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「免税手続一括カウンター」はスタートライン

「免税手続一括カウンター」はスタートライン

「免税手続一括カウンター」はスタートライン

「平成28年度商店街インバウンド実態調査モデル事例」(発行:平成29年3月 経済産業省 中小企業庁)から、岡山県岡山市にある協同組合連合会 岡山市表町商店街連盟、協同組合岡山市下之町商店会の取り組み事例をご紹介します。 <タイプ> 広域型商店街 <立地環境> JR岡山駅から東へ約1km、路面電車で5分程度の距離にある岡山市の中心商業地 <店舗数> 270店舗

対象地域
岡山県
面積
7,114.32平方キロメートル(平成29年10月1日現在)
総人口
1,901,053人(平成30年6月1日現在)
主要観光資源
倉敷美観地区、岡山後楽園、岡山城、児島ジーンズストリート、刀剣博物館、大原美術館
公式サイト
https://www.okayama-kanko.jp
https://okayama-kanko.net/sightseeing/
https://okayama-kanko.net/sightseeing/en/

プロフィール

1597年に岡山城主宇喜多秀家によって城下の山陽道沿いに形成された商人町が、現在の表町商店街の起源である。1912年に岡山電気軌道(路面電車)が開通したことにより商店街の商圏は一気に広がりを見せ、1949年下之町商店会の中心に位置するデパート「天満屋」前にバスステーションが完成すると、商店街は活況を呈し岡山県の商業の中心地となった。

1990年代に入ると市内に大型店やコンビニが増加したことで表町商店街の勢いは衰え、その後は活性化を図るための施策を続けている。

インバウンド事業取組の背景

下之町商店会は、南北2kmに連なる通称「表八ヵ町」(上之町・中之町・下之町・栄町・紙屋町・千日前・西大寺町・新西大寺町)からなる「表町商店街」の一つである。

岡山市内の全店舗数は1988年の7,900店舗をピークに減少に転じ始めた。この波は表町商店街にも押し寄せ、後継者不足や空き店舗の増加という形で現れ、歩行者通行量も年々減少していたことから、一刻も早い立て直しが課題となった。

2010年以降の外国人観光客の増加を受けて、岡山県は外国人観光客を県内に呼び込むべくソウル便や香港便など各国への増便を航空各社に働きかけ、海外のマスコミや旅行代理店を県内の観光地に招くなど、外国人観光客の誘致を強化した。県の取組は功を奏し、2013年には県の外国人観光客宿泊者数は9万人を超え、その後も増加傾向にある。

表町商店街でも、岡山城や後楽園など歴史ある観光名所に近いことから外国人観光客の誘客へ向けた取組が始まった。

取組のポイント

2015年4月1日に創設された「手続委託型輸出物品販売場制度」を受け、2016年5月に商店街としては、全国で初めてとなる免税手続一括カウンターが、表町商店街でオープンした。

専用カウンターは、商店街の中心的存在である「天満屋」の5階と地下1階に設置され、当初10店舗であった免税店は現在新たに30店舗となっている。導入のきっかけは、専用カウンターを置いた「天満屋」である。隣接する商店街との連携を模索していた「天満屋」は、新しい免税制度に関するセミナーやルール作りの勉強会を重ね、商店街との会議の中で免税制度での連携を提案し、商店街はこれを受け入れた。動き出したプロジェクトは、行政がフォローする官民一体の新しい試みとしてスタートした。

免税手続一括カウンターは「いろいろな店で少しずつ」という購買行動に合っている。商店街における売上が一気に伸びたわけではないが、訪れる外国人観光客は確実に増えている。このシステムの導入によって、商店街の人たちの外国人観光客の取り込みへの意識が高まったことも重要な成果である。

取組の全容及び事業実施体制

免税手続一括カウンターと連携している店舗は現在30店舗になり、商店街では、カウンター設置直後から外国人観光客の増加を見越し、インバウンド対応の基盤整備を次々と進めていった。

