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「通過点からの脱却」を目指して

2017年12月19日

「通過点からの脱却」を目指して

「通過点からの脱却」を目指して

静岡県の県庁所在地として発展をしてきた静岡市。全国で5番目に面積が広い市で、都道府県庁所在地のある市としては日本最大の面積を誇ります。住みやすい都市として定評がありながらも、近年は進学や就職で転出する若者が多く、人口減少が加速しています。若者にとって、住みやすく、働きやすい街にしていくため、交流人口を増やし、既存産業を支え、雇用を生み出せる地域を目指すべく、インバウンドの取り組みを進めています。

対象地域
静岡県
面積
1,411.90k㎡
総人口
698,954人(推計2017/11/10)
主要観光資源
三保の松原、久能山東照宮、ちびまる子ちゃんランド、東海道広重美術館、葵祭、大道芸大会、サンバカーニバル、静岡ホビーショー、おんぱく、おくしず、お茶、しずまえブランド(食)
公式サイト
http://www.city.shizuoka.jp/
http://www.visit-shizuoka.com/

取り巻く環境

経済面では小売業・サービス業に強く、次に製造業が続きます。観光面では世界遺産の三保の松原、国宝の久能山東照宮のほか、美術館、動物園、港などといった幅広い資源がありますが、東京・京都という日本観光におけるゴールデンルートの狭間に位置するため、外国人観光客に通過されやすいという現状があります。人口面では、政令指定都市ではありますが、1990年の73.9万人をピークに減少し、2017年6月時点で70万人を割っています。

世界遺産、三保の松原

受け入れの現状

平成21年6月に富士山静岡空港が開港し、直行便がある中韓台だけで静岡県の外国人宿泊者数の約4分の3を占めています。

静岡市に宿泊する外国人旅行者は、中国が最も多く、近年急激に増加しており、平成27年度は約50,000人で全体の約半数を占めています。次に多いのは台湾であり、約18,000人が訪れ、全体の約18%を占めます。その他の国では、近年高い伸び率を示しているのが香港、アメリカ、タイです。韓国については平成26年度に一時的に低下したものの、過去5年間では約5,000~6,000人で推移しています。また、清水港に寄港するクルーズ船が増加しており、静岡市を訪れる外国人旅行者の増加要因の一つとなっています。

県内においては、外国人観光客の増加を感じられるという声がある一方で、宿泊者数は大きく伸びていないため、日中に静岡県を訪問しても、そのまま夜には他地域に抜けてしまっている外国人旅行者が多いと推測されます。静岡市の宿泊旅行統計は、2015年の年間10万人泊から、2017年には14万人泊、2020年までに20万人泊へ倍増させるという構想があります。現在、日本人宿泊客を含めた年間の延べ宿泊者数は240万人泊、宿泊稼働率は7割程度となっていることから、キャパシティーは問題ないといえます。

抱える課題

インバウンドに取り組むにあたり、静岡市が抱える課題としては、①オール静岡インバウンド誘致アクションプラン(「オール静岡インバウンド誘致推進会議」によって作成されたインバウンドに取り組むアクションプラン)を策定したが、総花的であるため、具体的な目標を立てる必要がある ②何が静岡らしさを形成するのか、明確な認識を持つことが望まれる ③目標設定の基準となる統計が取れていない(観光庁の外国人消費動向調査と宿泊統計を活用) ④受入対応について、点での整備は行ってきたが、面での整備ができていない(無料Wi-Fi、案内所、二次交通など)といったことが挙げられます。

国宝にも指定されている久能山東照宮

取り組み

1990年に設立された清水港客船誘致委員会では、クルーズの誘致・受け入れを加速させるため、清水港の繁栄と海外からの旅行者に日本を楽しんでもらえるよう、特産品のお茶を活かしたお茶会や着物の着付けが体験できる歓迎セレモニーなど多様なイベントを主催しています。

商工会議所や中心市街地の商店街においては、インバウンドをビジネスチャンスと捉え、積極的に連携を取る事業者もおり、例えば旅行会社の静鉄観光サービスは、株主である静岡鉄道とのつながりで台湾からのインバウンドプロモーションを実施しています。平成24年には、商店街の有志によって「I Loveしずおか協議会」が設立され、個人や企業、商店街、行政が「オール静岡」となり、まちの賑わいや元気を広く情報発信することで活性化を目指しています。また、先述の通り、官民一体となり外国人観光客の獲得によるビジネス拡大を目指すため、平成27年に「オール静岡インバウンド誘致推進会議」が設立され、インバウンド誘致のアクションプランが制定されました。

受け入れ環境の整備としては、外国人旅行者へのWi-Fiルーターの無料貸し出しを平成30年3月まで試験的に実施、観光ウェブサイトの英・中・韓・タイへの多言語化などを進めています。

12月20日に開催されるワークショップでは、「静岡に滞在してもらうためのコンセプトの明確化とプロモーションの方向性」をテーマに、①インバウンドにおける静岡の課題意識の共有 ②静岡の今後のターゲットの設定 ③コンテンツの明確化 ④効果的なプロモーション手法の理解・方向性の共有 を目標達成として実施していきます。

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