HOME JNTOの事業・サービス 地域インバウンド促進 地域の取り組み事例

旅行者に選ばれるエリアづくりと環境整備で周遊促進を目指す(広域連携DMOの取り組み2)

旅行者に選ばれるエリアづくりと環境整備で周遊促進を目指す(広域連携DMOの取り組み2)

旅行者に選ばれるエリアづくりと環境整備で周遊促進を目指す(広域連携DMOの取り組み2)

JNTOでは訪日外国人旅行者の地方誘客を促進させるため、JNTO内に地域向け窓口を設置し、広域連携DMOをはじめとする地域の皆様との連携に力を入れています。関西唯一の広域連携DMO、関西観光本部も連携先のひとつ。今回は同本部地域戦略室長の森氏に、訪日外国人旅行者の関西周遊を促す取り組みや受入整備の推進などについてお話を伺いました。

対象地域
福井県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、徳島県
主要観光資源
歴史、伝統文化、祭り、食、自然
公式サイト
https://kansai.or.jp/

北海道の広域連携DMO「北海道観光振興機構」の取り組みは、こちらの記事でご覧いただけます。
海外DMOに関する専門家へのインタビューは、こちらの記事でご覧いただけます。

広域連携DMO関西観光本部とは

関西観光本部は、2府8県(福井県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、徳島県)を対象とした、関西唯一の広域連携DMOです。関西の自治体、経済団体、観光振興団体、観光関連を中心とした民間事業者が参画し、関西広域でのインバウンドをはじめとした観光振興に取り組んでいます。

JNTOとの連携強化でダイレクトな相談と対面での情報共有が可能に

関西観光本部地域戦略室長の森氏は、JNTOが各地域に窓口となる担当者を配置したことにより、気軽に連絡や相談がしやすくなったと話します。「これまではなにか相談事があると代表窓口に電話をし、内容に合った部署につないでもらっていたため時間がかかっていました。専用の窓口ができたことにより、ダイレクトに相談ができるようになり、関係性が密になったと思います。JNTOが2018年度実施した観光コンテンツ収集事業について、集まったコンテンツに関するフィードバックを受けたり、関西エリアにおけるインバウンドの最新事情についてJNTO職員に向けた勉強会を開催したりと、意見や最新情報を共有できる機会が増えました」。

2019年8月には「マーケティング研修会in関西」を、JNTOと関西観光本部が連携して開催しました。森氏は研修会について、次のように語ります。

「これまで関西観光本部では通訳案内士を対象とした研修会などは開催していましたが、今回のようなデジタルマーケティングやオープンデータといったテーマの研修会を実施したことはありませんでした。こういった私たちにはないノウハウを共有することで、参加者にとって幅広い知識を得ることにつながったと思います」。

大阪・関西万博開催までに旅行者に選ばれる滞在エリアを拡大

関西観光本部では現在どのような取り組みが行われているのでしょうか。関西エリアにおけるインバウンド市場の傾向と併せて森氏にご紹介いただきました。

「関西は現在、訪日外国人旅行者数2位の大阪府、4位の京都府の2地域に観光客が集中しています。しかし、関西全体でインバウンドによる経済効果を享受するためには、2地域以外にも滞在されるエリアづくりが必要です。2025年に大阪・関西万博が開催されることも鑑みて、万博開催時までに10以上の地域が新たな滞在エリアとして認知され、旅行者に選ばれるよう、取り組んでいます」。

インバウンドプロモーションを総合的にプロデュース

そこで実施しているのが「プラスワントリップキャンペーン」です。これは関西観光本部と関西2府8県内の地域の団体が連携して、旅行ルートを設定し、コンセプト設定やコンテンツ選定を行い、「プラスワンルート」と呼ばれる旅行商品を決定します。その後ファムトリップや商談会の実施や、旅行博への出展、デジタルの分野ではプロモーション動画やSNSを活用した情報発信、OTA(Online Travel Agent:インターネット上のみで取引する旅行代理店)との連携を行い、造成した旅行商品(プラスワンルート)の販売を促進するというものです。

交通機関、Wi-Fi、キャッシュレスの環境整備を重点的に推進

また、関西観光本部では訪日外国人旅行者の受入整備として、「交通機関」「Wi-Fi」「キャッシュレス」の3つに重点を置いて、取り組みを進めています。

訪日外国人旅行者専用の交通系ICカード「KANSAI ONE PASS」では、各観光地で提示すれば優待が受けられるという付加価値を付ける試みも。同時に、乗降履歴データを収集して利用者の動向を分析し、プロモーションや関西広域への観光拡大に役立てています。

また、Wi-Fi環境を整えるために、一度の認証手続きで、関西一円のさまざまな無料Wi-Fiに接続できるアプリ「KANSAI Wi-Fi(Official)」を運営。これによって、関西地域の観光地にある約3万のアクセスポイントに無料でアクセスできるようになりました。

キャッシュレスについては、セミナーの開催や、Webサイトで情報提供を行っています。

域内約50のDMOとの連携強化が急務

訪日外国人旅行者の円滑な受け入れ、周遊の促進には、関西観光本部の対象エリア内にある約50のDMO同士が連携することが必須であると語る森氏。2019年はプラスワントリップキャンペーンで広域ルートをつくるために個別団体等と協議を重ねている段階とのことだが、「今後は意見交換会などを開催し、DMO同士が円滑に連携できるネットワークを構築するため、域内のすべてのDMOに集まっていただく会議の開催を予定しています」と語ります。

ラグビー、オリパラ、ワールドマスターズゲームズの観戦者を周遊へと促す

大規模なイベント開催は、訪日外国人旅行者増加につながる大きな要素のひとつです。日本では2019年ラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピック、2021年のワールドマスターズゲームズ関西など大規模な国際スポーツ大会が続きます。「訪日外国人旅行者が増加するこのチャンスを最大限に活かしたい。そのためにプラスワントリップキャンペーンを大阪・関西万博開催後も継続して新しい関西ブランドを定着させるよう取り組んでいきます」と話す森氏。大会に向けてどのような施策を行っているのでしょうか。

「ラグビーワールドカップでは、ヨーロッパ圏のチームが関西と九州で試合を行うことに着目し、九州観光推進機構と連携し、西日本での周遊を促進するため、英国の旅行雑誌『Wonderlust』に関西と九州の観光情報を掲載しました。また、関西の観光情報をまとめた海外向けWebサイトを開設しました」。

ラグビーワールドカップ日本大会に向けて実施されたファムトリップ

ワールドマスターズゲームズ関西については、「同大会がアジアで開催されるのは今回が初。『生涯スポーツ最高の祭典』という、大会そのものの魅力を国内外に発信していきたい」と森氏。現在は組織委員会と連携し、具体的なプロモーション施策を計画中だと言います。

国際大会開催を契機に「関西を元気に」

今後JNTOでは関西観光本部とさらに連携を強め、研修会の実施のみならず、インバウンドに向けた施策を行っていきます。森氏は「関西2府8県には多種多様な観光資源がありますが、海外の方に十分認知されていないのが現状です。“広域の関西”を新しいディスティネーションとしてブランド化できる可能性があると考えています。今後の国際スポーツ大会や大阪・関西万博をチャンスと捉え、関西の魅力ある観光資源を外国人目線で発信していきます。そして、訪日外国人旅行者を呼び込むことで、関西をさらに元気にしたいと考えています」と意気込みを示しました。