まず既存のFree Wi-Fiの拡充を図り全アーケードで高速無線LANの使用を可能にした。また、マップ・パンフレット・サイン・案内板の多言語化も行なった。さらに中国で幅広く利用されている銀聯カードや電子マネーにも対応可能な決済端末の導入・拡大を図った。

2016年4月には外国語対応に不安がある商店主や店員が指定の番号に電話をすると、オペレーターにつながり通訳を行う通訳用電話サービスも開始した。

一方、各店舗では、外国人観光客向けの商品の品揃えを充実させるなど、ショッピング環境の向上に取り組んだ。免税手続一括カウンター導入の大きな目的は「食」「文化」「ショッピング」が同時に楽しめるまちづくりを推進することであり、その目的を達成するために、商店街と天満屋は連携して数々の取組を行なった。

また商店街では、シンガポールの旅行会社を招いた商店街視察の実施や岡山県、岡山市、岡山商工会議所、政府観光局と連携した「岡山市表町商店街魅力向上検討会」の開催、岡山外語学院の留学生を招いた「おもてなし体験」「岡山のお土産品モニター調査」を実施した。さらに「ジャパン・ショッピング・フェスティバル」に参加し、一週間に渡って『MOMOTARO HOT WEEK』と題した訪日ゲストをもてなす体験イベントを実施した。

取組みのプロセスで生じた課題と対応

岡山を訪れる外国人観光客の人気は、岡山城と後楽園に集まっており、その流れをどうやって表町商店街へ引き込むかが大きな課題である。表町商店街を構成する8町全体での連携が欠かせないが、町内間でどうしても温度差が生じてしまうことから、それを埋めるため、コミュニケーションの機会をもっと増やすことが重要であると考えている。免税手続一括カウンターの設置を契機に実施された共同の取組は、一定の効果を生んだが、最近は手詰まり感が否めない。状況を打開するためには新たな取組も必要だが、既存の日常的な取組の充実をみんなで進めていくことも大事だと考えている。例えば、商店街で定期的に実施している地域住民向けのワークショップ「まちゼミ表町」の活性化を図ることである。「まちゼミ表町」の講師は、全員商店会員であり「着物初めてさんのためのコーディネート講座」「知っておこう!デジタルカメラの基本機能」などそれぞれの専門知識を活かした60以上のメニューを準備している。商店街内の「お隣さん」をもっと深く知って盛り上げる。表町商店街におけるインバウンド対応の充実のためには、まず日常的な商売を元気にすることが欠かせないと考えている。

成果・継続へ向けた視点

インバウンド対応の基盤はかなり整った。重要なのはシステム導入で終結させずに、そのシステムをベースに集客を図ることであり、具体的な施策を実施していくことである。例えば、外国人観光客が参加するツアーには、表町商店街を含んだルートが明確に打出されておらず、外国人観光客はオプションで商店街を訪れているため、岡山市全体を使った外国人観光客向けツアールートの開発を行う。ルートには、岡山城や後楽園などの観光名所と表町商店街を結ぶルートはもちろん、岡山市が進めている駅前大通りの回遊性を高める施策を取り込んだルート、商店街内で開催される「縁日」を売りにしたルートなど、工夫次第で面白いメニューができると考えている。またこの中から「目玉ツアー」が一つでも出てくれば、それが継続性への足掛かりになるはずだ。

キーマンからのアドバイス

岡崎 昌利氏 協同組合 岡山市下之町商店会 事務局長

表町商店街は元々、ちょっと気取った恰好で出かける町、贈答品や良い服を買うときに訪れる町でした。インバウンド対応と言うと何か特別な仕掛けを考えがちですが、それよりも昔の表町商店街にあった「スペシャル感」を現代に合わせた形で創出した方が良いと思っています。

地元の方が魅力を感じてくれれば、それが私たちの誇りになり、その誇りは、海外から来た人たちにも必ず伝わっていくと思います。簡単ではないですが「自分たちの良さを見直す」ことから始めるのが近道だと思います。

<黒門市場商店街振興組合(大阪府大阪市)    高知市中心商店街(高知県高知市)※9/10更新予定>