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  • インバウンド対応を変える「若者の力」

「平成28年度商店街インバウンド実態調査モデル事例」(発行:平成29年3月 経済産業省 中小企業庁)から、石川県金沢市にある竪町商店街振興組合の取り組み事例をご紹介します。

<タイプ>
広域型商店街
<立地環境>
21世紀美術館、兼六園など観光名所から徒歩10分圏内にあるファッションストリート
<店舗数>
121店舗

都道府県
石川県
面積
4,186.05平方キロメートル(平成29年10月1日現在)
総人口
1,146,915人(平成30年5月末日現在)
主要観光資源
兼六園、21世紀美術館、長町武家屋敷通り、東茶屋街、金沢駅、のとじま水族館
公式サイト
https://www.hot-ishikawa.jp/
http://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/
http://www.en.visitkanazawa.jp/

プロフィール

金沢城や兼六園といった観光名所の近くに立地し、近江町市場と並ぶ金沢市の中心的商店街である。国道に面した430m続く商店街は、1999年のモール化整備事業でバリアフリー化した街路が幅12mの歩行者優先の空間となり、各店舗の庇(ひさし)がアーケードのように連なっている。2006年、金沢駅前に大型店が開業し、「北陸一のファッションストリート」と言われた竪町商店街は一時的に輝きを失ったが、若者層をターゲットとしたPR活動により現在では活気を取り戻している。

インバウンド事業取組の背景

金沢駅前に大型店が開業したことにより、約40年に渡りレディース・ファッションの街として親しまれてきた商店街から客足が遠のいた。この状況を転換しなければいけないという危機意識から、各店舗はターゲット層を明確にした戦略を取るようになった。例えば、もともとはアパレルショップを多く収容していたファッションビルをアニメなど特定の分野の愛好者向けに大幅な改修を行い、店舗の誘致を進めた例もある。

また、近年、北陸地方を訪れる外国人観光客は増加傾向にあり、特に金沢は欧米人観光客から人気となっている。そのような中、東京でドミトリー型の宿泊施設を営む金沢出身の若手経営者から、宿泊施設を金沢で始めたいとの相談を受け、商店街はこれまでイベントスペースとして使っていた土地を売却し、当該宿泊施設を開業するためのスペースを用意した。これにより、主に欧米人観光客をターゲットとした新しい宿泊施設が街区内に誕生した。また、国のインバウンド事業への支援が拡充されたこともあり、商店街の新たな顧客として、ますます外国人観光客に注目するようになった。

取組のポイント

2015年に北陸新幹線が開通したことにより、金沢に訪れる滞在型の外国人観光客が急増し、市内ではホテルの建設ラッシュが起こっている。このような中、竪町商店街は「若者」と「日本文化」を両輪として独自の外国人観光客の誘客策を進めている。

「若者」については、学生とタッグを組み販売促進企画を展開し、ファッションの街としての新しい可能性を見出した。2017年春に街区内にファッション専門学校が開校するのもその勢いの現れと考えられる。また、隣接するカフェやミュージック・バーと合わせて「アートビレッジ」を形成する予定だ。このように商店街に集まってきた若者たちの視点を活かして街に変化をもたらそうと努力してきた。

「日本文化」については、若手経営者が金沢の歴史ある町並みや武家文化と外国人観光客を結びつける役割を担うようになった。2016年に開業したドミトリー型の宿泊施設はその典型であり、バッグパッカー向けの価格を抑えた宿泊施設であるが、近くにあるバーは宿泊客に朝食を出すばかりでなく、夜遅くまで多国籍の人が交流する場となっている。また、町屋をリノベーションした外国人観光客向けの民泊型宿泊施設も開業している。

金沢の人々が守ってきた伝統をインバウンド対応に活かし、そこに活路を見出したことが竪町商店街のインバウンド事業の重要なポイントである。

取組の全容及び事業実施体制

竪町商店街は、2010年からFree Wi-Fiを整備するとともに、近隣のデパートと連携して免税手続一括カウンターを設置した。また、周辺の商店街を含む金沢市内の観光や回遊性向上のために多言語の免税店マップを作成したほか、スマートフォンの英会話アプリにより言葉の問題が解決されるよう取組を実施している。

