構では札幌、釧路・阿寒、旭川・上川、平取などの、道内に点在するアイヌ文化の拠点地域が連携した「ユーカラ街道」のツアー造成事業も進めているとのこと。「それぞれの地域の特性を活かしながら、伝統的に継承されている踊りや暮らし、食などを体感できるツアーです。アイヌ民族による解説を加えるなど、よりアイヌへの関心が深まるような内容にしていきたいと考えています」。

マーケティング部を新設し、デジタルマーケティングを強化

さまざまな事業を展開してきた北海道観光振興機構ですが、組織としてのマーケティング活動はこれまで不足していたと語る津田氏。「事業実施にあたってはデータの収集や分析を行ってはいたのですが、日本版DMOの基礎的な役割・機能である『データに基づいた戦略選定』や『KPI・KGI』などをより意識したデジタルなマーケティングをすべきだと考えたのです」。

そこで同機構は、2019年4月にマーケティング部を新設し、デジタルマーケティングを主軸としたインバウンド対策を行うことにしました。2019年度は、インバウンドに関するオープンデータの整理と、GPSによる動態調査をもとにした仮説を検証し、インバウンド戦略の策定を行っていきたいとのこと。また、部署新設にあたってはJNTOへ相談する機会が多かったと言います。

「海外プロモーションにおける観光マーケティングの狙いや手法をはじめ、JNTOとのさらなる連携などについて相談させていただきました。直接お会いして意見交換することも増えましたね」。このようにJNTOでは各地域、DMOとの連携を強化するため、「地域プロモーション連携室」を設置。地域ごとに配置された専任の担当者が域内のインバウンド事業関係者の窓口となり、課題やニーズなどを共有しながらインバウンド促進を図っています。

また、同機構は「JNTOマーケティング研修会in北海道」の開催に協力することで、JNTOはもちろん、道内の地域連携DMOや地域DMOとの連携を深めることもできたと言います。北海道観光振興機構とJNTOは、今後も連携を深め、道内一丸となってインバウンドの活性化を目指していきます。

JNTOと連携してマーケティング研修会in北海道を開催

観光客の域内分散を促進し課題解決を目指す

さらなる展開として、2019年には北海道内の7つの空港が一括民営化に向けて本格的に動き始めます。運営会社は、7つすべての空港で国際線就航の実現を目指し、インバウンド促進のために道内全域のDMOを重要なパートナーと位置づけました。地域が連携してデジタルマーケティングを展開し、観光流動づくりを目指しているとのことです。

今後の目標について津田氏は、「今後も、インバウンド集客に関わる道内各地域の連携を活かしてニーズ調査を行い、地域の抱える課題を共有することで、課題解決に向けたソリューションを検討していきたいと思います。また、空港民営化は課題としていた観光客の地方分散化の好機です。同機構としても積極的に関わっていきたいですね」と語りました。

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