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  • インバウンドをバネにした「市場の底力」

「平成28年度商店街インバウンド実態調査モデル事例」(発行:平成29年3月 経済産業省 中小企業庁)から、大阪府大阪市にある黒門市場商店街振興組合の取り組み事例をご紹介します。

<タイプ>
超広域型商店街
<立地環境>
地下鉄日本橋駅の駅前にあり、大阪ミナミの繁華街(道頓堀・心斎橋)に近い商業集積地
<店舗数>
147店舗

都道府県
大阪府
面積
1,905.14平方キロメートル(平成29年10月1日現在)
総人口
8,826,303人(平成30年5月1日現在)
主要観光資源
大阪城公園、道頓堀、あべのハルカス、通天閣、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、住吉大社、仁徳天皇陵古墳
公式サイト
https://osaka-info.jp/
https://osaka-info.jp/en/

プロフィール

黒門市場商店街は、千日前通りと堺筋の交差する南東の一角に位置し、南北約400mの筋を中心に4つのブロック、東西100mずつ伸びた筋に3つのブロックがあり、7つの筋に面した商店によって成り立っている。圓明寺の黒門前の市場として江戸時代からの長い歴史があり、ミナミの繁華街が近いことからかつては高級料亭や割烹向けに生鮮食品を卸していた店が多かったが、近年はプロの料理人から地域住民、国内外の観光客まで、多数の人が来街し、大阪の食を支える市場として「黒門」の名が知れ渡っている。

インバウンド事業取組の背景

2008年9月に起きたリーマンショックによる景気低迷が続く中で、卸先の廃業などが広がり、黒門市場の売上は激減した。大きな痛手を受けた各商店は、ブロックごとにアイデアを出し合ってこの危機を乗り切ろうとしたが、定番となっていた「歳末大売り出し」や「100円商店街」といった取組だけでは大きな効果は上がらなかった。

また、かつて高級料亭や割烹向けに生鮮食品を卸していたことから、「高級食材の黒門」というブランドイメージを崩したくないという声も各店舗から上ったことを受け、「黒門セレクション」と称して、一店一品を厳選して販売する取組も実施したが、次第にマンネリ化し、大きな成果には結びつかなかった。

不況に喘ぐ黒門市場に変化の兆しが訪れたのは2011年のことである。この年の春過ぎから、円安やビザ緩和政策、関西国際空港へのLCCの就航などにより、外国人観光客が増えてきたのだ。この変化に気づいた商店主たちは、すぐにインバウンド需要を取り込むための策を練り始めた。その過程で、外国人観光客は「本当に良いものにはお金を惜しまない」という傾向があることに気づき、商店街を挙げた取組が始まった。

取組のポイント

商店街全体でインバウンド事業に対する取組が急激に進んだ一番の理由は、商店主たちに備わった商売への強い意欲、大阪の商人魂にある。

外国人観光客が増えていることに気づいた翌年には、和服姿で外国人観光客を案内するコンシェルジュを商店街に配置した。さらに、コンシェルジュが案内の途中で外国人観光客にアンケートを実施するようにし、アンケートで得た要望内容を分析。どのようにしたら満足度向上につながるかを検討し、さらなる対応策のアイデアを練った。

まず、外国人観光客の食の好みを分析し、気軽に食べ歩きできるよう串焼きにしたり、店先で食べられるようテーブルを置いたりといった工夫を凝らした。また、メニューには商品の写真を載せ、英語・中国語を併記した。商店街の多言語マップやパンフレットを作成し、近隣のホテルや商店、観光案内所などにも設置してもらうようにした。

黒門市場商店街のインバウンド対応が常に新鮮なのは、2012年以降毎年実施されているこのアンケートに拠るところが大きい。アンケート結果を元にその時々の問題点を明確にし、改善策を実施、その成果を検証し、また次の取組の参考にする。この繰り返しが継続的な活気につながっている。

取組の全容及び事業実施体制

黒門市場商店街では、7つのブロックから38名の理事が選出され毎月理事会を開いている。その下に、防災対策委員会、売出し対策委員会、IT広報対策委員会、マスコットキャラクター委員会、スタンプ(ポイント)事業委員会、観光対策委員会という事業委員会があり、その活動について毎月の理事会で検討が行われている。