2016年11月、通称「タテマチストリート」と呼ばれる商店街の路上で、金沢伝統のお座敷遊びである扇を投げて的に当てる「投扇興(とうせんきょう)」をモデルとし、扇の幅を2mに巨大化した「巨大投扇興」プロジェクトを実施し、欧米を中心とする外国人観光客から好評を得た。事業実施に際しては、金沢工業大学の協力を得て巨大扇を飛ばす仕掛けを作っただけでなく、地元の職人や芸者など、多様な関係者を巻き込み実現に結びつけた。イベント後には、その様子を英語解説付きで映像化してYouTubeにアップし、100万回以上のアクセスを得ている。

また、クリスマスなどの商店街の飾り付けでは、学生からプロジェクションマッピングなど斬新な企画の提案があり、商店街が出資してコンペティションを開催した。

このように、商店街として新しい動きを取り入れるようになった要因としては、理事会の柔軟な姿勢が大きい。理事会は11人の理事によって月1回開催されているが、その他にも、総務、財務、販促、環境の執行委員会があり、6人の執行委員が月2回の会議を開催している。

取組みのプロセスで生じた課題と対応

金沢市全体がインバウンド対応を強化していく中で、商店街における外国人観光客の売上は総売上の約1割となっている。外国人観光客数はまだまだ多いとは言えない状況であるが、様々な施策により、徐々に効果が上がっていくと考えている。しかしながら、現段階では対応の方針が定まっていないことも多い。例えば、それぞれの国によって異なるマナーや意識の違いにどのよう対処すればよいか、商店街としての基本的な姿勢を決め切れていない。

また、各店舗の後継者不足も深刻である。店舗の多くは40年前からテナントとして貸し出されてきており、全体のテナント率は90%近くに上っている。現状は、活気で溢れているが、世代交代や店舗移転などによって、外国人観光客を迎え入れる側のテナント店主がいないという状況が発生しないよう、商店街として支援やフォローを一層強化していく必要があると考えている。

 

成果・継続へ向けた視点

商店街には、「竪町商店街らしさ」を失いたくないという強い思いがある。商店街の一本裏道には里見町という金沢らしい住宅街が広がっており、そこを抜ける路地は「21世紀美術館」への近道にもなる。これからは竪町商店街だけで考えるのではなく「路地を通って味わう金沢の雰囲気」「歴史と新しさを持つ金沢の魅力」といった総合的な視点でまちを実感してもらう演出が重要だと考えている。

また、大学生をはじめとする若い世代との連携により「巨大投扇興」プロジェクトのような新しいアイデアが実現できたことは、商店街の将来の姿を提示できたと考えている。2017年春、商店街に若い世代が学ぶ専門学校が開校し、さらにドミトリー型の宿泊施設も開業する予定であり、竪町商店街が日本の若者と海外の若者の文化交流の場となる環境が整った。今後はこれらを活用し、さらなるインバウンド対応の取組を進めていく予定だ。

キーマンからのアドバイス

細田 泰成氏 竪町商店街振興組合 専務理事

10年前には竪町商店街がなくなってしまうのではないかという危機感がありました。そのときに自分たちの頭で考え、自分たちで動いて決めてきたことが良かったんだと思います。そのおかげで様々な人との出会いも生まれました。新しい時代の動きにも敏感に反応できたと考えています。

現在では、伝統と新しいことを融合するような姿勢ができています。例えば金沢駅のドームに鳩やカラスがいないのは何故か?それは毎朝鷹匠が鷹を飛ばしているからなんです。そのような取組を行っている金沢の今の姿を誇りに思っていますし、これから外国人観光客にも伝えていきたいと考えています。

<御岳山商店組合(東京都青梅市)  高山本町三丁目商店街振興組合(岐阜県高山市)※8/20更新予定>

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