事業委員会の活動は活発である。2013年6月にマスコットキャラクターの「もおんちゃん」が誕生。同年12月、市場内の空き店舗を購入し無料休憩所を設置した。2016年には、この無料休憩所を国の補助金を得て「黒門インフォメーションセンター」にグレードアップさせた。インフォメーションセンターには、Wi-Fi設備、外貨両替機、手荷物預かり所、トイレ、ゴミ箱などを設置し、英語、中国語、韓国語での案内も行っている。また、外国人観光客は国内の他の地域へも関心を持って出かける可能性があると考え、大阪以外の国内18地域の情報をテレビモニターから多言語で発信できるシステムも完備した。

このインフォメーションセンターは、商店街全体の南側に位置しているが、これは北側に比べると比較的客足が少ない南側ブロックの商店から提案を受けてのものだ。インフォメーションセンターが南側にできたことにより、最寄りの日本橋駅から黒門市場商店街に入った外国人観光客がインフォメーションセンターを目指して商店街を北から南へ縦断することとなり、黒門市場商店街全体の回遊性向上につながった。また、外貨両替機の設置も消費喚起に効果的だった。

インフォメーションセンター

その他、外国語対応を充実させるため、商店街主催で2014 年から英会話教室を実施している。実際に接客に当たる商店主や従業員から好評を博しており、約25店舗が参加し、脱落者はゼロである。「おもてなし英検」という活動にも商店街として協賛しており、「英会話のできる商店街」という将来像に向けて取組を進めている。

英会話教室

取組みのプロセスで生じた課題と対応

このようなインバウンド対応の取組を進めていった結果、大勢の外国人観光客が黒門市場商店街に訪れるようになった。各店舗の売上も上がり、リピーターも多い。

しかし、外国人観光客が商店の前で行列をつくり狭い通路を占拠するようになったことで、従来の顧客であった地域住民の買い物に支障が出るようになってきた。地域の人口は増加しているが、地域住民による商店街の利用者は増えておらず、インバウンド対応と地元の買い物客への対応を両立させることが新たな課題として浮上している。

この対応策として、旅行会社と提携し日本人観光客を商店街に呼び込むバスツアーを企画し、成果を上げている。また、伝統ある生鮮市場として足元を見直すことも重要だと考えている。鰹節や昆布などは外国人にも人気がありよく売れているほか、漬け物、生花、惣菜、かまぼこ、青物などは日本人向けの定番商品である。各店舗がそれぞれの商売のレベルを上げて自らの商品を大切にしていくことが、外国人観光客と地元客双方の満足度向上につながると期待している。

成果・継続へ向けた視点

現在、黒門市場商店街では、ほとんどの店舗に後継者がおり、後継者不足を心配する必要はほぼない。また、商売をやめる店があったとしても、店舗と住宅が一体になっているところが少ないので、新たな若い経営者が店を引き継ぎやすく、空き店舗率は低い。外国人観光客の取り込みにもまだまだ伸びしろがあると考えているが、この好状況に安住せず将来へ向けて新たな展開を模索している。

地域住民や日本人観光客にももっと来てもらえる商店街を目指したい。また、日本人への接客と同じように、外国人観光客にも魚の調理の仕方や素材の特徴などを丁寧に説明できるようになりたい。伝統を受け継ぐ商店主たちは、これらの課題に挑戦し続けることで、黒門市場商店街にさらなる新しい魅力を加えていきたいと考えている。

また、黒門市場商店街は狭い通路に面した個人商店の集まりで、横に広がっていくことができず、通路を広げることも不可能だが、地権者の協力を得て、いつか立体化できればと考えている。

キーマンからのアドバイス

吉田 清純氏 黒門市場商店街振興組合 観光対策委員長(写真左)
國本 晃生氏 黒門市場商店街振興組合 事務局長(写真右)

黒門市場商店街は、立地にも恵まれ商売のタイミングにも恵まれましたが、その好機を逃さなかったのは「商人の勘」のおかげだと思っています。またインバウンド対応を一定の成功に導いたのは、アンケートの実施だったと考えています。インバウンド対応に限らず、お客様の実態や要望を知ることは商売にとって重要です。毎回のアンケート項目にみんなの意見を反映させるなど、活動の中で商店同士の交流も密になりました。

今後は「体験」を売りに出来ないだろうかと考えています。たこ焼き体験や寿司の握り体験などを旅行会社とタイアップで実施する予定です。

何ごとも、キーマンの危機意識と熱意と実行力によって、成功の可否が決まると言いますが、黒門市場商店街の場合は、それぞれの商店主がキーマンだと言えます。

<高山本町三丁目商店街振興組合(岐阜県高山市

協同組合連合会 岡山市表町商店街連盟、協同組合岡山市下之町商店会(岡山県岡山市)※9/3更新予定>

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